2000字小説『ごめんね』
「美術の道は諦めなさい。君には向いていないよ」
人生最初の挫折を味わったのは、中学2年の夏だった。美術部の顧問が何か続きを喋っていたが、何を言っているのか解らなかった。言葉から意味が抜け落ちて、ただの音の連なりとして鼓膜を震わせる。
そんな最悪な日でも、どこをどうやって帰ったのか覚えていない割にちゃんと家にはたどり着くし、銀色のポストをチェックするのも忘れない。
ポストの中には——限界まで紙が詰め込まれたのだろう——パンパンに膨らんだ茶封筒があった。差出人の欄には可愛