見出し画像

~~株式投資の我流説明~~         その10:基本編1/4 株式投資のリスク

企業価値と適正株価の重要性

入門編では企業価値と適正株価を中心に説明しました。中長期型のファンダメンタルズ分析で重要なことは企業価値を理解して適正株価を導き出せることです。
 
適正株価は普段、買い物するときの適正価格と同じです。りんご1個の適正価格が100円だとすれば、80円だと安いと感じますし、120円だと高いと感じます。1000円になれば、大金持ちでなければ、買うのを控えるでしょう。しかし、りんご1個の適正価格を知らなければ、1個1000円でも買うかもしれません。
 
株式市場は色々な思惑で株価が大きく変動します。図1はソフトバンクグループの過去30年の株価です。

図1 ソフトバンクグループの株価

2000年頃にITバブルが起こり、株価が大暴騰しました。適正株価を知らずに、2000年のピーク時に購入していれば、1年で10分の1まで株価が下がり、大損失を被っていたでしょう。
 
ソフトバンクグループの場合はITバブル崩壊後でも、耐えることができ、事業拡大がうまくいきました。20年間含み損のある株式を保有する忍耐力があれば、損失を取り戻すことができましたが、これは稀なケースです。
 
基本編では株式投資のリスクについて説明します。適正株価を知るだけで、高値で買ってしまうリスクはなくなりますが、それ以外にもリスクがあります。


売値はあまり重要ではない

短期型のテクニカル分析では株価の買値と売値を決めて株式投資をしますが、中長期型のファンダメンタルズ分析では適正株価のあたりで株式を購入すれば、特に売値を決めることはありません。会社の持続性に問題がなければ、長期的には株価は上がります。
 
なぜ、株価が上がるかというと、インフレがあるからです。インフレは物価が上がることで、業績の上振れ要因となります。逆に物価が下がることをデフレといいます。
 
例えば、1個100円の商品Aを1万個売れば、100万円の売り上げになります。年率2%のインフレであれば、1年後には商品Aが1個102円になり、同じ1万個を売っても、102万円の売り上げになります。


インフレ率と株価の関連性

図2はアメリカのインフレ率とニューヨークダウ、図3は日本のインフレ率と日経平均株価をそれぞれ2000年から2023年初頭までを表したグラフです。

図2 アメリカのインフレ率とニューヨクダウ



図3 日本のインフレ率と日経平均株価

年率0%(赤線)もしくはデフレであれば「赤」、インフレであれば「オレンジ」に色分けしました。
 
インフレは株価が上がりやすく、デフレは株価が下がりやすい傾向があります。長期に渡るとその傾向がはっきりします。
 
株価はインフレ率を予想して先取りして動きます。インフレが長期であれば、投資家は毎年のインフレ率によって業績が良くなることを織り込みます。その結果、株価の上昇傾向が続きます。
 
逆に、インフレが短いと、次の年はインフレかデフレのどちらになるのか予想しにくくなります。その結果、株価の上昇が抑えられ、株価は上がりにくくなります。
 
図2のアメリカのように、インフレが長いと株価は上昇傾向が続きます。図3の日本はインフレが短いので、株価の上昇に勢いがありません。
 
日本は2013年以降、日本銀行が積極的な金融緩和政策を行い、デフレ脱却の方向に進みましたが、2014年と2019年に消費増税を行ったことで、増税による一時的なインフレの後にはデフレになり、長期的なインフレになりませんでした。
 
日本は安定的なインフレという目的を政府と日本銀行が共通の認識を持って政策に取り組めば、アメリカのような株価の上昇傾向になると考えられます。ただ、日本は数十年にわたるデフレを経験した世界でも稀な国であるため、政府と日本銀行の政策は十分注視する必要があります。
 
ちなみに、インフレ率が高くなればなるほど、株価が上昇するかというとそうではありません。急激なインフレは人々の生活に困難をきたし、経済が崩壊する危険があります。
 
そのため、中央銀行はインフレ率が年率2%(グラフのオレンジ色の破線)程度を目標に政策金利を決めています。インフレ率がかなり高くなると、利上げをします。高インフレは図2の色が塗られていない部分になります。利上げは景気後退の可能性が高まるので、株価は上がりにくくなります。


株式投資のリスク

長期的には株価は上がるといいましたが、リスクがないわけではありません。リスクは大きく分けて2つあります。
 
①経済全体の不透明感による株価下落
経済全体の見通しがつかない場合、多くの投資家や金融機関は株式から金(ゴールド)や国債などの安全資産に移すため、株価が下落します。売りが売りを呼ぶことで、大暴落することもあります。
 
経験豊富な投資家であれば、大暴落の前兆が見えてきたら、早いうちに株式を売り、下がり切ったところで買い戻すこともできますが、一般の投資家はタイミングの見極めが難しいと思います。
 
経済の見通しが見えてくると、株価は戻ってくるので、中長期で保有していればあまり問題にはなりません。ただ、株価が戻ってくるまでの間、含み損を見ると体に悪いかもしれません。
 
 
②会社の業績悪化による株価下落
中長期型のファンダメンタルズ分析では会社の業績悪化による株価下落は注意する必要があります。なぜなら、保有継続か損切かの判断が必要になるからです。ここでは、業績悪化の要因について説明します。
 
 
【インフレに対応できない】
インフレによって、売り上げは上がりますが、販売費や一般管理費なども増加します。売り上げが上がっても、それ以上に経費がかかれば、会社の業績は悪化します。
 
商品の値上げをしても、顧客が値上げを受け入れなければ売り上げも減少します。
 
【デフレ状態】
インフレ率が0%以下であれば、売り上げの上昇は難しいので、経費削減による増益しか期待できません。

入門編では企業価値の要素は図4のように示しました。

図4 企業価値

未来の貢献度があれば、値上げしても顧客は受け入れてくれます。顧客が必要とする新商品やサービスであれば購入します。
 
経営能力があれば、売り上げの上昇よりも経費の上昇を抑えることで、増益にします。また、世界中がデフレになることはないので、世界中に販売網を増やすことで、デフレ対策になります。
 
ただ、デフレの脱却は政府と中央銀行がうまく対策すれば可能なので、経営努力よりも政府と中央銀行が責任を持って対策してほしいところです。
 
長い説明になりましたが、一言でいうと「物価変動に対応できる会社が存続できる」ということです。
 
 
「未来の貢献度」と「経営能力」があればリスクに対応できますが、未来のことなので不確定要素になります。このようなリスクに対処した投資方法を次回で説明します。
 

=つづく=


次回は基本編2/4:中長期的な投資方法です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?