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Eコマースから自動運転まで展開するロシアのグーグル、Yandex ( $YNDX )

はじめに

今回はロシアのグーグルなどとも呼ばれるYNDX (Yandex)の調査・分析を記事としました。Eコマースから自動運転まで幅広く展開しており、懸念点も少なくありませんが、非常に魅力の多い企業の一つかと思います。

トウシドリの考えるYNDXのポイントは以下です。

・オンラインの入り口となる検索エンジンで高いシェアを誇る
・タクシー事業を大きく育てており、さらに自動運転やEコマースなど次の芽を育てている
・新規事業において、シナジーや地理的環境などを活かし差別化できている
・CEOがシリアルアントレプレナーである
・コロナにより一時売上が低下しているものの比較的早期に回復させている、モバイル移行に成功している、など機敏な経営判断と実行ができていると思われる実績がある
・ロシア経済の見通しは芳しくない
・ロシア政府の影響力は強く、諸刃の剣となる

長編となっていますが、幅広い事業を持つロシア企業を通し、視野が広まるメリットもあるかと思うので、ぜひ最後まで読んでもらえると嬉しいです。

企業概要

ロシア最大のテクノロジー企業。検索サービスがメイン事業であったが、配車サービスやEコマース、自動運転など多様な事業を展開している。

輸送、検索および情報サービス、eコマース、ナビゲーション、モバイルアプリケーション、オンライン広告など、70以上のインターネット関連製品およびサービスを提供する、ロシア・オランダ籍の多国籍企業です。
・・・同社はロシア最大のテクノロジー企業であり、ロシアのインターネット上で最大の検索エンジンであり、52%以上の市場シェアを持つ。また、ヨーロッパおよび独立国家共同体の検索エンジンの中で最大の市場シェアを持ち、Google、Baidu、Bing、Yahoo!に次いで世界第5位の検索エンジンである。
引用:Wikipedia

各種定量情報

オンライン広告、タクシー関連、その他に事業セグメントを分けていますが、広告事業は4%と低い成長ですが、他は高い成長を見せています。各事業については後述します。

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出所:Yandex

2020の売上構成を円グラフとすると以下のようになります。オンライン広告、タクシー関連の二大事業となっています。

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次に売上の推移を見るとYNDXが継続した成長実績のある企業であることが分かります。コロナの影響は見られますが、コロナ前の成長ラインに戻っているように思われます。

スクリーンショット 2021-03-22 14.12.23

出所:Yandex

30%程度の高い売上成長を継続していますが、PSRは一桁台で黒字化しており、好印象です。

P/E 68.78
Forward P/E 32.01
P/S 7.85
Quick Ratio 4.60
Current Ratio 4.70
Sales past 5Y 29.60%
Price(2021/3/22) 65.55
Target Price 75.78
参考:Finviz

事業紹介1:検索事業

Yandexの検索画面は以下。Googleのように翻訳ができたり、メールサービスがあることなどわかります。下部には展開国の国旗もあり、ロシア以外でもサービスを提供していることが分かります。

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Yandexは以下のように10番目に閲覧数の多いサイトとなっています。YahooやAmazonを超える閲覧数です。

YNDXはモバイル対応にも成功しており、iOS、Androidの両方で高いシェアを誇り、しかもシェアは増大すると予想されています。

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出所:Statista

事業紹介2:タクシー関連事業

Uberと類似する事業領域です。ライドシェアリングや食料品配送、フードデリバリー、カーシェアリングなどの多様なサービスを提供しています。2020年は47%の売上成長の好成績であり、全売上の約30%を占める非常に重要な事業となっています。

YNDXは過去にはUberとJVを設立しており、そこでは得たノウハウを活用しているものと思われます。

ちなみにYNDXは、「2020年3月にゼロだったB2B物流サービスの顧客数を2020年末までに1万5,000社に増やすことができ、これらのサービスは、OZONやAvitoなどのYandexの同業他社にも利用されているとしている」ようであり、新しいビジネスを育てる力があるように思われます。

参考:BNE IntelliNews

また、ロシアの首都であるモスクワはMaaSの計画を推進しており、その計画の説明の中で、YNDXの名前を挙げています。

マクシム・S.モスクワ市の交通担当副市長であるリクストフ氏は、モビリティーの統合を広めるためのロシアの首都の計画を詳しく説明し、それを実現するための業界関係者を紹介してくれました。
タクシーやカーシェアリングのプラットフォームであるYandex.Drive、Citymobil、Delimobil、BelkaCarなどに加え、電動スクーターのレンタルサービスであるUrent、Whoosh、Samokat Sharingが、ロシアの首都で統一されたMaaSプラットフォームに参加する準備を整えています。
引用:Intelligent Transport

この事業セグメントにおいては、最近もVezet Groupのコールセンターおよび貨物事業の買収を行なっており、事業の強化を進めています。ロシアの100以上の都市でサービス提供を行なっているようです。

Vezet
Vezetグループは、2017年5月、SaturnとRuTaxiという2つの現地企業の合併により設立されました。現在、ロシアの100以上の都市でライドハイリング、カーゴ、フードデリバリーなどのサービスを提供しており、ユーザーは電話またはモバイルアプリを使って注文することができます。通話処理にかかる時間は平均20秒で、これは業界全体でもトップクラスの結果です。
引用:Yahoo finance

今後の事業展望1:EコマースとRide-techの統合

YNDXはまだ他事業に比べ小規模ながらEコマースを行なっており、GMVはYoYで127%の成長しました。OZONなどの競合が多くいるロシアのEコマース領域ですが、YNDXは「『E-commerce and Ride-tech』という単一のバーティカルの下で、輸送とE-commerceの資産を統合」し、そのシナジーによりロシアにおけるEコマースのトップ3の座を狙っているようです。

参考:BNE IntelliNews

今後の事業展望2:ユニバーサルな自動運転

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