見出し画像

ジェラート

いつもの5人でOld portに遊びに行って
BEN & JERRY’Sで2フレーバーのジェラートを食べながら(ヴィーガン用のメニューもあったのだ)、電飾がきらきら光る道を埠頭まで歩いた。

わたしは確かピスタチオとチョコレートにしたんだけど、歩いている途中で上だったチョコレートをまるまる落としてしまって、Osquitar が自分のチョコミントの塊を半分載せてくれた。

わたしはそれからチョコミントのジェラートが大好きになって、今は二つのフレーバーを選ぶ時はたいていラズベリーとチョコミントにする。

私たちはよくアイスクリームを食べた。Isaと公園でBohemian Rapsodyを観た時も、帰りにポプシカルを買って(その時はフルーツシャーベットみたいな味にした気がするけど覚えてない)、鉢植えの露天の前のPerronに座って、その年の冬に彼女の妹が日本で鬱になって、一緒にいてあげられなくて辛いと言う話を初めて聴いた。

Isaと仲良くなったのは、弟と電話で話したあと寮の部屋で激しく泣いて、シャワーを浴びようとして廊下に出た時に顔を合わせた日だった。彼女はトトロのパジャマを着ていて、わたしが泣いていたのに気づいてあとで部屋の扉をノックして寮の自販機でも大学のカフェテリアでも売っている大きなチャンククッキーをくれた。彼女はわたしを抱きしめて良いか尋ねて、わたしがかならず今辛いことを乗り越えられると言ってくれた。

北欧風の雑貨の店で、パペットみたいな鍋つかみをIsaと一つずつ手にはめておかしな声で会話をしたり、観光客向けのアクセサリー屋で黒人の店主に意地悪を言われてとっさに気の利いたことを言い返せなくて悔しい気持ちになったりした。マットコートの黒いテスラがレストランの前に停めてあるのを見てOscarはなかなかかっこいいと言い、わたしは巨大なダースベイダーの頭が車道に落ちているみたいだと言った。

ドミノピザを買って、マリファナの匂いのする芝生に座ったせいでずっと吸ってみたいか否かという話をしながら建国記念日の花火を観た。

そういえばIsaがドタキャンして、Jorgeとふたりで花火を見たこともあったっけ。あの大きな橋のある駅で…Adel の Fire in the rain が流れていて彼はあの曲が大好きだと言い、わたしが初めて聴いたと答えると驚いていた。

先月はOscarがグミベアの入ったアイスクリームを買ってくれて、わたしはお返しにふたりにジェラートを買った。

Jérémie と真冬にジェラートを食べながら家に帰って、バスの運転手さんに笑われたこともあった。あのときはレモンシャーベットとチョコレートだった。寒くてガタガタ震えながら、お互いの顔を見て大笑いした。

バロックオペラのクラスの何人かで、私たちの演劇の先生が演出した野外オペラのカルメンを観に行った帰りにジェラートを食べた時はLucas がわたしにおごるというのをなんだか気まずくて断って、Méliがそのあと彼に「どんな女の子タイプなの?アジアンは?」と尋ねてわたしはむせてしばらく咳き込んだ。彼は意地悪なお兄ちゃんみたいだった。男の子にあんなになんでも話したのは生まれて初めてだったが、あんなに何にもわかってくれない友達も彼だけだった。物理的にも石頭で、1度ものすごく腹が立って思いっきりデコピンをしたらわたしの中指の爪の方が痛くなったのを覚えている……。

馬鹿みたいな思い出がたくさん。
マリファナが合法になったばかりだったせいか、自分で吸ったことはないのに夏の夜の思い出からはいつもあの甘ったるい匂いがするようだ。

わたしの心の一部はいつもあの街にある。
故郷から離れた場所に暮らすと言うのは、心が小さなかけらになること。

なかなか会えない人を愛するということが、自分の心の一部を自分から離れた場所に置いていくということなのと同じで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?