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遠くない未来に実現するかも? 『ドラえもんを本気でつくる』

いくら科学技術が進歩した現代とはいえ、ドラえもんができるのは遠い未来の話のよう。しかし、ドラえもんを作るために日々研究に勤しむ人がいます。日本大学文理学部助教の大澤正彦氏です。幼い頃から「ドラえもん」を作りたいと考え、慶應義塾大学大学院にて研究を重ねてきました。そんな筆者が執筆した本、『ドラえもんを本気でつくる』(PHP新書)をご紹介。平易な文章であり、全200ページほどの新書サイズなので、サクサク読めます。

ドラえもん開発の前に、まずはドラえもんの定義をする必要があります。筆者いわく「社会的承認による定義」が良いそうです。これは、みんな(一般大衆)が「これはドラえもんだよね」と認めればドラえもんであるという決め方になります。

この社会的承認で定義されたドラえもんを作るには、「①実現する」「②実現しているように見せる」「③実現せずに許してもらう」の3つのアプローチがあります。

①は、目に見える形としてのドラえもんを作ることでクリアできます。②については、既存の工学研究において中心的に取り組まれてきたものです。工学的に感情の定義が定まっていないゆえ、機能を実現するアプローチが取れない一方、多くの人々にとって「感情がある」ことがドラえもんに対する譲れない機能要件であるために②のようなアプローチとなってるようです。③に関しては、例えば「タイムマシンに乗ってやってくる」という機能要件です。これは現代の科学では実現できるか不明であり、現状では実現できません。しかし、自分に寄り添ってくれるロボットであれば、たとえタイムマシンでやってこなくても、ドラえもんだと認めてくれる可能性は高いのです。

このように定義していくと、ドラえもんを実現する上での筋道が見えてくると、本書では書かれています。

また、便利な道具としてのロボットは、あくまでも「道具」です。それだけでは、使いたいときに使うだけのものになってしまいます。一方、かわいいだけのロボットは、ハマる人はハマるけれども、ハマらな人はハマりません。よって、かわいいロボットに便利機能を加えることで、人との接触回数を増やしていくことが必要になります。

この接触回数を増やすことが大事で、人が関わる回数が増えれば、ロボットはデータを学習し、性能が高くなっていきます。かわいさを兼ね備えたロボットは、たとえ機能性が低くてもユーザーの接触回数は減ることはありません。

その結果、人の心が分かり、人とコミュニケーションが取れ、人を助けてくれるロボットが出来上がるのです。ドラえもんの実現に、ぐっと近づくことになります。

このほか、本書では夢のような話を実現するためのアプローチ方法が語られており、大変興味深いものでした。本音を言えば、もっと分厚い本になっても良いのでディープラーニングやAIの話をもっと掘り下げて欲しかったです。しかし、ドラえもんを本気で作りたい!という筆者の情熱を感じるにはちょうど良いページ数と言えます。新進気鋭の研究者の思想に触れたいという人には、おすすめの本です。


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