見出し画像

大河ドラマ『青天を衝け』登場人物プチ解説(幕末編)

このnoteでは毎週、大河ドラマ『青天を衝け』の登場人物の解説を行ってきました。大河初心者の方に向け、中学で習った語句などを織り交ぜながら紹介しています(マガジンにまとめていますので、詳しくは以下をご参照ください)。

本記事では、『青天を衝け』がオリンピックでいったん休止になることを踏まえ、7月18日放送分までに登場した人物をまとめます。次回は8月15日に放送再開とのことなので、それまでの復習として読んでいただければと思います。

1.幕府側

・篤君
いわゆる天璋院ですね。宮﨑あおいが主演を務めた、『篤姫』を覚えている人も多いと思います。のちに討幕軍が江戸に迫った時、篤君は徳川家存続に尽力します。大総督府下参謀だった西郷隆盛に嘆願し、それを受けた西郷は陸軍総裁・勝海舟らと会談します。これがいわゆる江戸城無血開城に繋がっていきました。ドラマでは慶喜と篤君の関係がどのように描かれるのか、注目です。

・徳川慶福
のちの14代将軍・徳川家茂ですね。今回の大河では磯村勇斗さんが演じています。将軍継嗣問題では、南紀派によって推挙されました。その後一橋派を退け、13歳という若さで将軍に就きます。しかし、京都で禁門の変を起こした長州を罰するための長州征討で失敗し、幕府軍の権威は失墜。心労のあまり、家茂は21歳で亡くなってしまいます。

・徳川昭武
慶喜の異母弟。1867年に使節団を率いてフランスを訪れています。その際、会計係として栄一も同行しました。維新後は水戸藩知事となり、その後陸軍少尉などを歴任。アメリカ万国博覧会御用掛としてアメリカにも渡っています。1892年に子爵。

・田安亀之助
14代将軍・家茂が次期将軍に継がせようと考えていた人物。家茂逝去時にはまだ3歳でしたので、当然ながら将軍職に就くことはありませんでした。のちの徳川家達です。徳川宗家第16代となり、駿河国の藩主となります。維新後は貴族院議長や日本赤十字社社長を歴任。ワシントン会議全権委員を務めたことでも有名。

・松平容保
会津藩9代藩主。幕末期には京都守護職に就任し、歴史の表舞台に登場します。近藤勇たちを会津藩御預とし、壬生浪士組(のちの新選組)を創設したことでも有名ですね。一方、忠誠を尽くしていた徳川慶喜に江戸城への登城禁止を命じられたり、朝廷から逆賊とみなされたり、会津で孤立無援の籠城戦を強いられたりと散々な目に遭った人物でもあります。

・松平定敬
桑名藩主で、松平容保の弟。1864年に京都所司代に就任、一橋・会津・桑名の「一会桑政権」を樹立します。戊辰戦争では箱館・五稜郭まで転戦。維新後は明治5年にようやく謹慎を免じられ、のちに日光東照宮宮司に就任。

・井伊直弼
彦根藩主。掃部頭(かもんのかみ)と呼ばれます。劇中では岸谷五朗さんが演じていますね。将軍徳川家定によって大老に就任し、天皇の勅許を得ずに日米修好通商条約を締結します。家定の跡継ぎ問題では徳川慶福(家茂)を推し、反対派を弾圧しました(安政の大獄)。その結果、桜田門近く(現在の警視庁前)において暗殺されます(桜田門外の変)。ドラマや映画では悪人に描かれがちですが、「鎖国していた日本を開国に導いた」という点では、評価に値する人物であると思います。

・堀田正睦
阿部正弘の死去後に発言力を増すことになるのが、堀田正睦(演・佐戸井けん太)。備中守と呼ばれます。下田に総領事として着任したアメリカのハリスは、幕府に対して通商条約の締結を強く迫りました。堀田は京に赴き、通商条約締結の勅許を求めますが、これを朝廷は拒否。井伊直弼(演・岸谷五朗)が大老に就任すると、井伊は一橋派(慶喜を将軍に推す派閥)を弾圧し、これにより堀田も失脚してしまいます。

・川路聖謨
川路聖謨(演・平田満)は、勘定奉行を務めた人物。安政の大獄で左遷されてしまいますが、のちに外国奉行に就任します。海外事情に通じており、開明派とみなされていました。1868年、戊辰戦争がちょうど始まる頃にピストル自殺。

