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#547 職業に支配されない個人

 世の中には様々なエンターテインメントが存在し、それらは私たちの生活に彩りを与えてくれます。私たちは、彼らの創造する様々なコンテンツによって元気をもらうこともあるし、自分の興味・関心を広げることができます。時として私たちは彼らのファンとなり、彼らを応援することになる。

 最近のアイドルグループの傾向として「恋愛禁止」というものがあります。これはそのグループを応援する「ファン」の人に向け、一種の疑似恋愛を与え、その見返りとして金銭を与えるという、ある意味では資本主義的なシステムのように思える。だからこそ、仮にアイドルの方に熱愛報道が出ると、重大な契約違反だと見なされ、「ファン」は過剰に反応する。彼らは謝罪を行わなければならないし、時として制裁を与えられてしまうのかもしれません。

 しかし、ここで立ち止まって考えてみたい。そもそもアイドルの方達は、「一人の人間」であり、誰かを好きになることもある。それはもう自明のことです。本当のファンであるならば、彼らの人となりと活動自体を応援するべきだと思うのです。それは、その人の存在を認めることと同義である。

 だからこそ、恋愛禁止を契約事項として捉えることの危険性がある。それはある意味では人権無視であり、それは「まやかし」です。まやかしの中で成り立っている関係が、本当の意味で「ファン」と交流できているのかに私は疑問を持っているし、それは見えないものに蓋をして、本当の意味で人と向き合うことをしないところに繋がる危険性を感じます。

『柏木由紀、アイドルの“男性スキャンダル”問題に言及「私が偉そうなことは言えないですけど…」』という記事を見つけました。

 

先日AKB48を卒業した柏木由紀さんが、アイドルの熱愛報道に関する私見を問われ、以下のように語っています。

 今は長くやって来て、どっちの気持ちもわかって。私が偉そうなこと言えないですけど“職業アイドル”にしたいですね。人間としてではなく、職業としてやっていきたいと(中略)。“恋愛禁止を分かってアイドルになっただろ”っていう意見もよく見るんですけど。小中学生じゃ、そんなことわかんないですよ…分かって入ってきてないんですよ、みんな。(中略)でも最初から“私スキャンダルあるかもしれません”っていうアイドルは絶対売れないじゃないですか」

 個人的には、自由恋愛を認めるアイドルグループがこれから誕生する可能性は十分あると思っている。私たちは「一人のひと」として生まれ、その中で他者に貢献することで、生きていきます。だからこそ、その人自身がありのままであり(当然学びは必要にはなる)、その人のエンターテインメントへの向き合い方を応援できれば、その業界は、仮初ではなく、リアルになってくる。

 学校における不登校の増加と同じように、ありのままの自分を制限するような業界にはいずれ誰もこなくなるのです。


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