【同時通訳演習 第6回 振り返り】通訳者 村, 柘 & よしむら

こんにちは!
今回は、2月20日に同時通訳演習第6回にてトリオで通訳チームを組んだ村、柘、よしむらで演習の振り返りをさせていただきます。こちらの同時通訳演習は関根マイクさん主催の英語通訳塾の授業の一環として行われたものです。

京都の魅力


 今回の同時通訳演習では受講生Aさんの日本語でのプレゼンを英語へ通訳しました。タイトルは「京都の魅力:Attractions of Kyoto City」でした。Aさん自身が京都生まれ京都在住ということで、ディープな京都の魅力を発表してくださいました。もちろん内容としてわかってはいるものの、日本の文化、仏教における考え方など英語にするのはなかなか難しい内容でした。

今回の演習を振り返って

 今回私は3回目の同通演習でしたが、日英(日本語→英語)の演習は初めてだったのでかなり緊張しました。もともと多くの日本語ネイティブの通訳志望者が抱えている問題かとは思いますが、日英に苦手意識があるので、当日に向けてかなり準備しました。「大文字」や「あぶり餅」などもちろん存在自体は知っているものの、いざ英語で説明しようとすると難しい、また点火の順番やそれぞれの形の意味するもの、歴史など日本語でも知らなかったことが内容の中に多かったので学ぶことができたのも個人的に興味深かったです。

よしむら 日本の文化や歴史の通訳をするのは今回が初めてでした。また今回のテーマもあまりなじみがありませんでした。けれども、以前よりも少しずつパフォーマンスの向上がみられたのは、発表者Aさんが開いて下さった事前の打ち合わせ、さらに同じチームとして演習に臨む前に練習する機会を設けてくださった村さん、的確な練習材料を提供してくださった柘さんのおかげでした。本当にありがとうございました!また中でも特に祝いの「ハレの日」のお話は、千年以上も続いていること、その地域で受け継がれる愛にとても感銘を受けました。本当に素敵な発表でした(にも関わらずそのように思い出させてくれたきっかけは、自宅にある某オーラルケア商品の効果欄にあった「ハレ(腫れ)」だったのですが…)。

柘 京都は大学時代に住んでいた思い入れのある町なので「京都に戻りたい。鴨川を歩きたい・・・」と感傷に浸りながら事前打ち合わせを聞いていました。ただ、京都のことを知っているからと言って自動的に英語で説明できるわけはなく、英語の観光ガイドでもやってりゃよかった!と思いながら準備を進めました。今回は同通演習2回目で、日→英は初めてでした。英→日も私にとってはとても難しいのですが日英は特に苦手意識があったので、打ち合わせの段階で発表者のAさんから出た表現は一通り英語での再表現を用意していました。「煩悩を消す」「奉納する」「ご利益がある」など、こういった日本語特有の慣用的な言い回しを英語でどう表現するのかを事前準備で考えられたのは今後のためにもとても大きかったです。

よかった点・うまくいかなかった点

よかった点

 私のよかった点は、いざ始まってみるとプレゼンターのAさんが話すペースが自分の想定よりもかなりゆっくりだったので、落ち着いて臨めたことです。課題であるスタートの立ち上がりにも改善が見られたと思います。また、演習の前日にトリオの3人でZoomで集まって私の個人的な課題でもある、同通のバトンの受け渡しのところを重点的に練習できたこと、また訳出の単語のすり合わせができたので安心して当日臨むことができました。特にバトンの受け渡しでは、よしむらさんより、「Chronograph timerの時間が過ぎたタイミングで次のターンの通訳者がLINE通話の画面で自分は準備できてます、と合図を出す、それを見て今のターンの通訳者はしゃべっている文章を終わらせて次の人に交代する」というアイディアをいただき、実践したことで前回よりは格段にスムーズにバトンを受け取ることができたと思います。ただ、悪かった点で詳細は記載しますが大ポカをしてしまい、柘さんには特にご迷惑をおかけしました。

