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カフェオレの湖畔に佇んだとき、創造をみた。



とんでもないイリュージョンがはじまった、
この店には魔法使いがいるー


私は東京出張がてら、1日だけ自分の好きな場所をめぐる甘やかしご褒美デーを敢行した。

その中で訪れたのが、喫茶トリコロール。
銀座の街に堂々たる店構えでひっそりと佇む、老舗の喫茶店だ。


ミルクとコーヒー、どちらの割合を多くされますか?半分ですか?

なんなんだ?どれが正解なのだ?
つまんない女となり腐ったわたしは、じゃあ半分で、と答えた。じゃあってなんだ、世界で一番いらないじゃあだった。

そこからが、驚いた。
女性のマスターは両手を高く上げた。なんと両手にポットを持っている。乳白色のミルクと琥珀色のコーヒーがあれよあれよと注がれる。

その一瞬は永遠にも感じた。どうやっても写真が撮れなかった。

携帯に収めるには畏れ多かった。数年かけて培った技術を、文明の利器で、なんの努力もせずに収めることが、失礼に感じた。(のだろう)

ミルクの糸とコーヒーの糸が
目の前で華麗にクロスして大きな水脈となる。

口がまあるく広い、深いコーヒーカップに、魔法のように吸い込まれていく。

そのとき私はハッとした。

これは、スサノオノミコト的な要素を感じる。

海を混ぜたら淡路島ができていた、というやつ。そういう神聖な香りさえした。

あっという間にコーヒーカップにはぷくぷくの泡がやさしく覆っていた。

カフェ・オ・レという名の湖ができている。
私はいつの間にか湖の前に佇んでいた。
湖畔、トリコロール。尊くて、3秒くらい見つめた。

湖を飲む、そんな経験したことない。

はて、ひと口入れてみると、
私のカフェ・オ・レ概念が覆されることに。
頭の中の辞書では、「なんでも中途半端な後味悪いやつ。名前おしゃれなくせにたいしたことない」ととんでもない悪口のオンパレード。

ふわりとミルクの優しさとコーヒーの苦味が相まって、舌で感じる幸福感。カフェ・オ・レの新境地を発見。
カフェ・オ・レごめん。

女性のマスターの手つき、スタッフさんたちの動き、すべてがこの店を形づくる要素になっていた。

業務連絡がもはや歌のようだった。みんな声がいいのだ。それに、言葉遣いも。ごめんね、ありがとう、が飛び交う。

ひとつのことにどこまで私たちは本気になれるのか、そう見せつけられている気がした。

最後のひと口まで、泡は残っていた。
私もそんな後味良いやつになりたいと思った。


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