・平岡円四郎
幕臣。ドラマでは堤真一が演じていますが、この人も安政の大獄で左遷されます。のちに慶喜の復権によって平岡も一橋家用人に就任しますが、1864年に水戸藩士によって暗殺されてしまいました。なので、平岡ロスになった人も多いはず。

・岩瀬忠震
旗本出身。江戸幕府の学問所である昌平坂学問所で学び、登用試験に合格して幕府の役人となります。ハリスと交渉して日米修好通商条約を締結したことで有名。しかし安政の大獄で処罰され幽居。その後病気で亡くなります。

・和宮
孝明帝の妹。有栖川宮熾仁親王と婚約しますが、幕府提案の公武合体策により14代将軍・徳川家茂と結婚することになります。ところが家茂は上洛することが多くなり、和宮は夫と離れて暮らすことに。いわゆる悲劇のヒロインです。戊辰戦争時には、天璋院(篤君)とともに徳川家の存続を訴えました。

・安藤信正
幕末期の老中であり、別名・対馬守。井伊直弼が、桜田門外の変で倒れた後の幕府を支えました。上述の和宮の件(和宮降嫁)で攘夷派から非難され、坂下門外で負傷します(坂下門外の変)。その責任を取り、老中を辞職。戊辰戦争では新政府軍に対抗しますが、敗北。明治4年に死去してしまいます。

・板倉勝静
幕末期の老中首座。会計総裁も兼ねていました。大政奉還の実現にも尽力しましたが、慶喜が朝敵となると老中職を辞し、軟禁されてしまいます。五稜郭まで転戦しますが、陽明学者山田方谷に強制的に江戸に戻されます。維新後は赦免され、第八十六国立銀行(現在の中国銀行)を設立するなど活躍しました。

・勝麟太郎
言わずと知れた勝海舟ですね。本作では未だに会話の中でしか登場していませんが、イギリス船を購入して「順動丸」と名付け、これに慶喜らが乗船して上洛します。その後は罷免など憂き目に遭いますが、江戸城無血開城に奔走するなど活躍。維新後も明治政府にて、海軍卿や枢密顧問官として活躍します。

・小栗上野介
幕末期の幕臣。本作では武田真治が演じています。あの勝海舟からも一目置かれるほど優秀な人物でした。新政府軍に対しては徹底抗戦を主張しますが、慶喜にその意思が無いことを知ると田舎に籠ってしまいます。維新を見ることなく斬首され死亡。

・土方歳三
新選組の副長。これまで様々なドラマで、いろいろな俳優が演じました。戊辰戦争では、箱館五稜郭まで転戦していることからも、いかに幕府を信奉していたのかがわかりますね。この人も農民出身であり(のちに行商人に)、ある意味栄一と同じ境遇です。

・栗本鋤雲
江戸幕府目付。劇中ではフランス語を時折話す「フランスかぶれ」的な存在として描かれていました。渡仏中に大政奉還と江戸幕府の滅亡を知ります。新政府からの誘いを断り、「横浜毎日新聞」に入社。以降、ジャーナリストとして活躍。

・向山一履
幕末の幕臣。のちに外国奉行となり、パリ万国博覧会に栄一らとともに出席します。維新後、静岡藩の学問所学頭に就任。その後は漢詩人として活躍します。向山黄村という名前で有名です。

・福沢諭吉
言わずとしれた思想家。慶應義塾(現・慶応義塾大学)の創始者です。この人はパリ万博の使節団には同行していません。むしろアメリカに渡り、知見を深めています。維新後は新政府への出仕を断り続け、思想家として活躍。「女性解放論者」として評価される一方、「脱亜論」を発表するなど評価の分かれる人です。

・福地源一郎
外国奉行支配。犬飼貴丈さんが演じています。維新後は木戸孝允によって見出され大蔵省に出仕。岩倉遣外使節団に同行しています。東京日日新聞入社時には主筆としてたくさんの社説を発表。のちに議会が開かれると、立憲帝政党を立ち上げますが、政府寄りの政党ということであまり勢力を拡大できませんでした。歌舞伎座の創設にも尽力。

・猪飼勝三郎
一橋家家臣。青天を衝けでは遠山俊也さんが演じています。初登場時には、栄一や喜作の住まいを案内していました。その際、鍋などを買うお金がない2人に対してお金を借りていますが、これは史実だったようで、実に25両もの借金を作ったとされています。これを栄一は生涯恩義に感じていたようで、その付き合いは後年になるまで続いたらしいです。

