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11. 直島豊島日記 ⑤ 宮島達男編~直島から千葉、そして六本木

宮島達男は、「生と死」をテーマとし、「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」という3つのコンセプトに基づき、LEDのデジタル数字を使ったインスタレーションや立体作品を中心とするアーティスト。

直島家プロジェクト「角屋」
直島には、ベネッセハウスに一つ、そして家プロジェクト「角屋」に作品がある。
直島の東側・本村地区で空き家となった古い民家を改修し、アーティストが家の空間そのものを作品化する家プロジェクト、その第一号が1998年公開された角屋で、築200年の家の修復・改造は、瀬戸内海の本島・笠島地区の保存事業や現イサムノグチ庭園美術館・イサムノグチの古民家を使ったアトリエの移築を手掛けた建築家山本忠司 。高松牟礼のイサムノグチ庭園美術館は、家プロジェクトの構想が生まれる前段となった、「直島のアートを考える時の一つに基準となった」ともいわれる。
角屋には、宮島達男によるアートが3つ、その中心は「Sea of Time’98」。雨戸が閉められたうす暗い家の中に入ると、母屋の4部屋分の床いっぱい、水の中に設置された赤、緑、黄 3色の125個のLEDデジタルカウンターが、おのおの、9から1までの数字を刻んでいる。
Sea of Timeは、1988年 原美術館で、そして同年、ヴェネチア・ビエンナーレでも発表され、宮島さんが一躍欧米で注目を集めた作品。カウンターの速度は作品の重要なファクターだけれど、3作目となる直島のSea of Time'98では、初めて、125個のLEDのカウンターが数字を刻む速度が、直島に住む5歳から95歳の年齢も性別も様々な人々にゆだねられ、ひとりひとりが、思い思いの速度に設定、作品完成後には、自分のカウンターの場所がわかる証明書が渡された。
LEDは数字を9-1とカウントし、0は表示しない。数字をカウントしているときは「生」、0で暗闇になる時は「死」、LEDは数字のカウント(生と死)を繰り返し、全体で「命」そのものを表現しているという。仏教の「輪廻転生」、生命の永遠性、つまり「死」は終わりではなく、次の「生」への準備期間ひとつひとつのカウントのスピードは、それぞれの「命」の個性。20年以上たった今、亡くなられた方も多いという125人のLEDが、薄暗い、ゆらぐ水の中で赤、緑、黄色に明滅する幻想的光景には、時間を忘れ、いろんなことを考えさせられる。

Sea of Time 「時の海-東北」
そして、このSea of Timeの発展形が、宮島さんの現在進行形のライフワークのひとつ、東日本大震災犠牲者の鎮魂と震災の記録の継承を願って制作されている「時の海ー東北」。震災の被災者や被災地のことを想う一般の参加者がLED数字のカウントダウン速度を決め(タイム設定)、それらのLEDが作品の一部となるもので、最終的にはLED3000個の東北での恒久設置を目指している。2020年夏から森美術館で開催されたSTARS展には、2019年末までに速度設定が完了したすべてのLED 719個が水に沈められ公開されている。
(写真:撮影可だったSTARS展(2020.7.31~ 2021.1.3)の「時の海ー東北」)

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東京都現代美術館の「Keep Changing, Connect with Everything, Conitunu Forever」は、直島のSea of Time'98と同時期に違う手法で作られた。”観客に委ねた”後者に対し、”徹底的に自分でコントロールした作品”であり、「両者が対比的であるけれども、意外にも性格がちょっと違う兄弟という気がする。非常にやんちゃな長男と物静かな長女みたいな感じ」と宮島さんが言っている。

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Death Clock@「宮島達男|クロニクル1995-2020」
直島から帰ってすぐ、ちょうどそのころ開催されていた「宮島達男|クロニクル1995-2020」(2020.9.19~12.13)へ。千葉市美術館のリニューアルオープン&25周年記念、首都圏では12年ぶりとなる大規模個展だった。
その中に、宮島達男の"死の三部作”のひとつ、参加型アートの Deathclock for participationがあった。
コンピューターに、自分の「死ぬ日付」を入力すると、自分とその日までの残り時間のカウントダウンが壁いっぱいに映し出される。メメントモリ。。。
あまり深く考えずに設定してしまった自分の「死」があまりに早くて、笑ってしまう。生き急がなくては。

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Counter Void by 宮島達男
昨年は、宮島さんのパブリックアートであるCounter Voidが久しぶりに点灯された。
全長50m 高さ5mの半透明のガラススクリーンに6個の巨大な数字が9 から1までをカウントする「光の壁」。宮島達男のほかの作品同様、「生と死」をあらわし、「0」は表示されない。
2003年 テレビ朝日が六本木に新社屋を建てたとき、コミッションワークとして、けやき通りに設置され、ずっと昼も夜も点灯し続けていたCounter Voidは、東日本大震災の2日後に、震災における犠牲者への鎮魂と節電のため、テレビ朝日の合意のもと、宮島さんの手によって消灯された。
震災から5年たった2016年より開催された、3月11日からの3日間限定の再点灯「Relight Days」も2018年に終了、2020年7月31日から2021年1月3日まで、不定期に計24日間、2年半ぶりの、夜間のみの再点灯だった。
2020年は、なんだか、宮島達男Yearとなった。

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James Turellとか李禹煥とか地中美術館・・・etc 直島豊島日記、まだ終わっていないけれどここでちょっと一休み、いったん終了。

「生と死」を考えさせられるものばかりだったけど、アートって結局はそういうものなのかもしれない。というかアートだけじゃなく、すべては「生」と「死」なのか。

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