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知っていると得する、課題解決をやろうとする人の盲点

こんにちは。小泉です。

ソリューション企業を経営していると、「提案してください」といわれることがよくあります。ありがたいことなのですが、ここでいう「提案」にはいくつかのパターンがあります。

1)提案してほしい内容が固まっていて、その内容がいくらでできるか、他の可能性があるのかなど具体的に提案してほしい
2)提案してほしい内容の概要は決まっているけど、具体的になっていないので、具体的にできることを含めて提案してほしい
3)提案してほしい内容がほとんどわからず、とりあえずいくらでなにができるのか提案してほしい

1のパターンはわかりやすいでしょう。2については、実はさらに細分化されるケースがあります。言葉通り具体的に決まっていないというケースもあるのですが、例えば、解決してほしいことは明確なのだけど、解決する手段が多様にあるので、どの方式がベターなのか、を含めて検討したいという場合です。

具体的に決まっていないなら、決めればいいのにと思うものですが、実際は情報収集がうまくいかない、現状が整理できないという場合もよくあります。

なので、この場合、コンサルタントを呼ぶことになります。コンサルタントの中は、ビジネスプロセスを整理したり、社内のステークフォルダーのやりたいことをまとめ上げる能力に長けている人がいます。また、情報をたくさん持っている人もいるので、そういう人に依頼をすれば、社内のリソースに依存せず、自社のやりたいことを具体化することが可能になります。

しかし、ここには大きな盲点があります。

例えば情報収集のためにコンサルタントを雇ったとして、その人が果たして世界中の情報をもっているといえるのか。現状をうまくまとめるのが得意なコンサルタントが、果たして細かなイレギュラー業務まできちんと取り込んでくれるのかと。

外注する以上、納期があり、かけられる人数が決まってくるので、発注者は、「実は、網羅的ではないのではないか、ごまかされているかもしれない」という恐怖感を覚えることになるでしょう。

しかも、大雑把に外注するくらいだから、アウトプットを精査することなどできません。

3つ目は最悪です。とりあえず話を聞きたいと付き合わされるベンダーは、提案先の企業が大企業で、どうしても付き合いたいと思うレベルであれば、一所懸命提案してくれるでしょう。でも、偶然集められた企業ができることから自社がやるべきことを決めるなどというボトムアップの議論は、ナンセンスだし、絶対にやめるべきです。網羅性のない情報収集にはなるのかもしれないですが、この手のクライアントは、上司に自分の作戦を組み立てるのに当人が知りたいだけ、というケースもよく見かけます。こういうクライアントと合うと、セミナーや本を紹介してあげて、帰りたいと思ったことが何度もあります。

事業会社の課題解決、その盲点とは

では、「2)提案してほしい内容の概要は決まっているけど、具体的になっていないので、具体的にできることを含めて提案してほしい」といった状態のときに、自社の課題をどのように解決していくべきなのでしょうか。

実は、多くの人が間違えるのが、「解決する」ということに目を向けすぎることなのです。

「解決」に目を向けると、最終的なアウトプットは「How(どうやるか?)」となります。つまり、何かの課題があったとして、それを解決するために、これを〇〇のSaaSをつかってやろう、××のソリューションを入れよう、となるため、いろんなベンダーの提案を聞きたくなってしまうのです。

3は問題外として、2の状況にならないために、本来必要なことは、「課題を見極める」ことです。コンサルタントをしていると、「課題なんて明らかだよ」という人が後を絶たないわけですが、「課題が明らかなら、もう解決策なんて見えてるでしょ」と言いたくなります。

つまり、課題が明らかだと思い込んでしまっているだけなのです。

なぜ、こういうことが起きるのでしょうか。

マネージメントは、状況を俯瞰してみています。一方で、課題抽出のプロセスでは、現場の細分化された課題を並べて整理しがちです。

そうすると、現場目線で見ると正しい課題のとらえ方が、マネージメント目線で見ると、違和感を感じることがあるのです。必要条件であっても十分条件ではない場合に感じる違和感ともいえます。

例えば、「会社は利益を上げたい」「現場はコストを下げなければならない」というと、一見すると必要十分条件に見えます。しかし、現場がコストを下げるために、投資を控えた結果、景気が上昇傾向の時に新たな売り上げを生むことができず、結果利益も向上しないということになります。

バブル崩壊後、この現象はよく起きていました。それまでは、逆に「売り上げを重視しろ」と大号令がかかっていたのです。多くの業種で景気が上り調子だったので、拡大することが正義だったとも言えます。コストはそれなりに割高になっていたとしても、拡大できれば賄えていました。

その後、バブルが崩壊し、この習慣を変えることができなかった企業では、どんどん業績が悪くなります。なぜなら、売り上げ至上主義では、利益度外視にしてでも売り上げを上げようという力が働き、その結果景気自体は逆行しているので、どんどん利益が下がるということになるのです。最悪本業で赤字になる企業や倒産する企業も出てきていました。

正直、こんな単純なこと、ちょっと考えればわかると思うかもしれませんが、不思議なもので、方針を変えられず、業績を悪化させ、失脚したマネージメントがたくさんいたのを覚えています。

この例を見て、課題を正しくとらえるのがいかに難しいかがわかったのではないでしょうか。失脚したマネージャーも、外部環境がバブルの状態であれば、その論理は必要十分条件を満たしていたし、実際業績も上り調子だったのです。

「課題」なことを並べて、一つずつつぶしていくというやり方は、課題自体を「正しく」とらえている場合に限り有効な手段となります。

つまり、提案してほしい内容は決まっている(大きな課題が決まっている)時に、具体的なアプローチが決まらないからと、「How(どうやるか?)」を提案してもらうことは、一見よさそうに見えて、実は危険だということになります。

そのHowによって、解決できる課題が、事業全体として必要十分かを正確に評価することが重要なのです。

特に、現在のように不確実性の高い時代においては、課題を正しくとらえることがかなり困難です。より細かなレベルまで課題なのかを見出し、どうやって解決するのか(How)までを明確にしてから提案をうけることが重要なのです。

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提案書に何を書いたら良いかわからず困っている人のために、提案書を書くための思考法を解説しています。

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