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美術館に行くと、今までと違うものが見えるようになるか? その8

松方コレクション展 2019年7月17日

東京国立西洋美術館は、松方幸次郎の美術コレクションを元に作られました。これまでに散逸したものも、改めて世界各地から集められました。国立西洋美術館としても、かなり力が入った展覧会だと思われます。

松方幸次郎は、明治に2回も総理大臣をつとめた松方正義の三男で、川崎造船所の社長でした。日本人が西洋文化を理解するために、日本に西洋美術の美術館を作りたいという志を持っていました。

3000点とも1万点ともいわれるコレクションは、その後、川崎造船所の経営危機のため散逸したり、ヨーロッパに留め置かれたコレクションがナチスドイツに狙われたり、第二次世界対戦の敗戦国の資産として差し押さえられたりして、幾度となく危機に面してきました。戦後の講和のなかで、このコレクションについて議題となるほどであり、最終的に、このコレクションは日本に返還されました。

その際につけられた条件が2つあって、1つは、このコレクションを収蔵する専用の美術館を作ること(しかもその美術館はフランスの有名な建築家によって設計されること)。もう1つは、フランスにとって最も重要な作品は返還しないこと。

そのようにして国立西洋美術館が設立され(ル・コルビジュエの設計)、ゴッホの「アルルの寝室」など何点かはフランスに留め置かれました。

松方幸次郎の、日本に西洋美術館を作りたいという志は、彼が亡くなった後、紆余曲折を経て実現したのでした。何か、歴史の不思議さを感じてしまいます。

さて、今日の一枚は、フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの寝室」。

松方コレクションの数奇な運命を聞いてしまってから見ると、ゴッホだけでなく関係してきた多くの人たちの特別な思いが込められているような気がしてきます。

絵を見るときに、感性だけで見るのも良いのですが、歴史、経緯、時代などを踏まえて見るのも良いなと感じます。

モネの「睡蓮、柳の反映」も、上半分がボロボロで、残っている部分の保存状態も最悪だったようですが、よくぞ、ここまで修復してくれました。

この絵の修復のドキュメンタリーをNHKスペシャルで見ました。色々な分野の専門家が力を合わせて修復に取り組んで、西洋美術館館長にダメ出しを食らってやり直したりした苦しい経緯を踏まえて見ると、とても美しく、かつ違和感なく修復されていることが、感動的でした。

その他、
クロード・モネ「睡蓮」
(国立西洋美術館にとって最も自慢の品)

オーギュスト・ロダン「地獄の門のマーケット(第三構想)」
(地獄の門の石膏試作。松方の名前が彫りこまれている)

エドガー・ドガ「マネとマネ夫人像」
(ドガが書いた夫人の顔が気に入らなかったモネが、夫人の顔を含む右側を切り取ったと言われている絵)

クロード・モネ「積みわら」
(モネの積みわらの連作は光の移り変わりを描いたとして有名ですが、この積みわらにはモネの家族が描き込まれてます。光の移り変わりではなく、モネの幸せな気持ちを描いた「積みわら」なんじゃないかと感じます。)

国立西洋美術館で、9月23日(月祝)まで。

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