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イノベックス袋井工場-地中熱化計画-② 前編 イノベックスが推進する地中熱システムの仕組みとそのメリットとは?

皆さま、こんにちは。
株式会社イノベックス(本社:東京都中央区明石町)のジオサーマルトランスフォーメーション事業部・部長を務めております、福宮健司と申します。

ジオサーマルトランスフォーメーション事業部・部長 福宮健司

地中熱事業に関して、主に営業部門と技術部門の両方を見ております。私は技術屋の出身であり、地中熱を初めとした熱エネルギーの専門家でもあったのですが、地中熱事業をお客様に紹介して販売するということをしていくうちに営業的な役割も増えてきました。
そのため、技術部門と営業部門の2つを見ている立場になります。

さて、今回イノベックスの地中熱システムについて、技術的な側面から詳しくお話しさせていただく機会を賜りましたので、これからご説明して参ります。

2022年、株式会社イノベックスは再生可能エネルギーである地中熱事業を世に送り出しました。
そもそも、私どもイノベックス株式会社の親会社であるウェーブロックホールディングス株式会社(本社:東京都中央区明石町)が、1つの熱源孔から“水資源”と“熱エネルギー”の両方を取り出すことができ、熱利用については従来の地中熱工法の4倍から5倍で取り出せる、日本初の独自技術「ヒートクラスターⓇ」を確立させ、エネルギー関連事業に進出したことがきっかけになります。

地中熱システムは、コスト削減・環境負荷低減効果だけでなく、人や植物にも優しいといった様々なメリットがある夢の地産地消エネルギー利用システムです。
それでは、これから地中熱システムについて技術的な側面から具体的に見ていきましょう。

1.地中熱システムの特徴とはどのようなものか?

地中熱システム導入のためのボーリング工事

地中熱は、地熱とは違い、地下約100~200メートルほどの深さの領域が地中の熱を有効活用できる深度になります。
他方、地熱発電はもっと深いところの、地下2千メートルほどの深さのマグマを受けた熱を地上に取り出して、発電などをするものです。
それに対して、地中熱は深さ100~200メートルほどの比較的浅い地下にありますので、発電するほどの温度やエネルギーの密度はありません。そのため、地中熱を何らかの別の形の熱エネルギーとして利用するということが最大の特徴です。
つまり、地中熱システムは、熱を融通する技術といえます。

地中の深さ100~200メートルくらいの熱エネルギーの温度が、大体その地域の平均気温と同じくらいになります。
日本で言えば、外気温15~18度くらいの温度帯と同じであることが多いです。
そうすると、その温度というのは夏にしてみればとても冷たいですし、冬にしてみればとても暖かいですので、ちょうど中間の温度帯になります。
そのため、地中熱を空調の熱源として求めたときには、空調の冷房が非常に効きやすく、また、暖房の温熱が非常に調達しやすいことになります。
また、地中熱システムは、地中熱を空気から調達するよりも非常に小さなエネルギーで取ってくることができます。
そのため、結果的にコストダウンを実現することができ、また、環境負荷を低減することができる技術と言えるのです。

2.地中熱を活用する具体的なメリットとは?

重油貯蔵場所:工場の方は毎日重油貯蔵量を確認に来ていた

地中熱を活用する具体的なメリットについては、導入をご検討されている工場の経営者様などは、その点についてとてもご関心がおありだと思いますので、より具体的に深掘りしてご説明します。
地中熱システムは、空気熱源のヒートポンプと比較されることが非常に多いです。その他には、ボイラーによる暖房と比較されることもあります。
この点、ボイラーでは暖房しかすることができません。
しかし、地中熱システムでは冷房も暖房も行うことができます。
空気熱源のヒートポンプと比較しますと、空気熱源の4~5割のランニングコスト(電気代)を削減することができます。
平たく言いますと、環境負荷も同じく4~5割ほど削減することができます。

また、同じ性能の仕事ができるのかという観点から見ますと、空気熱源の場合は、真夏のもの凄く暑い時と真冬の氷点下になってしまうような寒い時には、持っている能力を出せなくなってしまうという性質があります。

他方で、地中熱は外気温がどのように厳しくなったとしましても、ずっと15~18度の安定した熱源を得られますので、真夏や真冬であってもしっかりと当初の性能を発揮することができます。
この違いは非常に大きいと思います。

同じ性能の仕事をしていてコストダウンももちろんするのですが、それだけでなく、作用させる空間に対する期待値と言いますか、パフォーマンスが変わってくる点が大きな違いになります。
この違いが地中熱システムの本来の良さだと思っております。

次に、環境負荷に関しましては、電気代の削減効果と全く同様にCO2排出量の削減効果が得られます。
これが例えば、重油や灯油を利用するボイラーと比べますと、ボイラーを使った施設園芸の暖房と地中熱システムの暖房とでは、暖房の部分だけを見ましても、二酸化炭素の排出量が違います。
そのため、かなり大きな環境負荷の低減効果があります。

さらに、その他の部分についても申しますと、施設園芸でボイラーを使った場合には暖房しかできません。
ところが近年、施設園芸のビニールハウスは徐々に大型化してきました。
そのため、大きなビニールハウスをしっかり作りますと、今度は温度管理をきちんと行き渡らせる必要が出てきます。
つまり、農作物にとって最適な温度で1年中ずっと空調を有効活用していく必要がありますので、夏には冷房も効かせたくなります。
冷房する場合にはボイラーではできませんので、例えば、空気熱源のチラーを利用することになりますが、ここで地中熱と空気熱源の差が出てくることになります。
ボイラーとチラーの2つの空気熱源設備を持つのは、なかなか効率が悪いことになるからです。
それに対して、暖房と冷房の両方の機能を一体化して供給できる地中熱システムは、生産者の方にとってみれば、非常に魅力のある環境制御機器として捉えてもらうことができるのではないかと考えています。

