「ぼくの考えた最強のゲームは日の目を見ない」~ゲームプランナーとして過ごす日々の苦悩~
家庭用ゲーム機のアドベンチャーゲーム愛好家のいりえと申します。ADVに魅せられてゲーム業界を目指し、一般の国立大学(University)から新卒でゲームプランナーとして入社しました。
この職で業界へ新卒で入るときや別の会社へ移るとき、だいたいは企画書の提出を求められます。その企画書は、あなたにとってどのようなものでしょうか?
「とりあえず、書類選考を突破するために絞り出しました!」...それもアリだと思います。AR とか VR 技術を使ったり、VTuber コラボや e-Sports 化を織り込んだりする挑戦的なものを出すぜ!...イイと思います。では、その企画書を、本気でゲームにしたいと思って会社に出しますか?
これに正解はありません。ゲームプランナーを目指そうと思った理由はそれぞれでしょうし、プランナーという括りの中で「やりたいこと」もそれぞれあるはずだからです。ただ、少なくとも私は、自分の企画書を商品化させたいという想いで新卒の頃から企画書を作り、そして業界に入って以降も社内向け含め企画書を出し続けています。大好きなジャンルだけど、市場に出しても売れない、新規のアドベンチャーゲームの企画書を。
会社は道楽じゃないので作品が売れないといけないわけで。このご時世に全く新規のADVをというのは提案しても気乗りされなかったり、類似作品の売上データを並べても、そちらの売上も売上なので逆算される予算が全然だったり...。(※まあ企画書自体が良くない説はあるけどね)
実際にゲームを作る工程のあれやこれやはその先の糧になっていくことは間違いないけれど、ふと、自らの企画が商品になる可能性と向き合ったとき、微妙な感情になってしまう。「ぼくの考えた最強のアドベンチャーゲームは、日の目を見ることはないんだろうな」と。直近だと qureate さんが羨ましいよ、ほんと。
「会社を通して出したい」理由があったり、同人でやらない理由とかはあるのですが、後者に関しては「月間数千PVのADV専門ブログで呼びかけても人が集まらんし、集め方がワカンネ」とかまあいろいろ。
(一本でも自分で作ればいいのにwって?作ったことはあるんだよ!!!)
冒頭に書いた、家庭用ゲーム機のアドベンチャーゲームの愛好家になった(なってしまった?)理由は、いつの日かADVを作れるとなったときにどんな作品でも参照出来るようにというものでした。この数ヶ月を振り返って、『そんな日が来る匂い、ないなぁ...』とふと気付いてしまい、新作をほとんど買わなくなっていました。
ただ、それでいて、今の仕事及び次の仕事の確保のためには会社の得意なジャンルの作品をやるのはマストだし、そもそもの知見を広めるという意味からも、好きでもないシステムのゲームをやらないと...みたいな、変なタイプのゲームプランナーの悩みが堂々巡りしているんですね。ギャルゲーしかやらない人間にいきなり FPS のバランス調整を任せられるか?と言われたら NO でしょう。
実は、私みたいに「提出した企画書を絶対にゲーム化したい!」と思ってるひとと会社で出会ったことが無く、ゆったりと生きている方が私の経験では多いです。(※決して頭が空っぽという意味ではないので誤解なきよう)
別に出ていくほど嫌な場所じゃないから残ってるよ~とか、給与や評価体系などに納得いかなければさようならするとか、プランナーだけあって柔軟に生きてらっしゃる方が多いです。自分もそうやって働けたら、いいんですけどね...。
これは完全に持論ですが、「俺の考えたゲームを作りたいんだ!」って方は業界に入らず趣味でゲームを作ることをオススメします。自分の場合は我を通したすぎて変に悩んでいることなどから。
ですが、「あの IP に携わってみたい」「あのチームに憧れがある」のように、既に形があるものに向かっていきたい場合は会社を受けてみるのが良いのではないでしょうか。『テイルズ』の制作陣が『スカーレットネクサス』を、『如く』のスタジオが『ロストジャッジメント』と、新しい挑戦が無い業界ではないので。(むしろそういう挑戦が無くなったら終わり)
そろそろ冬になりますし、進路を考えるひとつの足しにでもなれば、思考の恥部を晒した甲斐があるというものです。
同じ悩みを持っている方がいらっしゃいましたら、どうしてるかぜひアドバイスください!