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読書ログ:最後の将軍 徳川慶喜 - 内戦と植民地化を防いだ名君

司馬遼太郎の本、「最後の将軍 徳川慶喜」読みました。あまり知らなかった徳川最後の将軍の、類稀なる才能や生き方、リーダーシップ、エゴなど細部にわたって紹介している読み応えのある本です。
司馬遼太郎にしては短めの一巻完結。


この本を読む前の、私の徳川慶喜という人の印象は、彼が徳川15代の中でも飛び抜けて優秀で、日本の植民地化を防いだ名君であったらしいくらい。外国のプレッシャーに負けて鎖国を解いて大政奉還をした人という印象でした。


しかしこの本から慶喜の人となりを知るごとに、この時代に慶喜という天才が生まれ、あるべくして徳川最後の将軍になり、家康とは異なった形で天下安寧を目指したことは日本の幸運であったとしみじみ感じさせられました。


器用で芸達者、読書家にして歴史家、そして議論の達人。


しかし自分が歴史にどう刻まれるかを考えるあまり、史実に残ることを恐れ晩年は人との交流を避け、後世に残ることを懸念し自分の趣味作品も破壊したりと、その凄まじい他己認識力のためにとてもエゴが強く孤独な人だった側面も見られます。


それでも好奇心旺盛で、賢く先見の明があり、混乱期の日本をより良い方向に導いた魅力的な偉人だったと感じます。部下である幕府軍が朝廷との争いも辞さないと息巻く中、夜通しの議論で大政奉還を説き伏せた慶喜の議論シーンには胸が熱くなります。将軍というより、貴族の風雅も備えた雄弁家だったのでしょうね。


慶喜がいなければ、幕府と朝廷の争いで国内は乱れ、外国からの植民地化が進んでいたとの見方も多く、今の日本の転換期を支えた慶喜に畏敬の念を抱かせる良書でした。

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