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スマホを落としただけなのに

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これは今から
1週間ほど前の話

髪の毛が伸びてきたなぁ

よくわからない髪色になってきたので
新しい色に染めたいなぁ

と思っていた僕は
いつも行っている美容室に予約を入れた。

「もしもし、明日の夕方ごろから
行きたいんですけど」

「髙橋さんですね。
いつもありがとうございます。
担当の〇〇だと12時00分からで
いかがですか?」

はじめは
夕方ごろに行きたかったが
僕は散髪の後、
どこかでネタを書こうと思っていたので
逆に早めの方が都合がいいと考えた。

「わかりました。お願いします。」



次の日

昼前に起きた僕は
シャワーを浴び、
支度をして出かけた。

15分ほどバスに揺られ
美容室の最寄りのバス停で降りる。

なんかお腹痛いなぁ。

僕はこの数日間
確実に腹を壊していた。

何が出るわけでもないのだが
何故かずっと痛いのだ。

美容室に着くと
担当の美容師さんが出迎えてくれた。

髪を切ってもらう。

しばらくすると強烈な眠気が
僕を襲った。

あかん、
めちゃくちゃ眠たい

散髪をしている間
眠くなる人は結構いるんじゃないだろうか。

僕もその1人だ。

子供の頃なんかは
理髪店の店長の息子さんに
頭を支えられながら切られたこともある。

しかし大人になった
今はそういうわけにはいかない。

なんとか耐えないと。

幸いにも美容師さんが話しかけてくれ
なんとか寝ずに耐えていた。

散髪がすみ
カラー剤を髪の毛に塗ってもらう。

染み込ませる為
そこから数分間待つ

この時に眠気がピークを迎えた。

美容師の方がどこかに行ってしまったのだ。

やばいやばいやばい。

これは本格的に寝るやつやぞ。

カラー剤になにか入ってるんじゃないかと
疑うほど眠い。

意識を失ったように
居眠りをしてしまい
気がつくと

美容師さんが
僕の頭に張り付いたラップを
取り始めていた。

「すいません、ちょっと寝ちゃって」

「全然大丈夫ですよ」

一旦目覚めたが
全然余裕でまだ眠たい

シャンプーをしてもらい
セットをしてもらう時も
意識は朦朧としていた。

「またお願いしますね〜
ありがとうございました〜」

エレベーターの前で見送られ
僕は店を後にした。

あかん

この状態ではネタ作りどころではない

一旦仮眠を取らないと

僕は朦朧とした状況で
知恵を振り絞り
1つの案を思いついた。

そうだバスに乗ろう
(そうだ京都に行こう)


いつか他の記事に書いたことがあったが
京都の市バスは非常に便利だ。

例えばここからバスで
河原町(京都の中心、繁華街)
もしくは
京都駅に行くとすると

だいたい30分以上はかかるので
その間寝ることができるのだ。

着いたらそのまま
どこかの喫茶店に入り
ネタ作りをしよう

よし、この作戦で行こう。

僕は目の前にたまたま来たバスに乗った。


その時の僕は
一つの重大なミスを
犯したことに気がついていなかった。


系統を確認していなかったのである。

系統とは京都の市バスの
路線を示したものであり
100種類以上ある。

まあどこ着いても
ネタ書く場所くらいあるし
帰ってこれるやろぉ〜

軽い気持ちで
席に座り眠りにつく。



 

一体何分くらいバスに
乗っていたのだろうか。

目覚めると
見たことのない景色が
車窓から見えた。

どこや ここ

見渡す限りの
住宅街

どこ?ここ

乗客はほとんど残っていなかった。

もしかしたらヤバイかもしれない。

あかん
腹痛い

眠気で忘れかけていた
腹痛が戻ってきた。

とりあえず次のバス停で降りよう。

そこから次の策を練ろう。

僕は
「次は〇〇です」
というアナウンスの声に反応して
すぐにボタンを押した。

バスを降りる。



本当にここはどこなんだ?