よしむら 今回の演習でも事前にゴールを決めて取り組みました。ある程度達成できたものは①話者の個性を活かして訳出する(穏やかさが少しは再現できたかな…)②順番が回ってきたら3秒以内に訳出開始(2秒以下でできました)でした。他に気づいた点は、全体的にはどうにか話者と伴走しながら訳出を続けられたことです。間違いはありつつも訳出を続けていれば、聞き落とす可能性は減ります。もう一つは、ほとんど全てのセンテンスを完結させられたことです。それぞれの文が適切に、短くなっているのと同時に、より聞き取りやすくはなってきたのかなという印象も受けました。また通訳訓練全体についてなのですが、最優先するべき弱点を確信できたのも収穫でした。それは話者のメッセージを十分に記憶に留めておけないことです。聞き続けてすぐに訳せる同時通訳と比較して、覚えておかなくてはならない逐次通訳の進歩がなかなか見られません。その最大の障害は訳すべき情報が頭にあるかどうかでした。またチームメンバーからも学ぶことは多くありました。村さんは、数秒早く引き継いでくださっただけでなく、通訳の3原則を常に実践されておりよりクリアに訳出され、とても理解しやすかったです。特にキーワードを丁寧に伝えているのが印象的でした。柘さんは、的確な言葉選びが素晴らしく(to feel that summer is almost over, to ward off a plague など)、今回の準備やこれまでのご経験が活かされているのだろうと感じました。

柘 音源を聞き返してみて、前回(自身にとって初めての同通演習だったCryptocurrency回)よりも無言の時間が少なく、聞きやすくなっているように感じました。(それでも5秒弱の間が最低2回は出てきていましたが)。以前は5秒以上の間が何度もあったので、そこは少し進歩が見られたかな、と思います。また、これも少しの進歩ですが以前よりも声は出せていたのかな、と思います。もう一つは、交代のタイミング(今回は1回のみだったので確率的に信頼性は低いという問題は置いといて)であまり焦らなかったことです。前回の1回目では全くスムーズに訳し始めることができなかったのですが、今回は事前に勉強会をしたこともあり、交代後すぐに訳し始めることができました。これは村&よしむらさんに感謝です。

うまくいかなかった点

 何よりもまず、自分の2巡目のターンで自分の持ち時間が過ぎているにも関わらず、気づかず担当時間が5分のはずが10分(最後まで)やってしまい、柘さんの2回目の機会を奪ってしまったことです。原因としてはChronograph timer(注)を5分のリピート設定にしていたため(5分が終わったら自動でもう一回5分が始まる)、ちらっと途中で見た際にまだ3分くらいあると勘違いしてしまった(実際は5分が過ぎていて2回目の2分過ぎたあたり)という痛恨のミス。また、前日にLINEの画面で合図を送ると約束していた(実際に柘さんは何回も合図を送ってくれたようです)にも関わらず、全く画面に意識がいかず、チームワークを乱す結果となってしまいました。他にも万灯籠(五山送り火の起源となった松明行事)をTorch festivalと訳そうと前もって決めていたのですが、発音が悪過ぎて「杜氏 festival」のように聞こえました。発音は時に焦った時に私の課題なので、意識して変えていきたいです。

