★死した君と。生きる君と。

「今日も眠れないの?」
「うん」
「また、私のことを考えているの?」
「うん」
「そっか」
「ごめんね…」
「もう何度も聞いたよ」
「うん、でも、ごめんね」
「私思うの。どの道結果は変わらなかったって」
「そんなことない、自分がもっと――だったら、そしたら!」
「うん。いつもありがとう。でも、変わらないよ。変わらなくていいの」
「なんで、、」
「私はこれでいいの」
「…自分は嫌だ」
「うん、そうだよね。ごめんね」
「謝らないで…君は悪くない」
「そう、どっちも悪くない。ねえ、この会話もう何度もしたよ」
「うん…」
「ありがとう、優しいね君は。じゃあもう寝よう?お休みなさい」
「……」

「また眠れないの?」
「うん」
「そっか。また私を思い出してるのね」
「うん」
「私ね、もう少しだけ君といたかったなー」
「そうだよね、ごめんね、ごめんね」
「もう、謝りすぎだよ。…これでよかったのかなって、たまに考えるんだ」
「うん」
「もっと生きたかったと言えば噓になるし、でも、本当にもなる。自分でもよくわからないや」
「うん」
「だって、もういないから」
「…っ…うん」
「あーまた泣いて。鼻水垂れてるよ。泣いてばかりいたら、どんどん寝れないよ?」
「ご、めっ、ん…」
「ありがとう、優しいね君は。今度は君から話しかけてね。じゃあもう寝よう?お休み」

「あ、あの、…っ、どこにいったの?本当に死後の世界ってあるの?……どうして、い、いなくなったの…」
「また眠れないの?――って、質問攻めすぎるよ(笑)」
「ご、ごめん」
「死後の世界はあると思うよ。でも、一人ひとり違って、私だけの死後の世界がある気がする」
「そうなんだ」
「そして、私は今は君のところにいるよ」
「うん」
「最後の質問の答え知りたいの?」
「…知りたいけど怖い」
「じゃあやめとこうよ」
「でも…」
「本当の理由なんて誰にもわからないよ。…ありがとう、優しいんだよね君は。今日はもう特に遅いし、そろそろ寝よう?お休みなさい」

「――苦しい、、ほ、本当は生きたかったよ…っ。もっと、美味しいの食べたいし、色んな所に、い、行きたかった。…色んなことしたかったよ」
「うん、ごめんね」
「君のせいじゃないのに、うぅ、泣いて、ごめんね」
「大丈夫だよ」
「起こしちゃった、ね」
「君のこと考えてたから大丈夫だよ」
「そっか、うん、考えてくれありがとう」
「うん…っ」
「一緒に泣いてくれてありがとう」
「そりゃ泣くよ」
「忘れないでね、私のこと…」
「忘れないよ」
「でも、いつかは忘れて…今を生きて…」
「忘れないよ」
「嘘。いつかは忘れる日が増えてくる。…寂しいな」
「忘れない」
「忘れなきゃ許さないから。でも、寂しい。どうして私が…」
「泣かないで、自分を責めないで…」
「責めるよ。責めるし、後悔するよ。もっと、色んなことしたかった。もっと……!……でも、もう変えられない」
「…変えたかった」
「あー寂しいな…。寂しい…涙が止まらない。君はいつもこんなに痛い思いしていたんだね」
「……」
「うぅ。寂しい。みんなにごめんねって言いたい。誰のせいでもないの。誰のせいでも…。私が…」
「君のせいじゃない!」
「……ありがとう。……優しいね君は。今日はもうやめよう。ネガティブになってごめんね。じゃあ、お休み」
「……」

「起きてる?」
「うん」
「私のこと考えてくれてる?」
「もちろん」
「複雑だな…。本当は君にぐっすり寝てほしいのに」
「謝ることないよ」
「君は生きていて、私はもう止まったままなんだって。君と会話する度に感じるの。」
「……」
「なんか言ってよ」
「…ここで会えるよ」
「馬鹿。そんなの嬉しくない。私のこと早く忘れなさい」
「出来ないよ…」
「ったく、また泣いてるし…。これからの君が心配だよ」
「ごめん…」
「なんだか、私が悪いみたいじゃない」
「……」
「……生きて。君は生きてね」
「……」
「私のは、ある意味寿命よ。そう、あの瞬間が私にとっての寿命だったの」
「そんなわけない」
「ううん。寿命よ。そう思おうよ」
「違うよ…っ」
「ありがとう。優しいんだから君は。……もう寝よう。じゃあね、お休み」

「今日はすごい泣いてるね」
「…だって、だって、君ともっといたかったから」
「うん」
「君を助けたかったら!」
「うん」
「ごめんねっ。何も出来なくてっ。何にも出来なくて…!」
「うん」
「会いたいよ!会いたい!この声が届くなら会いたい!」
「うん」
「会いたい!会いたい、う、う、会いたい」
「うん」
「どこにいったの!会いたいよ!また名前を呼んでよ!」
「……」
「会いたいよ…、でも、…もう会えないんだ…」
「……」
「…お休み」

「これ美味しいね」
「うん。美味しいね」

「歩くの早いからっ」
「だって遅いんだもん」

「今年桜が咲いたね」
「綺麗だね。また来年も一緒に見に来ようね」

「――」
「――――」

「――――」
「――――――」

「また、眠れないの?」
「うん…」
「あのさ、――一人で私を思い出して会話するのはいいけど、」

「そろそろ、楽しかったこととか、違う私を思い出してよ」
 

 ――うん。きっと、君はそう言うだろう。ごめんね。優しいんだよね君は。ごめんね。ごめん。もう寝るよ。大丈夫、ちゃんと寝るよ。ありがとう。ありがとう……。

「お休みなさい」


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