京都に住み始めて5年目

見覚えのない場所

住宅街のど真ん中だが
近くに教会がある。

どこだ?

腹が痛い

問題が山積みだ。

お腹が限界だ。

漏れるかもしれない。
漏れたらどうしよう

僕は大人になってからも
3ヶ月に1回ほどのペースで
漏らす機会があった。

確か前に漏らしたのが
1ヶ月ほど前か

おいおい
ペースちょっと早いやろ
まだ漏らしたくないぞ!

しかもこんな知らない場所で

漏らすならせめて
知っている場所で漏らしたい

知っている場所なら
対処法も考えられる。

どうしよう。
教会でトイレを貸してもらえるだろうか、、

でも大丈夫か?
バチが当たるんじゃないか?

わざわざ教会に行き
礼拝など何かするわけでもなく
ただただトイレを借りる

ダメだ
そういうわけにはいかない。

僕は
スマホを使って
コンビニの場所を検索することにした。


ポケットを探る

あれ?

ん?



カバンの中を見てみる。

ない

ケータイが無いのだ。

どこかで失くしたのか?

なんで無くなんねん!
なんで漏れそうやねん!
ていうかここどこやねん!



泣きたい

なんとか自分を奮い立たせ

とりあえず人を探した

誰か…
誰か助けてくれ。

しばらく歩いていると


何かの建物


警備員の詰所のようなものがあった。

少し表情の険しいおじいさんが
宝くじ売り場みたいな
えげつないぐらい狭い部屋に
1人で佇んでいた。

少し怖いが
話しかけるしかない

「すいません、
あのちょっと携帯を無くしてしまいまして
多分バスの中だと思うんですけど
電話貸していただけないですか?」

「電話?いいよ」

手渡されたのはガラケーだった。

久しぶりに見た。

「すいません、
京都市バスの電話番号わかりますか?」

何故かその部屋の壁に
バスの営業所の電話番号が書いていた。
バス関連の建物なのだろうか。

これは電話できるぞ。

僕はすぐにその番号にかけた。

「もしもし、すいません。
さっきバス降りたものなんですが
スマホを落としてしまったみたいで」

「スマートフォンですか?
何系統でどこで降りました?」

「えーちょっとわかんないですねぇ」

困っていると
おじいさんが助け舟を出してくれた。

電話を代わってくれ
情報を伝えてくれたのだ。

おじいさんに礼を言い
電話を受け取る。

「バス特定できましたんで確認しますね。
ただ、停車中じゃないと
探すことが出来ないので
今からだいたい1時間半後に
もう一度連絡いただいていいですか?」

「え?どういうことですか?」

「1時間半後にくらいに
スマホあったかどうかがわかるので
改めてご連絡頂きたいんですよ」

電話の向こうで少し半笑いなのがわかった。


電話がないのに電話など出来るはずがない。

「あることが確認できれば
営業所まで来てください」

営業所?
どこやねん

「京都外大の隣なんで」 

そこもどこやねん!

キングオブコントの
バイきんぐさんのネタを思い出した。


「わかりました。
公衆電話とかでかけたらいいんですね?」

「はい。じゃあお待ちしてまーす」

電話が切れた。

なるほど
今から1時間半も
時間を潰さないといけないのか

スマホ無しで


まずここはどこなんだろう

親切なおじいさんが
メモに営業所の番号を書いて
渡してくれた。

そしてこの道をまっすぐ行くと
どこに出れる
などの説明をしてくれた。

やはり
持つべきものはおじいさんだ。

僕はおじいさんに
深々とお辞儀をして
感謝を述べ
歩き出した。


しばらくすると
お腹がまた痛くなってきた。

そういえば
腹を壊していたんだった。

スマホを失くした衝撃で
忘れていた。

たまたまあったコンビニに入る。

用を足し、
また歩き出した僕は
あることを考えていた。


出来るだけ営業所の近くにいよう。

1時間半後に電話をして
スマホが見つかったとなっても
近くにいなければ
すぐには取りにいけない。

できるだけ近づこう

そう決意した僕は
己の勘だけを頼りにして
とにかく歩いた。

すると京都大学のキャンパス辺りまで出た。

なるほど。
ここに着くのか

あまり来たことがなかったが
ここからならどう移動すればいいか
ある程度予測がつく。

京都外大の位置はうっすらとわかっていた。

よし、完全にわかるところに出て
そこからは時間になるまでウロウロしよう

ミニ小旅行スタート



しばらく歩いていると
ある定食屋の前を通り過ぎた。

ん?
なんか知ってるぞ

もう一度定食屋あたりまで戻る。

わかった!
ここ余興できたことある!

