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フラワーロスや業界の未来と向き合う「スマイルフラワープロジェクト」

コロナ禍による市場縮小で生じたフラワーロス問題の改善や、規格外として廃棄されるお花を救いたいとの想いで2020年4月にスタートしたプロジェクトがあります。[株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーション]が運営するスマイルフラワープロジェクトです。今回はその責任者・山本さんにお話をお伺いしました。

コロナ禍で深刻化したフラワーロス

プロジェクトが始動した2020年4月といえば、緊急事態宣言が発令された頃。「本当に全てがストップしてしまったんです。生産者さん、市場関係者、同業の花屋さん、皆が困窮していました。行き場をなくしてしまったたくさんのお花を救いたいと思ったのがプロジェクトを始めた最初のきっかけです」。

富山県にある[株式会社ジャパン・フラワー・コーポレーション]はグループ会社でフラワーショップなども運営しており、お花は契約農家さんから定期購入していたのですが、店舗が営業できなくなってしまったことでお花を買い取っても消化できない状況に。通常、3〜4月は送別やお店の開業、引っ越しといったイベントごとが多く、春の需要期。5月には花業界にとって一大イベントである母の日があります。生産現場はこのような需要を見越して1年前から作付けしており、需要がなくなったからと言っても生産は止められません。咲いてきてしまうお花を刈り取っても出荷する場所がないという、かなり衝撃的な状況だったそうです。

「あの時期は食品ロス救済関連のサイトなどがどんどん立ち上がり始めていました。わたしたちも最初はFacebookコミュニティに投稿したのですが、ありがたいことにそこで多くの反響があり、一夜にして800件以上の応援コメントが寄せられました。その後すぐにオンラインショップを立ち上げ、一般的な購入価格より安く設定して販売を開始。しかし、せっかく生産者さんが手塩にかけて作ったお花なので、通常よりは安いけれど、なるべく正規品に近づけるように価格設定しました。現場での手間がかからないように、市場に流通させるときと同じ箱で行うようにするとどうしても30〜50本という数になってしまい、一般の消費者さんには量が多いだろうとは思ったのですが、現場や発送の手間を考慮して、あえてそのままお客様に送ることにしました」。

オンラインショップのスタートから半年〜1年くらいはコロナの影響が大きく、冠婚葬祭やイベントが全く動きませんでした。“おうち時間”が増えたせいかフラワーショップなどの店舗では需要が増えた一方、大きなイベントごとでたくさんのお花が使われる場が圧倒的に減少。「オリンピックに向けてもたくさんのお花が生産されていたのですが、延期になったため、それらをなんとか買い取ってお金に変えるという作業をしていきました。最初は捨てられるお花を救いたいという想いで活動をしていましたが、次第にこのままだと作る人が減ってしまう、作る人がいないと先がないと危機感を持つようになったんです」。

結局、元々あった課題に1つずつ向き合うしかない

今年売りたいお花は昨年作付けしたもので、来年のお花は今年仕込みます。作付け計画は数年スパンなので、突然このように劇的に出荷量が変動すると農家さんはリスクを考えて来年の出荷量を減らします。農業自体をやめざるを得なくてやめてしまった方もいるし、花はお金にならないからと野菜に移行した方もいたのだそう。「農業現場には元々こういう課題はありました。今までも、活動をしていく中でこういった問題にぶち当たって、その都度解決に向けて動くといくということを繰り返してきたのですが、ここにきてやはり、今まで課題として捉えていたことや改善した方が良いと思っていたことを1つひとつ解消していくしかないんだなと、活動をやればやるほど感じるようになりました」。最初は捨てられるお花を救いたいとの想いでスタートしましたが、今はなるべく適正に買い取ってお花が活躍できる場を作る、そして農業現場におけるいろんな課題を解決していく、という2つの軸で取り組みを進めているそうです。

農業現場の課題解決のため、そしていわゆる“規格外ロス”の改善のため、オンラインショップでは去年から規格外のお花の販売が始まっています。「とってもキレイに咲いているのに出荷できないお花って本当にたくさんあるんです。規格が厳しいなと思う部分は正直ありますね…。市場の存在は生産者さんにとってはとても大きいものですし、“美しさの基準”があることで価値になり、ブランドになる。それもよく理解できます。業界内でもいろんな取り組みが行われていて、社会課題解決やSDGsの流れもあり、理解が得られやすくなって、生産者さんや市場の方も前向きに取り組みやすくなってきているとは思います。しかし、フラワーロスという課題はコロナ前からずっとあったものですし、いろんな立場の方たちとさまざまな課題が絡み合っていて、取り組まないといけないことが山積みの状態です。1つずつ地道に進めていくしかないなと感じているところです」。

