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母の面会に行って、AIに介護されたくなった話

面会日記

私の母は色んな病気を経て現在はもう寝たきりに近く、
意思疎通も難しい状態で、
現在は介護医療院というところでお世話になっています。

介護医療院というのは新しい制度だそうで、
私も初めて聞きました。
病院と介護施設がミックスされたような場所だと思っていただければ。


昨日も面会に行くと、母が気持ちよさそうに眠っていたので、
無理に起こすこともないかと、枕元の椅子に座って
ぼんやり寝顔を眺めておりました。

二人部屋なのでプライベート空間を確保する意味もあり
カーテンで周囲を囲ってあります。

と、お隣の方がナースコールを押したらしく、
係の方が見えました。

そのやりとりを聞く気はなかったのだけど、
カーテン一枚隔てただけなので
どうしても聞こえてきてしまいまして…

何というか、とてもぞんざいだなあと思ってしまった。

水を飲みたいと訴える人に、自分で飲みなさい、ほら反対向いてと
かなり厳しい口調で言う。

患者さんは向けない、飲めないと訴える。

できることは自分でしないとあかん、
と叱責に近いやりとりが続くのですね。

それはその通りなんだと思います。
何も間違っていない。

本人が自分でできることを代わりにやってしまうのは
優しさではない。

ここに至るまではまあ、うちも本当に色々あったので、
私もそれは分かっているつもりです。


でも、「九十のおばあさんを虐めんとって」という隣人の嘆きを
聞くと、どうにもいたたまれない気分になってしまいまして。

もちろん、お隣の方のことをよく知らない私が
どうこう言うような話ではないです。

しょっちゅうナースコールを押してらっしゃるようだし
もしかすると突き放さないと無限に甘えてしまうタイプなのかも知れない。
係の方の言動を責める気は一ミリもないんです。



自分90歳、どうやって水を飲む

ただ、ふと考えてしまった。
自分が九十歳になって、思うように身体を動かせず、
ベッドの上で水を飲みたいと思った時に、
あんな風に邪険にされたら
悲しいだろうなと。

(たとえそれまでわがまま放題で係の人に迷惑をかけても
おそらく九十の私は忘れているので
単に冷たくされたと思っている)


面会にくる家族もおらず(私は独身、一人っ子)
ただ一人水を飲む。
寂しいなあと……。 

ディストピア?

そこで考えたのはAIです。
実は最近、考えをまとめるのにAIを使うことが多いのですが
(思考の壁打ちに最適なので)
何十回ダメ出ししても気分を害することもなく
さっと別の回答を出してくる。
本当に有能なアシスタントだと思います。

これ、もし人間の部下だったら、さすがに空気が悪くなるし
そもそもそこまでは要求できないでしょう。
パワハラで訴えられそうだし。
大体そんなに引き出しないよね、人間。

(ただし、あくまでも私の印象ですが、AIも
あまりダメ出し、つまり修正要求を重ねすぎると
かえって求める答えから遠ざかっていくような気もします)


ならいっそ、自分の老後はAI搭載のロボットに介護してもらう方が
いいのではないかとちょっと思ってしまった。
これってディストピアだろうか?

いや、でも悪くないかも知れない。

「ヤスダサン。ダメですよ、自分でできることは自分でしないと」
「でけへんのじゃ」
「ダメですってば。ホラ、こっち向いて」


なんてやりとりを好きなCVで再生してもらえれば
それはそれで幸せなのではないかと考えるオタク。

いや、絶対にその方がいい。

少ない材料を膨らませ妄想を拡大するのはオタクの得意技。
その技とAIがあれば、
たとえ老人を詰め込んだ大部屋のベッドでも楽しく過ごせるはず。


ちなみに私は半世紀の歴史を誇るオタクなので、
多分死ぬまでオタクなんだと思うんですよ。

仮に認知症になったって、昔のことは覚えているといいますし。
なら、私の人生どこを切ってもオタクだ。
オタクのまま死ぬね、多分。

AIロボは、その日その日のオタク傾向を分析しながら相手(介護)してくれるわけです。
オタク以外の人にも初恋の人だとか孫がかわいかった頃の声とかで語りかけるとかね。

たとえこちらが憎まれ口を叩いても感情を害することもなく、虐待に走ることもない。

仮に私が凶暴な老人になったとしてもロボならある程度頑丈だし、好きなCVに諭され反省する(かどうかはわからないけどな)と。


このディストピア、最高なのでは?


今はまだ

最後に、誤解のないように書き足しておきますが、
介護医療院のスタッフの方たちは皆さん
とても優しく、母にもよくして下さっています。

ただ、私たち家族が面会できるのは一日15分という制限があるので
何をしてあげられるわけでもないし、生活ぶりを見ることもできない。
断片的な情報を聞くだけ。

感染症予防のために、仕方がないことと分かってはいるのです。
実際、母も夏に感染経路不明のコロナに罹り、死にかけたので。
(それで体力ががくっと落ちて、寝たきりになってしまったのです)

もう私たちのことを認識できているかどうかも分かりませんので、
面会に行くのもこちらの自己満足かも知れませんね。


あ、でもAI搭載のロボットだったらいいかも。
録画機能をつければ、面会時以外の母の姿を見られるし。
いや、これ。本当に早く実用化してほしい。


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