日記でもないもの 4/2 冷凍犬

今朝は雲一つないいい天気だったので、久々に犬の散歩に出かけることにした

風呂場に行って昨日の残り湯に手を突っ込むと、まだ少し緩かったため、冷凍庫から出した冷凍犬を沈めて解凍する

犬が解凍されるのを待つ間に、コーヒーを入れる
朝食は散歩から帰ってからにする

コーヒーを飲んでいると、玄関から「ワフッ」と声が聞こえた

ドアを開けて玄関を見ると、解凍された犬が下駄箱の横からリードを引っ張り出して、しっぽをパタパタさせて待っていた

冷凍犬の毛は水を含まないから、解凍したてでもフサフサだ

「ちょっと待って、コーヒー飲んでから」

そう言ってコーヒーカップを持ち上げると、犬は玄関から僕の方に駆けてきて、僕の周囲を急かすようにくるくると回った

「待って待って、今飲むから」

僕は急いでコーヒーを飲み干して、犬にリードを繋いだ

***

散歩コースの神社に行くと、境内はすでに桜が満開だった

しばらく立ち止まって桜を眺めていると、裏口の方から、これまた散歩中の保育園児たちがやって来た

犬を見つけ弾かれたように駆け寄る園児たちを、引率の先生が慌てて止める

「大丈夫ですよ、噛まないので」

冷凍犬であることを伝えると、先生はホッとした様子で「いじわるしちゃダメだよ」と言い聞かせ、園児たちを自由にした

「ゴールデンですか、何ヶ月?」

「え、何ヶ月だろ……」

犬と戯れる園児たちに注意を払いながら、先生と他愛のない話をした

犬は子供たちに揉みくちゃにされながらも、仔犬らしいガッツで果敢に立ち向かっている

しばらく遊ぶと両者へとへとに疲れて、園児たちは先生に連れられ境内を出ていった

「もう帰る?」

家の方にリードを引くと、犬はグイッとリードを引き返した

まだ散歩したいらしい

僕たちは神社を出て、用水路沿いに農道を歩いた

途中、犬が小汚いテニスボールが落ちてるのを見つけ、咥えて離さなくなってしまった

仕方がないので持ち帰ることにした

***

散歩から帰って、朝食を作る

犬は既に冷凍庫で凍っている

ポタージュが出来てすぐ、「グリンピースを浮かべたいな」と思ったので、犬が凍っているのとは別の段の冷凍室を開けて冷凍のグリンピースを探した

冷凍室の奥に、見慣れない灰色の塊があった

取り出しでみると、それは今日拾った小汚いテニスボールだった

犬が勝手に冷凍庫にしまったらしい

「ふふっ」口から息が漏れた

不衛生極まりないが、ボールをいそいそと冷凍する犬の姿を想像するとなんだかいじらしかった

ジップロックに入れ直して、再び冷凍庫に入れる

時計を見ると、針がちょうど9時半を指している

外はまだいい天気で、テレビを点けると、お天気お姉さんが明後日まで快晴だと言っていた

明日は月曜なので、久々に職場を解凍するのもいいかもしれない

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?