(注)Chronograph は、遠隔通訳の際に通訳者が使用するタイマー。同じタイマーを共用しスムーズな交代を行えます。

よしむら もともと目指していた目標で未達成となってしまったのは「短いセンテンスで訳出を続ける」ことでした。まだ格好つけようとしているとしているので、分かりやすくメッセージを伝えることにより意識的に取り組まねばと思いました。そして聞き直して気づいた点の1つ目は、語彙の不足による訳出遅れ、誤訳さらに説得力不足です。とりわけ(…は中略です)「建物が低いおかげで…圧迫感がなく…遠くに山が見えるというのも…京都の好きなところの一つです」という原発言には、テーマ特有の表現は無かったのですがとても困りながら訳してしまいました。よしんば間違えそうになっても、今の自分なら最低限伝わるように訳せることを再認識するのも大事なのかもしれないと感じました。2つ目は自分の訳出に間を作ってしまったことです。これは話者に合わせすぎたことで大きく間を空けてしまったのが原因のひとつでした。関根先生からは「スライドが見えている時は、次の話の内容が明らかなので視覚情報も活かして間を埋めよう」とのアドバイスを頂きました。勇気を持ってコミットしよう、というご助言でした。3つ目はセンテンスが伸びるほど文法は粗く、つなぎ言葉(filler)は増えていったことです。これについては、毎日少しずつ適切な日本語と英語を使うことを心がけることで、良くしていこうと考えています。私の場合は、日本語は冗長に、英語は不十分な説明で淡泊に話してしまうきらいがあります。今回の例では、今のところ上手に長いセンテンスを作れない英語なのだから、それを克服を意識しつつも短い文で訳していく(話していく)練習が必要だと気付きました。

柘 交代して最初の訳出で年号が出てきたのですが、before 1962~と言わなければいけないところを、数字を聞いてその瞬間にin 1962~と訳し始めてしまい開始早々焦りました。そして、時間でatを使うべきところをinと言うなどとても恥ずかしい文法ミスが散見されました。また、複数・単数形、aとtheの使い分けなどもうまくできていませんでした。五山の送り火の説明に関しても、火が付く順番で「妙法」が2回出てきたり、ちゃんと聞き取れていないのがわかります。関根先生から指摘していただいたところは、要請といった意味で使われた日本語をdemandと訳してしまったところです。demandは元の日本語に比べるとかなり強い意味になってしまうのでそこはもったいなかったとご指摘をいただきました。意味の強弱に応じていろいろな語彙を用意できるようになりたいです。そして、今回組ませていただいたお2人に比べるとまだまだ声を使えていないです。声が落ち着いておらず自信のなさが感じられます。村さんの声の大きさと、よしむらさんの落ち着きが欲しい!また、今回発表者のAさんの話すスピードはかなりゆっくりめだったと思うのですが、それでも訳出に遅れてしまう時があったので恐れずさくさく訳出していく必要があると思いました。最後に、先日のゲスト講義で白倉先生にご指摘いただいた語尾が上がってしまう癖が散見されました。

次回への改善点/取り組み

 時制のミス、発音、焦ると文法が崩れることなど見ていくと気になるところばかりなのですが、一歩一歩意識をして改善していきたいです。先日のゲスト講義の際に白倉先生に教えていただいた「課題点に重点を置いてサイトラをする」ということをコツコツと積み重ねて日英の訳出しに自分でも自信を持てるように日々練習していきたいです。また、次回の同通演習の際には通訳のバトン私の部分はせめて完璧にできることが目標です。

よしむら 怠らずに準備を続けること、クールに決めようとせず短いセンテンスを続けること、そしてキーワードを中心に訳して伝えることの3つを今後はより意識していきたいと思いました。今回は一緒に組んだお二人から学んだ事、自分の訳出の悪い傾向や逐次の弱点も気づけました。特に短いセンテンスで分かりやすく伝えるというのは、日常の中で少しずつ取り組んでいきたいと考えています。

柘 分かりやすい文法ミスをなくしていきたいです。そのためには通訳以前の問題として英語の運用能力を高める必要があります。そして、少しずつ同通演習の雰囲気に慣れてきたところもあるので、次はFIFOやチャンキングなど講義で習ったことを意識しながら訳していきたいです。また、今はまだ自分の声にまでなかなか意識が向かないのですが、落ち着きがあり、自信を感じられるような声を使えるようになりたいです。最近の講義で、声が高く語尾が上がりがちであるということを指摘していただいたのは自分にとって大きな発見で、これを改善すれば自分の通訳はどう変わるのかを実際に聞いてみたいと思っています。

これからも英語通訳塾ブログをよろしくお願いします。それでは次回もお楽しみに!

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