見出し画像

『かがみの孤城』と続・癇癪

 けたたましく泣いていたかと思うと、ひょんな事がきっかけでけろっと機嫌を治す息子がうらやましい。

 小雨が降っていた。自転車を漕ぐのにレインコートが必要な程度の雨量だったが、横着してコートだけで済ませたのを後悔する。暖かかった昨日に比べて骨の髄まで染みいるような寒さだ。

 雨模様の中息子を外遊びさせる訳にもいかず、通院の用事以外は自宅で過ごした。
 レゴやトランプ、数字のおもちゃにプラレールがあちらこちらに散らばる。一つ片付けさせても、次に出すおもちゃが複数種類あるのでいたちごっこだ。
 ご機嫌で遊び、用事をこなした息子。今日は就寝までスムーズかと思いきや、お風呂を終えた後「お風呂の蓋を自分が思ったように閉められなかったため」に大癇癪を起こした。
 昨日の今日での癇癪対応だ、げんなりはしつつも自身の感情の爆発は無い。
 結局、日付が変わるぎりぎりの頃に息子は眠った。
 翌朝も、起きた瞬間に癇癪を起こされ、気持ちが重苦しくなってしまったので日記を書いている。
 癇癪が起きる頻度が明らかに増えている。何が原因なのかなぁ……。

 休日は夫に息子を任せ、学生時代の友人と辻村深月さん原作の映画『かがみの孤城』を見に行ってきた。
 友人はいわゆる人並みに読書をする人なので、私の未読本の量にドン引きするタイプなのだけれど、『かがみの孤城』は読了しているとの事。共に楽しみにしてた。(いわゆるオタクタイプの子ではないのだ)

 私も彼女も不登校だった過去を持つ。その痛みを基に仲良くなり、時を重ねてなお友情が続いている事に感謝している。
 『かがみの孤城』は学校にいけない子達が主人公の物語だ。私は出版からだいぶたった後に原作を読んだため、もしも主人公たちと同じ年代の頃この本に出合えていたら、間違いなく勇気を貰えただろうなと勿体なく思った。

 私は、辻村深月さんの作品によく出てくる、「頭が良い故に馬鹿な子を見下す女の人」があまり好きではない。
 というのも、私の従妹がまさにそういうタイプの人間で、私はさぞかし馬鹿にみられていただろうなという自覚があるから……という、ちっぽけな私怨がきっかけだ。
 その為、一時期は辻村作品を敬遠していたのだが、読めば読む程彼女の世界は広大で、そんな女性も彼女が描写する人間のごく一部の事だと気づけた今は好きな作家の一人となった。『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』は衝撃だったし、最近なら『ツナグ』シリーズを読破した。

 そんな偉大な人の原作であるから、シナリオに間違いはあるはずが無かった。しかし映画というものはどうしても限られた時間内で表現しつくさなければならないから、言葉不足や説明不足のように思える箇所はあったかもなぁとも思う。
 それでも原作の良さを最大限に引き出した作品だと思った。

 こころちゃんのように悩んでいる同年代の子や、現実に負けそうになってしまう子たちが、一人でもこの作品から勇気を貰えると良いなと思う。

 そして、そしてちらりと胸をかすめる思いもある。
 いつの日か息子が、生きることの辛さを知ってしまった日に。
 本でなくとも、好きなものなら何でも良いから、そういったものから力を貰って、日常の息抜きをしてくれたら良い。自分で自分を癒す方法を知って欲しいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?