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会長インタビュー(第2回)

この記事は2022年6月29日に公開した会長インタビュー(第2回)の続きとなります。
前回の記事はこちらから


― グループ代表時代を改めて振り返っていただけますか?

2016年6月の代表就任当初はグループ内の立て直し(赤字からの脱却)に注力しましたが、しいていえば、自分の経営哲学の柱である〝情報のオープン化〞と〝コンプライアンス重視〞、そして〝弛まぬ変革の推進〞、この3つは怠らなかった、と自負しています。

経営陣が考えていることを、創業メンバーでもある井芹(昌信)さん、土田(米一)さんを含めた主要各社の社長が集まる月2回の事業戦略会議でオープンにして共有しました。特にリスクや失敗についても共有するよう努め、〝タブーはなくしたい〞と思いました。

例えば、グループ各社の役員の退任慰労金がそのひとつです。不透明なところがあった慰労金の扱いを明確に制度化し、全役員に説明しました。収入に影響する制度が不透明では、モチベーションにも多少影響しますよね。最終的にはRS(譲渡制限付き株式報酬)という形に昇華させ、株価連動のインセンティブプランとしました。今の各社およびグループ連結上の利益は、それらの費用を計上したうえでの金額であり、それ以前とは異なります。私としては、ここは評価してほしいと思っているところです。

また、就任して最初に取り組んだインプレスおよび山と溪谷社の社長選びを皮切りに、子会社各社の社長交代および若返りを順次進めました(*)。私の社長在任期間中に、子会社11社中9社で社長が交代しています。

* 社長を務めていた関本彰大氏の退任に伴い、インプレスは小川亨社長、山と溪谷社は川崎深雪社長が就任した。


― コンプライアンスへの取り組みにおいてもリーダーシップを発揮されていました。

セクハラ・パワハラへの対応は、グループ統一の見解を色濃く打ち出しました。各社それぞれ文化も事情も異なるとはいえ、上場企業グループとしていかなるハラスメントもなくす不退転の決意で臨みました。出版社やマスコミは、〝習うより慣れろ〞〝俺の背中を見て育て(覚えろ)〞といった古い気質が色濃く、長時間労働や指導という名の叱責が正直残っていたと思います。コンプライアンス違反を通報する特別ホットラインを通じて、私が直接、相談に応じました。ずいぶん多くのグループ社員の方々と近所のカフェなどで面談しましたね。こうしたガバナンス問題については、ホールディングスとして強い指導力を発揮するよう努めました。

社長として最終年度の期末には〝コロナ禍〞にも見舞われました。初めて経験する緊急事態宣言や学校休校の決定はインパクトが大きく、グループの〝原則リモート勤務(出社するときは許可が必要)〞に踏み切るきっかけになりました。

当初は「資料を持ち出すのはセキュリティ上問題ではないか?」「自宅の環境が整わない」「出版物が出せなくなる」などの批判があったようですね。しかし、管理部門ではすぐに「電子契約書システムを入れたい」「社内伝票の電子押印システムを入れたい」「会議室にリモート会議用の設備を常設したい」など、リモートに対応するための諸策をどんどん提案してくれました。

結果として、私の社長在任中に連結業績の大幅な改善が実現しましたが、私は業績改善につながる具体的な仕事はしていません。関本(彰大)前社長は、M&Aなどによる外部成長をいったんあきらめ、内部成長(グループ内事業の立て直し)に注力しました。私はその延長線上で、多くの方々にサポートしていただきながら、各社の自主性を重んじた結果、業績が回復したのだろうと思っています。


―ここで改めて、代表就任に至るまでの経緯を教えていただけますか?

塚本さんが株式会社アスキーの副社長だった頃、私は株式会社エフエム東京の報道部に所属しており、全国ネット放送の情報番組に塚本さんがゲスト出演していた関係で、アスキー本社を訪問するようになりました。

その縁で田村(明史)さん(現・クリエイターズギルド取締役相談役)を紹介され、エフエム東京のニュースや天気情報をインターネット経由で流す実験を一緒に始めました。ビジネス化はできませんでしたが、当時からインプレスの先進性に触れていたことになります。

その後、田村さんが設立した事業開発室のメンバーとしてインプレスに入社して、総務人事部長なども経験したのち、2005年5月に退職、前職のエフエム東京に管理系の執行役員として復帰しました。

その後、2013年6月のインプレスホールディングス非常勤取締役就任を経て、2015年7月から取締役CAO(最高総務責任者)としてグループに復帰しました。〝グループ内公募制度〞がまだ残っていたのは驚き、かつ嬉しかったですね。私が人事部長時代に作った制度だったからです(笑)。

代表時代は現場の雰囲気を肌で感じるために、グループ内のイベントにも積極的に参加していた。


先進的なテクノロジーを研究すべく、米Amazonが展開する無人小売店などの視察にも足を運んだ。


次回に続く


プロフィール

唐島夏生[からしまなつお]
株式会社インプレスホールディングス 取締役会長
1959 年生まれ。慶應義塾大学卒業後、株式会社エフエム東京を経て、2000 年に株式会社インプレス入社。グループ管理本部本部長兼人事部部長などを務める。2005年5月に退職してエフエム東京に復帰後、2013年6月に株式会社インプレスホールディングスの非常勤取締役に就任し、2016年6月にインプレスホールディングス代表取締役社長に就任。2020年6月インプレスホールディングス取締役会長に昇任し、現在、エフエム東京代表取締役会長、株式会社エフエム大阪取締役相談役、東京メトロポリタンテレビジョン株式会社取締役を兼任。


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