生産者さんからもフラワーロスについて聞かれることがあるそうですが、フラワーロスというのは食品ロスのように正確な数字が見えづらいのが特徴です。ロスが発生する場所や課題が多岐に渡り、ロスの量はそれぞれの肌感覚や季節、天候によってもバラバラ。「農家さんに聞くと、トータルの生産量のだいたい2〜3割かな?とおっしゃいます。その一部を直売所で売ったり、知り合いが安く買い取ってくれたりと、ロスをなくすよう努力されている方もいらっしゃいます。ロスに対する感じ方や考え方は、農家さんによって本当にさまざま。ロスに関して何かできることがあればお手伝いをさせてくださいと伝えても、一斉に咲く規格品を摘み取るだけでも手一杯で、そのうえ規格外品を収穫するなんて難しい。難しいから結局ロスになってしまい、いつどれだけ出るか予測できないからロスになる。ロス分を安定的に提供してほしいと言われても難しい、と。もったいないとは感じていても、ある意味仕方ないと思っている部分はあると思います。もったいないけど、じゃあどこまでどうやってやるかのせめぎ合いなんです。スマイルフラワープロジェクトで扱っている規格外のお花はある程度収穫の見込みがあるものですが、それでもやはり時期や量はまちまち。安定供給を求めるものではないので、お客様にはご理解をいただいて発送までお待たせすることもあります」。

現状、ロス分は道の駅や農協などの直売所での販売や、農家さんが運営するオンラインショップなどで販売されている方が多いようです。規格外品を安く出荷されているところもあり、市場にも出ているのだそう。しかし、ちゃんと買い取ってもらえるかはまた別の問題。「やはり、規格品を正規料金で安定的に買い取ってもらうことの方が大事。でもロスを減らすことも大事。そこをどう捉えて経営に落とし込むかは、農家さんによって本当に違いがあります」。

フラワーロスを解決していくには

関われば関わるほどいろんな問題が見えてくると語る山本さん。「私は現場側なので、まずは現場で出くわす課題を1つひとつ解決している状態です。広い視野で見ると、業界全体が一丸となって改善に向けて動かないといけないなと思います。「生産」「物流」「販売」、この3つをしっかりつなぐことが大事。今はそれぞれの立場でそれぞれの問題が起こっているので、全体の意識改革や意識や課題の共通化、一体化を図ることで解決されることが結構あるのではないかと感じています。コロナ禍で業界全体が危機的状況に陥り、皆で手を組んで皆で解決しないといけない、構造を変えないといけないといった想いや動きはそれぞれの立場で出てきたと思うので、徐々に取り組みやすくなってきたと思います。花業界以外からのお知恵も借りながら、改善していけたらと思います」。

お花のある暮らしを楽しむ人を増やしたい

「今後の取り組みとしては、お花を楽しむきっかけをつくること、お花のある暮らしを楽しむ人が増えるように小さくても一歩一歩を積み重ねたいと考えています。フラワーロスを削減するというと壮大で難しいように感じられます。ですが、1本でもお花を楽しむ人が増えれば、飾る方にも、周りの方にも笑顔が増えます。お花を買っていただくことで生産者さんの収入源となり持続的な活動や、喜びにもつながります。幸いにも、数多くの企業様や教育機関、研究機関の方々からも、フラワーロスの課題解決へのお問い合わせや、ご一緒に取り組んで頂く機会が増えてきました。これからも想いを共にする方々と一緒に、自然とお花に触れたり、手に取る機会を創ることができるようにと考えています。花を通して笑顔のサイクルが繋がり続けるように。100年先の未来にも、花を育み愛でる豊かなこころやくらしを繋いでいきたい。そう考えて活動を続けてまいります」。

個人ができること

最後に、私たち一人ひとりができることは何か聞いてみました。
「まずは興味持っていただくことです。何をしていいかわからなくても、まずはこうやって記事を読んで何が課題かを知ることも重要な一歩。すごく大事なことだと思います。決して大きな一歩を踏み出して欲しいわけではなくて、手の届く範囲のことを継続していくことが大事。自分にできることを続けていくことが、社会課題の改善に貢献することにつながると思います」。


山本さん、ご協力ありがとうございました!


フラワーロスに関する課題や要因は本当に多岐に渡ります。
もっと知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
そして「スマイルフラワープロジェクト」のサイトをぜひチェックしてください♪


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