地中熱システムを活用することによって、暖房と冷房のコストをしっかり抑えながら、しかも、理想的な環境を作ることができますので、農家さんにしてみれば生産量が安定するというメリットがあります。

つまり、生産環境を1ランク、2ランク上げることができるので、より良い農作物をたくさん作ることを目指せるのです。
コストダウンをしながら、より良い農作物を長い期間にわたってたくさん作ること、
これこそが私たちイノベックスが長年生産してきました農業資材との組み合わせによって必ず実現しなければならない目標の1つです。
また、生産者の方にしてみれば今まで期待していた以上の成果が得られることではないかなと考えています。

このように、基本的には農業生産者の方のための活用を考えておりますが、他にも病院ですとか、老人ホームなどの高齢者施設などへの活用もできます。
私どもが施設園芸ハウスで培ったノウハウには、例えば、風の流れを工夫することが挙げられます。
風を出したとしても、優しい風で植物を傷めないような冷熱や温熱を供給するといった経験を積んできました。
この技術は、私たちの住空間においても活用することができます。

現在私たちの多くは空気が吹き出すエアコンが当たり前だと思っておりますけれども、エアコンの風が連続的に身体に当たってしまいますと、具合が悪くなってしまう方もいらっしゃいます。

例えば、高齢者の方やすでに具合が悪くなっている方、女性やお子さんといった、きめ細かい空調の調節ができている空間を作って差し上げないと体調を悪くしてしまうような方がいらっしゃいます。
そういう方々が多く生活を共にしているところが、病院や老人ホーム、幼稚園、学校です。

特に、病院や老人ホームというのは休みがありません。
つまり、24時間365日ずっと空調が稼働していなければなりません。
学校や幼稚園は、夜は空調を止めることができるという意味で休みがありますけれども、病院や老人ホームといった、ずっと空調を使い続けなければならない施設では、やはり電気代も大きな負担になります。
だからといって、空調を節約してしまいますと、その事業としての付加価値(=その空間の居心地の良さ)が落ちてしまうことになります。
そういった施設には地中熱システムは非常に相性が良いといえます。
ずっと空調をかけ続けることで良いコンディションを維持することができるからです。

しかも、低コストや環境負荷の低減といったことを前提に、24時間365日使っても安心して空調を活用することができるからです。
それが地中熱システムのそういった施設への適用の面白さではないかなと考えております。
つまり、空調を使い続けなければならない施設に今までの空調機器とは違った性質の環境の作り方をご提供することができるのです。

人に優しい環境を作ることができるのは、地中熱システムを応用した先の魅力だともいえます。
話をまとめますと、地中熱システムの行き着く先には、ランニングコストの削減や環境負荷の低減だけでなく、農作物などの生き物や人への優しさがあります。
地中熱システムの活用によって、空間における生き物や人々の過ごしやすさ、つまり、農作物でしたら生産量のアップ、さらにおいしさのアップ、人に関しては直接冷気や暖房の風が当たらないといった快適な空間作りができることを目指しています。

生き物や人への優しさにあふれた「空間への付加価値の提供」ということが、地中熱システムの行き着く先というか、目指す先になりますね。

3.地中熱システムをお勧めしたい事業者様とは?

地中熱源ヒートポンプ

私たちイノベックスとしましては、施設園芸農家さんや農業生産法人さんなどの、大型化して、かつ、周年栽培ということで1年中何かしらの農作物を生産して収穫している方々こそが、最も地中熱システムのメリットを受けやすいと考えています。

特に、私たちが開発した日本初の独自技術である「ヒートクラスターⓇ」という方式は、地中の熱交換の性能を上げながら、同時に地下水を汲み上げることができます。
つまり、熱と水の2つの資源を同時に取り出すことができるという熱源システムを持っているわけです。

施設園芸農業の営みは、熱だけでなく、もちろん水も使うわけですから、熱と水の2つを有効活用する必要がある施設園芸の大型農家さんには、地中熱システムは最も適しているのではないかと思います。
次に、前述のように、24時間365日ずっと空調を使い続ける必要があって、空調のコンディションを少しでも良くしたいと考えていらっしゃる事業者様、つまり、学校や老人ホーム、病院などを経営していらっしゃる方や工場を経営していらっしゃる方にもお勧めすることができます。

ちなみに、私どもイノベックスの工場も空調を24時間稼働させています。

工場の中ではそれなりに社員の皆さんには防熱・防寒対策をしてもらっています。それでも夏は暑くて、冬は寒いため、地中熱システムの活用により空調や環境を有効活用できるようにすることで、より働きやすい環境を作ることができると考えています。
空調設備がない工場や倉庫が日本にはまだたくさんあるのですが、そういったところで働いている方々は非常に過酷な労働条件で毎日頑張っていらっしゃいます。
それにもかかわらず、場合によっては熱中症で倒れてしまう事例もここ最近報告されています。
そういった労働災害につながるような悪い環境を少しでも改善したいとお考えの経営者さんや工場の運営者さんにも地中熱システムの技術があることを知っていただきたいです。
「こういう方法で地中熱システムを使うことができるんだ!」ということをですね。
なお、「自分たちの工場にはどんな視点で、どんな設備を入れたらいいのかなぁ?」と疑問をお持ちの方もまだまだたくさんいらっしゃいます。
そういった疑問も私たちイノベックスにお問い合わせいただいて、一緒になって、「どういう風に解決していきましょうか?」といったご相談のパートナーになれたら面白いのではないかと考えています。

(続きは、後編で)

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