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英国 mini-budget発表とポンド急落

英国での”Budget”とは英国財務局により公表される政府予算案。
税制改正内容が織り込まれるため、各界の注目が集まります。

先週9月23日に行われた、"mini-budget"はその名の通り、ミニバージョンで、通常のBudgetよりも暫定的や微小な修正にとどまるのが通常なのですが…

今回のミニバジェットでは、50年に1度の規模とも言われる大幅な税削減案が組み込まれていました。
その税減収額は約400億ポンド(6.2兆円)と言われているので、いかにその影響が大きいかわかるでしょう。

mini-budgetに含まれていた主な税制変更は以下です。

mini-budget 主要な変更① 法人税率減

2021年Budgetにおいて、現在19%の法人税率が、2023年4月より、企業の利益規模に応じて税率増加されることが決定していました。
具体的には、以下変更が決定されており、最大6%の税率アップは大きな変更であるため、多くの企業が対策を講じていたはずです。

・利益£250,000以上の企業→25%
・利益£50,000〜£250,000の企業→19%〜25%の間で累進課税
・利益£50.000以下の企業→19%据え置き

この変更が今回キャンセルされました。そのため、英国の法人税率は、会社規模に関わらず、2023年4月以降も引き続き19%の水準を保つこととなります。

初めに聞いた時は耳を疑ってしまいました。
政権が変わったとはいえ、前政権が決定した大胆な増税計画を白紙に戻すとは…。

mini-budget 主要な変更② 税法上の一時償却額(AIA)の据え置き

Brexit後の一時的な施策として、税法上取得時損金算入できる資産取得価額が£200,000から£1,000,000に増額されていました。この金額が従来の水準である£200,000に戻る予定でしたが、今回の変更により対象資産については、永久的に£1,000,000まで取得時一括損金算入可能となりました。

mini-budget 主要な変更③ 社会保険料率減

個人の税金に関わる部分では、社会保険料が減額されます。
これも実は今年から増額された1.25%の、取消という形の変更です。11月より、変更前の元の水準に戻ります。

mini-budget 主要な変更④ 高所得者への所得税率減

英国所得税では累進課税が適用されています。高所得者ほど課税率が高くなるのは、どこの国でも同じですが、今回高所得者に有利な所得税率減が行われたため物議をかもしています。

年収£150,000超部分に課されていた45%の税率が削減され、それにより、年収£50,270超過部分にかかる税率は一律40%となりました。


これらの変更から、企業及び国民の短期的な税負担は減ることになります。しかしこの税制変更により失う税収をどこから補填するか、具体的な施策は打ち出しておらず、その使途についても多大な変更は予定していないようです。

新政権が、このような予算計画を突如提出したものだから、英国ポンドは暴落。今後の金融不安感が高まります。

ここ数ヶ月英国では15-20%のインフレ率を記録しており、光熱費を含む物価上昇が凄まじいものとなっています。このハイパーインフレとBrexit後の景気回復のための政策と、新政権は強気な態度を示していますが、現状では批判の声が強そうですね。今後の動向に注目したいです。


参考サイト


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