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時計店

⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)


一昨日のnote記事で
『メルカリ日記』
というものを書いた。

ちなみにこちら
   ↓
   ↓
   ↓


その中で時計の話を書いたのだが
それによって
ある時計屋さんのことを思い出したので
皆さんにも是非知っていただこうと思い、
筆を執ることにした。


これは梅田の地下で営業している
ある一軒の時計屋さんの話である。


1年以上前のある日の午前9時ごろ、
僕はバイト先に出勤するため
電車に乗っていた。


左手に違和感を覚える。


左手には僕が今でも毎日つけている
腕時計があった。

今朝、いつものように
左手首につけたのだが
何かムズムズして居心地が悪いのだ。


一旦外してよく観察してみると
前確認した時と
形が少し違うことに気がついた。


部品が故障しているのだろうか。


もう一度付け直してみて
確認するのだが
やはり気持ちが悪い。


そこまで完全に誰が見ても
壊れているというわけではないのだが
装着感がいつもと違うのだ。


この作業を何度か繰り返したが
その違和感が解消されることはなかった。


これは素人の僕が
説明書も無しに
ましてや電車の中で
どうこうできるものではない。


どうしようか。

バイトは10 時からだ。


今の時間に空いている時計屋さんは
あまりないだろうし
そもそも時計屋さんの場所自体を知らないし
時間に余裕もない。


今日はこのままいくか。


そもそも時計なんて
絶対に必要な物ではない。


今日一日無くたって
そこまで生活に支障が出るわけではないのだ。

今日1日は時計がないことは諦めて
過ごすしかない。


それに時間が狂っているわけでもない。


時計としての役割は一応たもっているし
スマホだってあるのだ。

腕時計がある生活が当たり前だったので
少しテンションは下がったが
僕はいつも通り出勤することにした。


バイト先の最寄りである梅田駅に着き、
そのまま歩いていると


ある一軒の時計屋さんを見つけた。


しかも開いている。


壊れてしまった時計を見ると
9時35分だった。


今僕がいる場所から
バイト先までは
だいたい10分くらいかかる。

今この時計屋さんに寄れば
ほぼ確実に間に合わないだろう。



しかし次の瞬間、
何を思ったのか僕は
吸い寄せられるように
その店に入って行ったのだ。

少し、もじもじしながら
中にいたおじさんに話しかけた。


「あの、時計の調子が悪いんですけど」


おじさんが近づいてくる。


「ちょっと見せてもらっていいですか?」


僕は時計を渡し、

何がどう壊れているのか
あまり良く把握していなかったので
辿々しくではあるが説明した。



「なるほどね」

「すいません、僕ちょっと急いでるんですけど」

自分から店に入ってきて

頼み事をしているのに
時間がないと言い出すのは
かなり自分勝手であることは
十分わかっているのだが
遅刻するわけにもいかないので
一応伝えてみる。


「わかりました」


わかりました?

僕の時間がないという発言を
わかりましたの一言で片付けたおじさんは
専用の器具を使って
時計に処置を施し始めた。


何をしているのか
素人の僕には全くわからなかったのだが
おそらく時計を構成している
重要な針金というか
鉄の小さな棒の一部が折り曲がっており
それを新しい物に交換してくれているようだ。

「はい、できました。
1回はめてみてくれる?」


時計を受け取った僕は
すぐにそれをはめてみる。


完全に直っていた。


それは
今まで僕が毎日のように見てきた
あの時計と全く同じ姿だった。

代金は確か600円くらいだった気がする。


お礼を言い、店を出ると
時計を今一度確認してみる。


9時40分


驚いた。

時計が直るのかという
不安な気持ちと
バイトの時間に間に合うのかという
焦りがあったせいか

今の一連の出来事が
たった5分には感じられなかったのだ。

確かに一瞬ではあったが
まさか5分しか
かかっていないとは
思わなかった。

細かいやりとりなどを含めると

もっと短い時間で作業が完了していたことになる。


感動しながらバイト先に向かう。


その日僕はいつも通りの
快適な1日を過ごすことができた。


このおじさんの何が凄いか


まず、僕に
具体的にどのくらい急いでいるのか

時間がどのくらい残っているのかを
聞かなかったことである。


もし、この時
どのくらいの時間が余っているのか
僕に目安を聞き

それによって


「うーんそれだとちょっと厳しいかなぁ」


などとおじさんがリアクションを
取っていれば
僕の不安は増していただろう。


つまり、あの自然かつ
端的なやりとりによって
僕に安心感を与えたわけだ。

そしてさらに凄いのは
朝一にも関わらず
淡々と
そして確かに仕事をやり遂げたことである。


バイトの休憩時間に
気になりすぎて
この店の営業時間を検索してみた。

すると9時30分営業開始だったのだ。


つまり、かなり高い確率で
僕はその日初めてのお客さんということになる。


朝一で
こんな訳もわからない若造が

訳のわからない注文をつけてきたのに

表情を全く変えず

僕の満足のいく結果に
導いてくれたのだ。


すごく平然としたその態度には
なんのいやらしさもなかった。


僕ならばもしこのような仕事を
やり遂げた時には
絶対にドヤ顔をしてしまうだろう。


作業をしている途中も

「これはね、
これがこうなってるから
だから、こうしたらいけるんよ。」

「俺くらいになると
これくらい簡単にできるからね」

「びっくりしたやろ?
できてまうんよ俺くらいなると」


などと
恩着せがましく
アピールしまくるだろう。

おじさんの仕事への姿勢に
感心しすぎて
その日のバイトは
いつも通りの時計が戻ってきたにも関わらず
少しフワフワしてしまった。

次もし僕の時計が
なんかしらの不具合を生じたとして
僕が大阪にいなかったとしても
その時計屋さんに行くだろう。


そのくらいの店だった。


皆さんも、興味があれば是非探してみてください。


梅田の地下にあります。


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