空き家PJとこれからの萩 2, 空き家再生について
2−1見方を変えること。
・街を歩きました。見方を変えてみること、これも大切です。
・恵美須町の焼杉仕上げです。素晴らしい日本画の墨絵とも言えます。
・今魚店のレリーフです。瓦と土壁のバランスの、これだけのレリーフがあるでしょうか。
・ 浜崎の木格子、無限のパタンがあるでしょう。
・ 同じく浜崎の下見板。板張りの年季の味わいと、大工の釘打ちの位置の正確さの神経を感じます。
・ 東浜崎の奥行きです。街並みに沿って歩きながら、突如その面性を突き破る深さ、奥行きの魅力です。
・ 浜崎は山村家の街並み、そしてそこから抜ける路地の曲がり、先が見えないことの中に場所の広がりを訪れるものは感じ取ります。街並みに彫りの深さを与えるものです。
・ 呉服町の簾、御簾と呼んでいます。すだれ、そしてそのスリットにかすかに浮かび上がるこの御宅の奥行きのある内部の空間が感得されます。
・ 上五間町の網戸越しの住宅の奥行き。どこにでもある網戸から、深い陰影のある空間が見透かされます。
・ 浜崎のタピエス(スペイン、カタルーニャが生んだ前衛画家の巨匠)。これ自身が絵画作品。
・ 土腹(ひじわら)の青空。住宅の甍が切り取った青空。
・ 浜崎のシュールな開口。ポスト、味噌樽、自動車、厨子作りの塗り籠め格子、うだつなどが、開口に一堂に会するシュール。
・ 土原の板金の挑戦。
・ 西田(にした)のファンキー。まちなみに挑戦的な姿勢が感ぜられる。
2−2, 街の肌触りを刷り込む
2−3, 既存から改めての再生までの「位階 / 様相」をデザインする
この二つの視点は小池邸改修のポイントである。
・ 門から見た北側外観。駐車場はアルミの折り戸やキャノピー、ブロック塀ではなく、従来の焼き過ぎのテクスチャーにつなげるように土塀、門、そして板塀に改修。
・ 玄関へのアプローチ。若い造園家の敷石の多様なパタン。
・ 内部では東側にある人研ぎの流しはそのままに復元。
・ 東側中廊下は押入れ・物入れの舞良戸のあり方もそのままに。この東側の在りようは既存をそのままにする取り扱いから。
・ 逆に西側では、ベッドルーム、そして手前のゲストルームは縁側、和室4畳半、板の間台所を全面変更し、天井を取り壊し既存の構造骨組みを室内に取り入れた。ゲストルームは真壁を大壁に変更、白い壁の高さは既存天井レベルとして関係付けている。ベッドルームは二重の壁の薄い壁が天井へと変容して、さらにゲストルームの壁へ、またアルコーブを作り書斎や収納を包み込む。収納扉も取り壊した押入れの舞良戸を開き戸としている。
・ 南側廊下、新しい側から既存部へ。
・ 既存部から新しくなったベッドルームへ。
・ 東側中廊下の舞良戸、外見は変わらないが両隅から光が漏れる。
・ 扉を開くと内部は倉庫を改めたみずやがあらわれる。既存そのままから新しいデザインの動きへ。
・ 玄関から南側の夏みかんの庭を見る。欄間には長門の縁戚から貰い受けた繊細な木製縦格子を寸法調整をしてはめ込んでいる。
・ 逆方向で玄関方向を眺める。隣の茶席ともなる6畳和室にあかりが障子越しに見える。
・ 田の字プランの床の間と床の間を持つ6畳和室を続きの間より眺める。
・ 障子越しに縁側に新しく設けた収納が欄間背後の空調機の設備配管や電気配線スペースの役割を果たすとともに、地板を持つ洞床の照明装置を作っている。
・ 一方、ゲストルーム上部は、天井内に隠された武骨だが、見事な部材の組み合わせの小屋組が新しい白い壁と強烈な対比を作り出している。
・ 柔らかくゲストルームとベッドルームを分けるオーガンジーのカーテン、既存の土壁、新しく塗り込められた土壁、白い壁のアルコーブ、既存の舞良戸の多様な組み合わせ。浜崎のシュールな開口を刷り込んでいる。
・ ゲストルームから和室そして床の間、書院、水屋方向を眺める。
・ 東側廊下の昔あった中廊下仕切りの枠を取り除いた形を、この場所の痕跡として透明樹脂で鋳込んで残した。
・ 和室の木製引き戸。茶席に会する婦人の身繕いをする姿身を隠している。柱、長押、畳縁、建具などによる和風の部屋の持つ水平、垂直の構成を、ピエト・モンドリアンの作品と絡めていた土を強い色を付した。
・ 恵美須町の住宅の錆止めのためのベンガラ色、光明丹が自然素材の色合いの中で一際異彩を放っていたことを受けて引用。萩の町の刷り込むという発想から。
・ 南側外観。
・西側の壁は耐候性鋼板、コールテン鋼を貼ることで、江向の市庁舎の外壁を刷り込み、
・ 東浜崎の素晴らしく錆びたトタンを刷り込んでいる。
・ 唐樋町(からひまち)明倫学舎の石垣。
・ 自然素材の持つ味わいはK邸のすさ入りの土壁の表情や、
・ 昔の倉庫であった砂壁のような味わいの土壁の素晴らしさに伺える。
・ それを水屋や続きの間にそのままに残している。
・ 西側新しく改修部に増築した余滴のような2畳の板の間。背の低い襖引戸をくぐって入ると、座してくつろげる空間が大きく三方向に開かれている。小さな空間を体験することで、他の部屋部屋の広がりや高さがより大きく見える経験をされることになろう。
・ この場での異種素材の金属壁と枠のない大きなガラス面がこの場に対比的に現れる。
・ 100年を越すもんがまえ、そして町並みに連関する焼杉色の塀と最も異質なガラス面のぶつかり合いが、ピリッとした引き締まる空間を生み出すに違いない。
2−4, 持家のある人が試られる作業であること
100年を超える古民家の改修を建築家の個性的なデザイン手法によってデザインするのではなく、萩に持ち家を構える市民がこの程度でも雰囲気が、また町とも連関しながら存続できると思えるような作業でありたいと思っている。
2−5, 萩の街の応援隊の拠点を目指して
この家には台所も、風呂もない、なるべく長く滞留してもらって萩の街を味わってもらいたい。萩の街が台所であり、風呂屋であるように外に出てもらって萩の街を活気付けてほしい。萩の街の魅力を発信し続けながら、多くの方に萩の街に来ていただく、この「今魚店の家」の滞在の在りようは萩を応援する人々の拠点でもあるだろう。
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