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散文

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#小説

七色の歯がこぼれ落ちた

七色の歯がこぼれ落ちた

 にゃあ、とドアの外で猫が鳴いて、ドアを開けると向かいの戸建ての敷地からこちらのアパートの方へ降りようとしている野良猫がいて、その降りてきた猫と目が合った。
「にゃあ、こんにちは」とあなたが伝えると、その猫は少し考えるようにこちらをしばらく見つめてから、ゆっくりと門の下の隙間を匍匐前進みたいに地面にべたっとしなやかに屈んでくぐろうとしている。
 最後に丸い尻とがに股をした後ろ足をこちらに披露して、

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海の子

海の子

窓の外からホトトギスの鳴き声が聞こえてきて、少しずつ浅い眠りから覚醒する。ホトトギスは春に鳴く鳥だと思っていたのだが、このあたりでは一年中鳴いているのでまるで季節感がない。ただ、朝になって明るくなると鳴くことが多いので、まあ、気分は爽快とまではいかなくても、それなりに気持ちがいいものだ。

 昨夜は布団を敷くのが面倒で、毛布をかけてソファで横になっていたらどうやら眠ってしまったらしい。いつものこ

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「わたしは嬉しい時も、悲しい時もカレーを食べたくなる」

「わたしは嬉しい時も、悲しい時もカレーを食べたくなる」



ある夜、旅先で、九十四歳になる田舎のばあちゃんが亡くなったと連絡がくる。年の瀬の出来事だった。小学生のころ、ばあちゃんちの近くの田んぼで見つけた夏の蛍、毎朝、唱えた日蓮宗のお経。じいちゃんの亡くなった日のこと。たくさんのことが笑顔で横たわるばあちゃんの姿から走馬灯のように蘇る。

 納骨の儀で墓地へ続く舗装されていない小道を歩くたびに、パンプスのヒールが土に埋もれてしまう。その道を、追い

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