見出し画像

ウソ噺「となりの部署にAIがやってくる」

昨年の夏にコンサルティング会社から当社にプロジェクトの提案がありました。

その名も「プロジェクトAI」。

秋頃、管理職に続き僕たち担当者レベルへの説明会が実施され、内勤系の部署に最新のAIを搭載したロボットが来年から順次導入されていくこと、

手始めに毎日の決まった業務が多い財務部(私の所属する経理部のとなりのシマ)に来年の春から1台、試作品が導入されることが告げられました。

一瞬その場の空気が凍りつきましたが、話があまりにSF過ぎて質疑応答の際も

「ロボットって顔とか手とかもついているんですか?」

とか

「感情はあるんですか?」

などのフワッとした質問しかでてきません。

それから数週間後、最初の1台に引き継ぎをする担当者が決まったあたりから話が現実味を帯びていきます。

引き継ぎ担当者にはこの道30年のベテラン、鈴木さん(男性、50代前半)が指名されました。

おそらく膨大な経費がかかっているであろうそのプロジェクトの先には大量のリストラがあるらしいという噂が広まり、鈴木さんに同情の目がそそがれるとともに我々も他人事ではない!という戦々恐々とした空気が流れ始めました。

しかし鈴木さんは動じません。

往年の技術で着々と「うまく引き継がせない」準備を進めていきます。

Excelの計算シートを値貼り付けして計算式を全部潰したり、Wordで作成されたマニュアルのフォントをみたこともない読みにくいフォントに変換して、1枚1枚デジガメで撮影して保存した後にWordファイルを全て破棄したり、最近では「新人潰し」の異名をとった全盛期の輝きを取り戻しつつすらあります。

社内には一変して安堵の空気が流れ

「鈴木さんから引き継ぐなんてAIも相手が悪かったね」

とか

「最終的にはミスしたAIを鈴木さんがかばって友情が芽生える感動系の話になるんだろうね。」

などの穏やかな冗談も飛び出すようになり、昨日は「AI vs 鈴木さん!1口100円!」という案内が社内の非公式メーリングリストをにぎわせていました。

春の訪れが少しだけ待ち遠しくなってきた今日この頃です。

次回
AI、鈴木さんのトラップを2秒で突破

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?