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雨男先生

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いつか雨の日に
書こうとしていた話があった。

皆さんの周りには
雨男雨女という存在は
いるだろうか。



「雨男」「雨女」
という言葉をたまに聞くが
定義は曖昧なものだ。

その人と会う時や
その人とどこかに出かける時などに
雨が降っていることが多い。

だいたいこんな感じだろう

僕が今まで出会った中で
一番の雨男は
小学校の時の校長先生だ。

ハッキリとは覚えていないが
1年生の頃から4年生頃まで
僕が通っていた小学校にいた気がする。

校長先生となんて
ほとんど交流はなかったが
なぜか印象に残っている。

校長先生はほぼ毎日学校にいた。

いくら雨男だと言っても
別に毎日雨が降っていたわけではない。

入学式や始業式、終業式など
大事な行事の日に
力を発揮するのだ。

式典の日の朝に雨が降っていると

「校長先生すごい威力やな」

と思いながら登校したものだ。


その先生は手品が得意だった。

式典の
校長先生挨拶の際には
必ずと言っていいほど
手品をやっていた。

見ていたのが小学校の時なので
かなり曖昧だが
腕前は

上手くも下手でもなく

めちゃくちゃ中途半端だった。

ただ小学生の僕らにとっては
長く話されるよりも
手品をしてくれる方が
ありがたかった

この先生は全国の小学校の中でも
トップクラスの生徒に好かれる
校長先生だったと思う。

僕たちは
たまにアスレチックで
遊んでもらったりもした。

ある日同級生たちと
アスレチックを上り下りしながら
戯れていると

校長先生がやってきた。

一緒になって
ワーワーやっていると

次に招かれざる刺客がやってきた。

元気に遊んでいた僕たちは
手を止めて
その真っ黒な物体へと目を向ける。

ゴキブリ

当時まだ小さかった
いっぽ少年は
生のその物体を
見た経験があまりなかった。

周りのみんなも同じ気持ちなのか
完全に引いてしまい
後退りしている

その中でただ1人
勇ましく立ち上がったのが
校長先生だった。

自らが履いていた
スリッパを片方脱ぎ、

右手でラケットのように構え
鋭くその黒い物体に振り下ろした。

その姿は
とても勇敢で
頼もしくもあったが

今考えてみると
小学生が大勢見ている前で
教育者が行う倒し方としては
果たして正しいのだろうか
という疑問は残る。

その当時はカッコよく見えてしまった。


時が過ぎて
僕は小学校高学年になった

校長先生が違う人に代わるという。

少しショックだった。

出来たばかりの小学校の
2期生であった僕たちは
一人一人の先生に愛着を持っていた。

卒業証書はあの校長先生から
受け取りたい

という思いを持っている同級生も多かった。

そして迎えた卒業式
僕たちは新しい校長先生から
卒業証書を受け取る

来賓の中には
前の校長先生が来ていた。

卒業を見届けに来てくれたのだ。

式が終わり
大ホールの外に出る。

懇親会の会場に向かうため
僕たちは歩き出した。



ポツ   ポツ       ポツ



空を見上げた

雨が降っている。

「全然威力衰えてないやん」

僕は心の中で思った。


僕たちはそれぞれの中学校へと
進学した。




それからまた
もっと長い時がすぎて

僕たちは成人式シーズンを迎えた。

私立小学校出身である僕たちは
それぞれが離れた場所に住んでおり
家が近所の地元の友達という存在が
ほとんどいない。

そのことを考慮してからか
成人式のかわりに
小学校の大きなスペースでの
成人の集いというものを
同級生が企画してくれた。

当日の朝
僕たちはスーツを着て
いつも式典が開催されていた
大ホールに集合する。

そこではまずはじめに
自己紹介の時間が設けられた。

おそらく

顔は覚えてるけど
こいつの名前出てこうへんなー

みたいな状態を
未然に防ぐためだろう

それが一通り終わると
ある人物が壇上に現れた

初期の校長だ

最後に見た時から
10年近く経っている。
当然のことだが少し老けていた。

手品を披露する。

全く衰えてはないが
上達してもいなかった。

懐かしい気持ちを抱えながら僕たちは
卒業式の後に行われた懇親会の会場へと
移動するため外に出た。

地面が少し濡れて
所々色が変わっている。


両手を広げて空を見上げた。


力強く輝く太陽と
少しの雲だけが
空を覆っている

「威力弱まってるやん」


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