・保科俊太郎
幕臣。パリ万博への派遣団では通訳として随行しました。維新後は新政府に出仕し、陸軍省人員局長などを歴任。またの名を保科正敬。

・杉浦愛蔵
志尊淳さん演じる杉浦は、外国奉行支配調役として栄一らとともに渡仏しました。維新後は静岡に蟄居しますが新政府に出仕、郵便制度の確立に取り組みます。その後、内務省大書記官地理局長。明治10年(1877年)没。

・高松凌雲
幕末から明治にかけて活躍した医師。栄一らとともにパリに赴きました。戊辰戦争では五稜郭にて医療業務に従事。戦後は一時徳島に行きますが、罪を解かれ東京に病院を開業します。のちに栄一の支援を受け同愛社を設立。

・原市之進
慶喜の参謀的なポジションで登場している人物(演・尾上寛之)。水戸藩出身で、一橋家で働くことになります。慶喜の将軍就任のために奔走し、見事実現しますが、1867年に暗殺されてしまいます。慶喜の側近は、本当に皆さん殺されてしまいますね…。

2.諸藩

・松平慶永
要潤が演じた登場人物です。劇中ではいきなり現れ、さらに一橋慶喜を将軍にしたいと述べていましたね。日本史初心者の方には「?」だったかもしれません。以前noteにも書きましたが、この人物の別名は「松平春嶽」です。幕末の四賢侯の1人で、維新後は政府に出仕して議定に就任しています。その後も民部卿、大蔵卿などを歴任した人物です。明治維新にも影響を与えた人物の1人であります。

・山内容堂
土佐藩主。将軍継嗣問題では一橋派でした。一時は安政の大獄により隠退するも、その後表舞台に復帰。「公武合体」を推進しました。坂本龍馬発案、後藤象二郎建議の「大政奉還」を、慶喜に建白した人物として有名です。維新後は議定などを歴任。

・島津久光
薩摩藩主・島津斉興の子。家督争いに敗れますが、自身の子である忠義が藩主になると、藩の実権を握ります。公武合体運動の中心人物となり、江戸にも上京しました。その帰り、島津久光の行列に乱入したイギリス人を斬殺するという生麦事件を起こしてしまいます。それが薩英戦争の引き金となり、薩摩は「攘夷は無謀」であることに気づくことになります。

・伊達宗城
宇和島藩8代藩主。伊達政宗の子である伊達秀宗が祖先であり、ある意味伊達政宗の親戚です。維新後は外国事務総督や外国官知事として、政府発足当時の外交責任者を務めます。のちに大蔵卿に就任。その他、日清修好条規(日本と清の間で初めて結ばれた条約)の締結にも関与しています。

・伊藤俊輔
のちの伊藤博文ですね。本作に初登場した際は、イギリス留学から帰ってきたばかりの頃だと思われます。イギリス留学をしていた長州藩士5人は、いわゆる「長州五傑(長州ファイブ)」と呼ばれていました。同名の映画もありますので、興味がある方はそちらも要チェックです。

・井上聞多
のちの井上馨ですね。伊藤とともに行動することが多く、この人も長州ファイブの1人でした。維新後は諸外国と不平等条約を改正すべく交渉しますが、そのやり方が鹿鳴館外交と揶揄されることになります。

・西郷吉之助
のちの西郷隆盛です。薩摩藩の下級藩士の子として生まれましたが、藩主島津斉彬に見出されて出世。一度は島流しに遭いますが、その後復帰。第二次長州征討では反幕府の動きを見せ、薩長同盟を結びます。戊辰戦争では東征大総督府参謀として江戸無血開城を実現。維新後も明治政府の要職に就きますが、1877年に西南戦争にて戦死。

・五代才助
のちの五代友厚ですね。連続テレビ小説『あさが来た』同様、ディーン・フジオカが演じています。「東の渋沢、西の五代」と呼ばれるほど、2人は比較対象となる存在ですが、歴史の教科書では「開拓使官有物払下げ事件」で登場するため、ある意味不運でもあります。

・大久保一蔵
のちの大久保利通ですね。西郷隆盛、木戸孝允と並んで「維新の三傑」と呼ばれます。明治政府においてその力は絶大で、初代内務卿に就任しています。まさに政府の中枢の中枢でしたが、1878年に紀尾井坂付近にて暗殺されてしまいます。ちなみに、玄孫に麻生太郎氏がいます。

