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会長インタビュー(第1回)

2016年から2020年までインプレスホールディングスの代表取締役社長を務めた唐島夏生会長のインタビュー内容を3回に渡り、お届けします。


チャレンジする風土で未来の出版を志す

2016年からグループの代表として経営改善に取り組み、その後のV字回復を成し遂げた唐島会長。現在は後任の松本大輔社長を支えながら、インプレスグループの新しい挑戦を見守っている。


― 30周年を迎えるグループの現状についてお聞かせください。

2020年度の業績は、売上高が140億円を超え、営業利益率は6%近い8億3600万円、経常利益は9億5300万円、当期純利益は6億7700万円でした。これはコロナ禍の巣ごもり需要もあり、「少々出来すぎ」だったと思いますが、目標としていた150億円に向かって事業会社各社の社長が本当によくやってくれた、と感謝しています。

2016年に私がインプレスホールディングスの代表取締役社長に就任した際、しばらく途絶えていたグループ社長会を復活させ、その最初の会合で「連結売上高150億円、営業利益率5%として約5億円の営業利益を目指したい」と申し上げました。既存の出版事業を前期比100%で維持した上で、それ以外の事業を毎年105%成長させると3年目(2019年度)で120億円、5年目(2021年度)で130億円まで売上は伸びるという想定で、あと20億円はM&Aを考えていました。

2016年9月に天夢人を子会社化、2017年4月には日販グループからクリエイターズギルドの株式を譲り受けましたが、2020年度はこの2社の合計売上高7億円強を含めた連結全体で140億円ですから、読みとしては悪くなかったと思います。


― コロナ禍での好業績にはどのような背景があったのでしょうか?

巣ごもり需要に加え、読者との結び付きが深い専門出版社だったことが、好業績につながったのではないでしょうか。創業者の塚本(慶一郎)さんがグループ黎明期から推進していたデジタルシフトも奏功しました。それは、紙の出版とそのほかの事業の売上構成比が、ほぼ50対50になっていることにも表れています。

グループでは、2021年からオフィスをコミュニケーションの場と位置付け、大きな働き方・職場改革を進めています。インプレスグループは紙の本にCD-ROMを付ける、ニュースをメールマガジンで配信するなど、出版を常に再定義し続けてきました。既成の概念にとらわれず、新しいことにチャレンジするという風土が他社よりも旺盛ですから、オフィスを再定義するチャレンジにも臆することなく邁進できるのです。

各社の対応を見ていると、編集者はリモートに向いている職種だと感じます。特に外部の人とのやりとりが多い人は、オフィスにとらわれない働き方に対応しやすいのではないでしょうか。もっとも、皆さんそれぞれ、私の知らないご苦労をしてくださっているのだろうと思いますが……。そういえば、塚本さんは「管理部門は全員で沖縄に移転したらどうだ」と突然言い出し、皆が困惑したこともありました。もう20年ほど前の話になります。

とはいえ、創業から30年が経過し、デジタル分野における先進性やチャレンジ精神が薄れていると感じる人もいるようです。Web上でのサービス展開も、広告モデル以上のビジネスモデルを確立しきれていません。IP(知的財産)のマルチ展開といった取り組みもまだまだこれからです。

面白いことを創造し、知恵と感動を何らかの形で共有するという意味で、出版という業態は今後も残り続けていくと思いますが、時代の変化や技術の発展に合わせて、我々も出版の工程を変えていかなければいけません。

議長として株主総会に出席する唐島社長(2019年6月当時)。


次回に続く


プロフィール

唐島夏生[からしまなつお]
株式会社インプレスホールディングス 取締役会長
1959 年生まれ。慶應義塾大学卒業後、株式会社エフエム東京を経て、2000 年に株式会社インプレス入社。グループ管理本部本部長兼人事部部長などを務める。2005年5月に退職してエフエム東京に復帰後、2013年6月に株式会社インプレスホールディングスの非常勤取締役に就任し、2016年6月にインプレスホールディングス代表取締役社長に就任。2020年6月インプレスホールディングス取締役会長に昇任し、現在、エフエム東京代表取締役会長、株式会社エフエム大阪取締役相談役、東京メトロポリタンテレビジョン株式会社取締役を兼任。


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