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【イベントレポート】おとなの寺子屋 presents 春の句会

先日行った、「おとなの寺子屋 presents 春の句会」の模様を、参加者のひとりがレポートにしてくれました!!

句会って何? どういうことするの?

素人でどのくらい詠めるものなの?

それって楽しいの?

といったところがよくわかる、貴重な「句会レポート」です。

動画はこちらから。



始めに

こんにちは!皆さんは、今年のゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか?
外出自粛のこのご時世、おうち時間をどうやって充実させるかなかなか悩みどころですよね。
部屋の掃除もひと通り終わったし、Netfl●xの観たい映画はだいたい観尽くしたし、勉強するにもなんとなく身が入らない…
そんなあなたは、俳句にふれて風流な気分を味わってみるのはいかがでしょうか。
ということで、4/29に開催されたオンライン句会「連休は俳句に触れてひと休み」の様子をお届けしたいと思います!

そもそも句会って?


「5・7・5」の17音で構成される俳句。句会とは、この俳句を作って持ち寄り、作者名を伏せた状態であれこれ批評し合う会です。
…というとなんだかハードルが高そう。しかし、実際にやってみるとまったく堅苦しい会ではありません。初めましての方ともゲーム感覚で和気あいあいと盛り上がれる、非常に楽しいイベントなのです。

オンライン句会、開幕!

それでは早速、当日の雰囲気をリポートしていきます!

今回の句会は、五百田達成さんの文章ワークショップ「おとなの寺子屋〜作文教室〜」の公開イベントとして開催されました。
集まった8人は、俳句を作るのは小学生以来という方や、たまにプレ●ト観るよーという方、趣味の句会には参加したことがある方…等々。
お気づきのとおり、俳句について専門的な勉強をした方はいない、ほぼ初心者の集まりです。

緊張でそわそわしつつ、Zoomの会議システムにアクセス!今回は、時節柄「三密」を避けるため、オンラインで句会をやってみようという試みです。
主催の五百田さんのご挨拶から、なごやかな雰囲気で句会がスタートしました。

今回提出されたのは、8人×3句の計24句。誰がどの句を作ったのか、この時点ではわかりません。

寺子屋春の句会選句用紙 200429

まず、参加者が各自の「選句」を発表していきます。
「選句」とは、提出された句の中から「1番ベストの句(特選)」、「好きな句(並選)」、「逆に文句をつけてやりたい句(逆選)」をそれぞれ選ぶこと。
今回は、特選1句、並選2句、逆選1句で選句しました。(このイベントレポートをお読みの方も、ぜひ「自分だったらこれかなー」という句を選んでみてください!)

自分の句が選ばれるとついニヤニヤしてしまいそうになりますが、ぐっと我慢。まだここでは作者を明かしてはいけません。
また「他の人が作った句を逆選にしにくい…」という声もありましたが、逆選とは決して不名誉な称号ではありません。逆選に選ばれるということは、何かしら心にひっかかったということでもあり、何も触れられないよりは良し!とされています。

各自の選句を発表した後、票が集まった句を中心に、「この句のここが好き!」「この表現はどうやって思いついたんだろう」「これはどういう情景を詠んだ句?」等と議論していきます。
この議論の間も、作者名は伏せられたまま。作者は自分の句が取り上げられていても、人狼ゲームさながらに何食わぬ顔で議論に参加します。最後に「私が作りました」と明かし、ウイニングランのごとく句に込めた思いを語ります。

栄えある第一位は…?

今回の句会で最も票を獲得したのは、19番の〈肌に落つ平行四辺形の春〉。
8人中、6人が特選or並選に選んでいます。自分の作った句は選から外すルールになっているので、この時点で作者がほとんど絞られてしまいました笑。

「平行四辺形の春というフレーズに射抜かれた」
「『光』や『窓』など、状況を説明する単語を使っていないのに情景が伝わる。天才か?」
「句に登場する『肌』は、小さい子供の肌とも恋人の肌ともとれる。それぞれ句の雰囲気が変わって面白い」
「平行四辺形という単語が、7・5の句にまたがっているのがかっこいい!」
と絶賛の嵐!他の人の解釈や意見を聞くと、さらにその句が良い句に思えてくるから不思議です。

「平行四辺形」というお堅い教科書用語と、「肌」というちょっと生っぽい単語の意外な取り合わせにより、とても魅力的な句になっています。五百田さんによれば、このように一見関連がなさそうな二つの言葉の取り合わせにより効果を生む表現手法を「二物衝突(二物衝撃)」というそう。勉強になります。

作者の方曰く、「在宅勤務中のちょっと眠くなってくる午後、春の日差しが窓を通して部屋の中に差し込んできている様子を詠みました。説明が少なく情景が伝わるか不安でしたが、意外とみんなが読み取ってくれて嬉しい!」とのこと。お見事です!