・三島通庸
薩摩藩士。劇中では栄一を警戒する一介の武士として描かれていましたが、維新後は明治政府において出世。現在の県知事である、酒田県令、山形県令、福島県令などを歴任します。三島は福島県令時代、自由民権運動が活発だった現地の河野広中らを弾圧、いわゆる福島事件を起こしています。しかし、その後「子爵」を授けられるなど、特に失脚もせずに54歳まで生きます。

・川村純義
薩摩藩士。上の三島と一緒にいたただの武士でしたが、戊辰戦争では会津戦争に参戦。維新後には海軍軍備に尽力し、日本海軍の黎明期を支えます。西南戦争では海軍を率い、戦後は海軍卿(今の大臣)に就任しています。明治天皇からの信頼が厚かったようで、のちの昭和天皇の養育を命じられたというエピソードも。

・新納中三
薩摩藩家老。劇中では新納刑部という名で登場していました。薩摩藩とモンブランの商社設立契約を結ぶなど、なかなかのやり手でした。維新後は奄美大島に渡り、黒糖の流通改革に取り組みました。

・宮部鼎蔵
熊本藩士。八月十八日の政変では長州に逃れるなど、長州とともに行動していました。池田屋で会合中に襲撃を受け死亡。あの吉田松陰にも認められた男でありました。

・折田要蔵
サカイ引越センターのCMでお馴染み、徳井優さん演じる折田要蔵。劇中では癖のある「摂海防禦御台場築造御用掛」として描かれていましたが、維新後は武器の商人に転じます。その後、楠木正成を祭る湊川神社の初代宮司に就任。宮司としての仕事ぶりは不明ですが、一応「仕事キッチリ」やっていたようです。

・岩下佐治右衛門
薩摩藩士。かつては尊王攘夷派として水戸藩と連携するなどしていましたが、転向。薩摩藩の使節として「薩摩琉球国太守政府」の名でパリ万博に出展。維新後は参与として活躍、その後は元老院議官、貴族院議員を歴任。岩下方平とも言います。

3.公家

・岩倉具視
身分が低い公家出身でしたが、次第に頭角を現し、孝明帝の侍従になります。王政復古に成功し、公家として唯一「維新の十傑」に選ばれています。歴史の教科書では岩倉使節団が有名ですね。のちの日本を築く、著名な人物が多数随行しています。

・三条実美
内大臣であった三条実万の子。父の志を継いで、尊王攘夷派として行動します。しかし、八月十八日の政変で攘夷派が京都から追放されると同時に、長州に逃げていきます(七卿落ち)。王政復古後は、右大臣や太政大臣を歴任。その後、内閣制度ができたため、最後の太政大臣となりました。

4.その他

・渋沢うた
栄一と千代の娘。劇中ではまだ小さい女の子でしたが、維新後は宇和島藩士だった穂積陳重に嫁ぎます。穂積は英吉利法律学校(現・中央大学)の創設者の1人であり、東京大学教授兼法学部長や最高裁判所判事などを歴任します。うたはのちに歌子と名乗り、歌人として活躍するほか、出征軍人家族慰問婦人会で理事を務めるなど、精力的に活動します。

・高島秋帆
玉木宏が演じました。父の後を継ぎ、長崎会所(長崎税関の前身)調役頭取になります。オランダ人を通じて洋式砲術を学び、「高島流砲術」を創始した人です。しかし、長崎会所のずさんな運営の責任者として投獄されてしまいます。その後、ペリー来航により近代兵学の必要性に迫られた幕府は、この高島秋帆を赦免することになりました。その後は講武所(幕府の軍事修練所)砲術師範役などを歴任し、慶応2(1866)年に死去。この高島流砲術は、幕末の軍事・思想に多大の影響を与えています。

・阪谷朗廬
栄一が面会した際は興譲館館長でしたが、かつては大塩平八郎のもとで学んでいたようです。維新後は文部省、内務省などの官職を歴任。その後、東京学士会院議員も務めました。福沢諭吉らとともに明六社に参加するなど、明治期に活躍した知識人の1人です。

***

以上、大河ドラマ『青天を衝け』登場人物プチ解説(幕末編)でした。以下の記事でも幕末期の人物を解説していますので、あわせてご覧ください。


よろしければサポートお願いします!