僕は大学1回生から
落語研究会というサークルに所属していた。

サークル活動として
色々な場所に余興にいく。

そこも一度来たことがある場所だった。

わかった

わかったぞ!

ほぼ完全に
今自分がいる位置を把握した僕は。
バス停へと走り出した

時刻表と行き先が書かれたポールを見る。

思った通りだ

ここに来るバスは
確実に京都外大の近くまで行く。

バスが来た。

乗る

時計を見る。
今日ほど腕時計をしていて良かったと
思うことはない。

あと1時間くらいか。

スマホが無くてもネタは書けるが
不便なのだ。

ネタを書いていると
あれってホンマに
こうやったっけ?
みたいな疑問がしょっちゅう出てくる。

スマホが無いと調べられない。

僕が今から行く目的地に
時間を潰せる場所はないのだろうか

そうだ
少し調べてみよう

あ、

スマホ無いんやった

イージーミス



目的地の近くに着いた。

あと30分

今からどうしよう

そうだ
公衆電話を見つけないといけない。

僕は公衆電話探しに取り掛かった。

どんどん少なくなってはいるが
決して見つからない
ということはないだろう。

どこかしらにはあるはずだ。

近くにイオンがあった。

イオンたるもの何処かには
公衆電話はあるだろう

ウロウロする。

もしかして
トイレの近くとかにあるんじゃないか?

とにかく端っこを探した。

公衆電話はおろか
トイレすら見つからない。



あかん
イライラしてきた

一旦タバコを吸おう

僕は近くにあった喫煙所に向かった。

入ろうとすると
張り紙がしてあった。

そこには
コロナ予防の為
閉鎖する旨が書かれていた。

閉まってるかー

最近ではこうなっていることが本当に多い。

待てよ?

僕は6畳ほどの大きさの
喫煙所を見つめた。

この大きさであかんねやろ?


ほんなら公衆電話も
閉鎖されてる可能性あるってこと?

恐ろしいことに気がついてしまった。


公衆電話ボックスは
この喫煙所より遥かに狭い。

でもあれは入るの1人やし…

いけるんやろか

再びイオンの端っこの方を探したが
結局見つかったのは
合鍵作ったり靴修理してくれたりする店と
クリーニング店だけだった。


途方に暮れる僕

電話をしてから
1時間半が経とうとしていた。

ここから営業所までは
おそらく歩いて5分くらいだ。

もういっそのこと電話せずに
そのまま行こうか

そもそもなんで
1回電話を挟まないといけないのだろう

直接行ったっていいじゃないか!

僕はイオンの外に出た。

するとどうだろう



目の前に公衆電話があるではないか!

キタキタキタキタ!

すぐに公衆電話ボックスに入る。

使用中止になっていなかった。

おじいさんにもらった紙を取り出し
電話をかける

「もしもし、
あ、もしかしてスマホ失くした方ですか?」

公衆電話出かけた時点で
完全に僕だと
バレていた。

「真っ黒のケースのやつですね
初期設定の待ち受け画面です」

「それ僕のです。すぐ取りに行きます。」


営業所に着くと
受付の方がスマホを渡してくれた。

一件落着

スマホを受け取った時
安堵の気持ちと同時に
頭に浮かんだのは
あのおじいさんの顔だった。


近くの喫茶店に移動し
ネタ作りをはじめる。

あのおじいさんが
僕の存在に気づくくらい売れよう

その時僕は決意した。

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