わかりやすさをとるか、自分の表現にこだわるか

続いて、特選1票、並選2票と同数を獲得した2句を見ていきましょう。4番〈筍の値をみて戻す春の夕〉と、7番〈献立にアスパラガスの銃弾を〉です。

まず4番の句には、こんなコメントが寄せられました。
「手元の筍の値札から、遠景の夕暮れや買い物の情景にまでイメージが広がった」
「あるあるーという親近感!」
「そのまんまのようで、言葉が研ぎ澄まされている。『筍の値段が高い』とは書いていなかったり、『みて』をあえてひらがなに開いていたり」
「解釈の余地がなく、わかりやすすぎ?」
「切なくてさみしい気持ちになってしまった…」

この句を作ったのは私でした!わーいありがとうございます!
外出自粛の折、せめて筍で春を味わおうと思ったらお値段が高くて断念…という実体験を詠みました。凝った比喩表現はないのでスルーされちゃうかな?と思っていましたが、意外と支持してもらえたので嬉しかったです。

一方、7番の句にはこんな意見が挙がりました。
「自炊に飽きてきた現状にメリハリをつけるべく、少しお高めのアスパラガスを買ってやったぞ!というすがすがしさを感じる」
「春のおだやかな句が多い中、銃弾という力強い単語が目立って良い!」
「献立という家庭らしい単語と、銃弾という不穏な単語の取り合わせが印象的(これも二物衝突ですね)」
「銃弾という言葉のインパクト勝負のようで、でも潔くて好き。現代短歌のよう」
「なんだかアスパラガスも不穏な言葉に見えてくる笑」

この句の作者は主催の五百田さんでした。おめでとうございます!
アスパラって銃弾に似てるなぁという着想から、銃弾という力強いものでこのコロナ鬱の現状を打破したい!という思いを込めたそう。
「アスパラガスが銃弾に見えるという発見をどうしても言いたかった。これを言いたい!とか、一本何かしらの軸がないと俳句を作るのは難しい」というコメントには、なるほどと思いました。

この2句はどちらも野菜をテーマにしていますが、比べてみると受ける印象がだいぶ違いますね。前者はストレートでわかりやすく、後者は比喩表現を使った詩的な雰囲気です。
あまりにそのまんますぎるとあじけなくて野暮、かといって比喩をひねりすぎると伝わらない…わかりやすさをとるか、自分の表現にこだわるかというジレンマは、俳句づくりの永遠のテーマかと思います。

今回の逆選王!

もう1句、最も逆選を集めた句を見てみましょう。繰り返しになりますが、逆選に選ばれるのは決して不名誉なことではなく、ツッコミを入れたくなるくらいみんなが気になった句ということでもあります。
今回の逆選王は、3票の逆選を集めた8番〈まぁ、いいね酒なし花見昼休み〉の句でした。

「読点を使ったのは何か意図があるのかな」
「昼休みということは会社にいる?普段だったら会社でお酒飲んでるの?」
「いいねとあるから、SNS上の桜の写真を見ているのかも?」
「会社の昼休み、お散歩がてらお花見している光景が浮かんだ」
「7・5の句の母音がそろっていてラップっぽい!」
など、さまざまな解釈が出てきました。みんなでワイワイ謎解きをするのも、句会の醍醐味の一つです。

作者の方は、外出自粛になる前、会社の昼休みに同僚とお花見に行ったのが楽しかったなぁと思い返して詠んだそう。「楽しかったんだけど、花見ならビール飲みたい!という気持ちや、せっかくなら昼休みじゃなく普通にお花見したい!という思いもあり、そのもやもや感を『まぁ、いいね』に込めた」とのことでした。
作者コメントを聞いて、「みんなでまぁ、いっかと言い合っている様子が浮かんでほっこりする」という意見も!句の背景や込められた思いがわかると、また句の味わいが変わりますね。

ひとくち俳句講座


句会の中で、「初心者なりにより良い俳句を作るにはどうしたら?」という話題がいくつか挙がっていたのでご紹介します!
繰り返しになりますが、本句会の参加者に俳句のプロはいません。ですがこれらのポイントは、俳句に限らず、文章で自己表現するうえではどれも共通してくるものかと思います。

①二物衝突を意識してみる
二物衝突(二物衝撃)とは、一見関連がなさそうな二つの言葉を組み合わせることで効果を生む表現手法のこと。意外な単語の取り合わせによって、読み手の心を動かし、新たな発見や感動を与えることができます。
今回の句会で人気だった19番の句が典型的です。「平行四辺形」というお堅い教科書用語と、「春」という暖かな季節の意外な取り合わせにより、とても魅力的な句になっている!と評判でした。
俳句以外の文章でも、豊かな比喩表現や言い回しにハッとさせられることがありますよね。

②自分の表現か、わかりやすさか
自分の表現したいことに拘泥しすぎると、読み手側に作者の意図が伝わらず、ともすれば独りよがりになってしまいます。一方、誰にもわかりやすく共感しやすいものをと意識しすぎると、出来上がった作品がありきたりなものになってしまう恐れがあります。
自分の表現したいことにこだわるか、誰にも伝わるわかりやすさをとるかというジレンマも、俳句作りの永遠のテーマではないでしょうか。

③書きたい要素をしぼりこむ
1つの俳句に多くの要素を詰め込もうとしても、17音の中ではすべてを伝えきれません。結果として、断片的な情報で読み手を混乱させてしまったり、一番伝えたいことがぼやけてしまったりすることも。
「自分が何に感動したのか」「何を一番伝えたいのか」を考えて要素を絞りこむと、俳句の焦点が定まって書きやすくなります。

おわりに

予定していた時間を少々オーバーしつつ、オンライン句会は盛況のうちに幕を閉じました。まだまだここに書ききれないやりとりやパワーワードもあったのですが、このレポートで雰囲気が少しでも伝わっていれば幸いです。
また、ZoomやYouTubeのチャットで参加してくださった方もありがとうございました!観ている方の反応がリアルタイムでわかるのも、オンラインでの開催ならではですね。

このような形で、句会などの言葉遊びに親しんでみたい方、文章力や言葉のセンスを楽しみながらアップさせたい!という方は、ぜひ「おとなの寺子屋〜作文教室〜」のページをのぞいてみてください!

https://note.com/iotatatsunari/n/n86da93ae9785

文責M



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