【全文紹介⑥】『プレ・シングルマザー手帖 』DV、女性問題、金銭問題....困難を乗り越えて、離婚と向き合うお母さんへ
Case4 金銭トラブルに悩むユキさん
大学の卒業間近、免許取得のため通っていた自動車学校で、夫と知り合った。待合室で何度か話しかけられるうち仲良くなり、デートを重ね、いつの間にか私のアパートで半同棲の状態に。家賃と生活費はこれまで通り私が出し、外食をするときだけは彼が出した。
大学を卒業し、介護福祉士として高齢者介護施設で働いていた私は、仕事がとても楽しかった。一方、彼はどの仕事も長くは続かなかった。収入が不安定にもかかわらず、パチンコや競馬にばかり通っていた。
そんな生活が2年ほどつづいたある日、妊娠していると分かった。彼はとても喜んだ。両親は「心配だけど、子どもができたのならしょうがないね。おめでとう」と言ってくれ、私たちはそのまま結婚した。仕事を続けたかったがつわりがひどく、初めての妊娠で心配もあったので、退職することにした。
夫は結婚前と変わらず、仕事のあと毎日パチンコに寄ってから帰宅した。稼いだお金を生活費として家に入れることはなく、あればあるだけギャンブルに費やした。そのため生活費は私の貯金を切り崩していたが、それも底をついた。復職しなければと娘が10ヶ月のときに保育園に預け、昼も夜も介護ヘルパーのアルバイトをして生活費を稼いだ。
離婚の検討・準備
2週間後
夫との合意
1ヶ月後
3ヶ月後
4ヶ月後
新生活の開始
1年後
1年6ヶ月後
離婚の検討・準備
将来が不安になり離婚を決意する
ある日、私が仕事から帰ると、預金通帳の入っている引き出しが少し開いていた。気になって中を確認すると、子どもの出産祝いを貯めていた通帳がそこにない。夫に尋ねると「手持ちの金がないから、少し借りた」と、平然と言った。家にお金を入れないだけでなく、子どものために大切に貯めていたお金にも手をつけたことを知り、「このまま夫といることは、子どもにとっても自分にとっても、マイナスでしかない」と思い、離婚を決意した。
地方の実家に戻る
「別れたい」と何度伝えても、はぐらされるばかりで話が進まない。離婚を決意した今、ここにいてもしょうがないと思い、アルバイトを辞めて実家に戻ることにした。両親に事情を伝え「離婚したい」と伝えたところ、応援してくれた。実家は夫と暮らしていた家からは遠く、飛行機でないと帰れない場所にあったが、両親が交通費を出してくれ、私と子どもを迎えにも来てくれた。
離婚条件について弁護士に相談する
実家に戻ってすぐに男女共同参画センターの女性弁護士相談に行った。車の名義変更や養育費、そして夫が独身時代に作った借金を完済するため私の父が貸した300万円について相談した。弁護士から「お父様が貸したお金については追って考えるとして、まず先に離婚を成立させ、養育費、車の名義変更の順で調停をした方が良いと思います」とアドバイスがあったため、調停を起こすことにした。実態は母子家庭でも法的に離婚が成立していなければ、児童扶養手当や母子医療家庭等医療費助成が受けられず、ひとり親家庭向けの福祉サービスも利用できないため、離婚の成立を優先することにした。
夫との合意
調停を申し立てる
調停を起こすことを決めたものの、夫の暮らしている地域は遠く離れているため、家庭裁判所まで行って調停をするには金銭的にも体力的にも難しく、どのように進めていけば分からなかった。
市役所のひとり親家庭相談窓口でこのことを相談したら、「地元の調停委員会主催の無料の調停相談が近々あるので、そこで相談してみてはどうですか?」と教えてもらい、参加した。遠隔地に住む人への調停申し立ての場合、自分の住む地域の家庭裁判所で、テレビ通話(テレビ会議システム)を使って調停を進めることができると分かった。
仕事を始め、保育園に申し込む
別居から2か月経ち、ようやく調停の申し立てができたので、実家近くの障がい者施設で週3日9~16時までのアルバイトを始めることにした。子どもの保育園の入園申込みもしたけれど希望の園に空きがなく、待機児童になってしまった。母が全面的に協力してくれ、子どもの面倒を見てくれたので、仕事を休むことなく出勤することができた。
テレビ会議システムで調停をおこなう
調停申し立てから約1か月後、実家の最寄りの家庭裁判所に出向き、テレビ会議システムで調停が始まった。その後2回調停をおこない、離婚自体については同意を得られた。養育費は毎月2万円を要求したけれど、夫は「1万円しか出せない」と言い、ここで渋っても離婚成立が伸びるだけだと割り切り、その金額で合意。車の名義変更についても合意することができた。夫が面会交流を希望したので、1年に1回、子どもと一緒に会うことに決めた。
離婚が成立する
最後の調停成立(離婚の成立)だけはテレビ会議システムではできないため、離婚が成立しそうな4回目の調停は、夫の住まいのある地域の家庭裁判所まで行った。対面したくない意向を伝えると、交互に調停室に入りお互いの離婚意思の確認をおこない、最後まで顔を合わせることなく離婚を成立させることができた。
結婚前に夫が父から借りたお金の返済について今回の調停に盛り込むと離婚の成立が長引くと思い、調停では扱うことはやめ、調停調書に「今後、借金返済については協議で話し合う」と入れ込んだ。
夫との合意
養育費も借金も支払われない
離婚成立から半年後、養育費が支払われなくなった。弁護士に相談して、元夫の会社から支払われる給与の差し押さえをしようとしたけれど、元夫は退職金をもらい、すでに退職。転居もしていて、どこにいるかも分からない。結局、弁護士費用だけがかかり、養育費が支払われることはなかった。父が貸したお金も、そのままになってしまった。
ここから先は
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?