見出し画像

オルカンやS&P500の積立は本当に正しい選択なのか?

新NISAが始まり、日本株が値上がりをし続けています。
いいニュースですね。私は年始直後に日本株を多めに買っていたのでホクホクで嬉しいです。
皆さんの運用成績はどうでしょうか?

さて、最近親族に「積み立てNISAどうするか迷ってるんだよね、オルカンかS&P500かでいいと思うんだけど」と話をされました。
とりあえず私は「長期の中でも短期寄りの、例えば3年とか5年とかで見たら損失出る可能性高いと思ってるからやめといた方がいいと思う」と答えましたが、
「どうせすぐ使わない金だし20年とか持っといて利益出りゃいいよ」と返されたので、それ以上言うのを止めました。
確かにそれだけ長い事持ち続けられれば多分利益出ると思いますからね。
問題は続けられるかどうかです。

Youtube等を見ると、積み立てNISAはオルカンやS&P500がオススメ!みたいな発信をよく見かけますが、正直私はあまりオススメしていないです。
そんな逆張りオタクの現在の投資環境について、
思っていることを書いていきます。


・積立NISA積立NISA言うけど、本当に積み立てできるのか?

次のチャートの画像を見てください。

始端から終端までの期間はおおよそ15年程です。
始端の価格はおよそ1100程。15年かけて不安定に上下を行き来しつつ、終端の1300辺りへと到達しています。
始端で一括投資すると損失を出しているタイミングもまあまあありますね。
ドルコスト平均法で積立するにしても、中身を切り取ったら10年程の長期でも損失を産んでいてもおかしくなさそうです。
15年という期間を費やしたにしてはリターンの少ないイマイチなチャートだなあと私は思います。
これ、何のチャートだと思いますか?

正解はS&P500の期間切り抜き(1998~2012年)チャートでした!
まあこれ2000年末にITバブル崩壊、2008年末にリーマンショックと下落相場が続いてしまった悪意のある切り抜きなんですけど。
一応、このチャートは後にこうなります。

結果だけを見れば2010年以降は堅調に上がって利益を産んでくれるのですが、それは利益が乏しく苦しい15年間を耐えた場合に初めて訪れます。
まあこれは悪意のある切り抜きなので投資を始めたタイミング的にも最悪なのは確かにそうなんですが、
始めたタイミングが悪い投資であるならば、こうなってもおかしくないということは念頭に置いておかないといけません。

さて、私は買った株が暴落したら結構なショックを受けます。
自分が汗水垂らして働いて得た金10万円がバッドニュースで一時的にでも7万になったら「うわぁーマジか…」ってなります。
積立の期間が長ければ長い程そのショックは大きくなります。
100万円が70万円になって30万の損失。割合としては10万から7万の損と一緒ですが、こちらの方がショックが大きくて多分寝込みます。
そんなことが起こりうるのが投資の世界です。
確かに20年という長期なら利益は出る確率が高いですが、その間で大きな損失が出ても続けられるのか、というシミュレーションから目を逸らしてはいけません。

あと、貯める目的が「老後資金」であり、30年とかの長期で貯める期間がありますよ、というのであればそこまで問題無さそうに見えますが、
その場合は今度は「それNISAじゃなくてiDeCoでよくね?」という話にもなります。
NISAは途中引き落としが出来るというメリットがあるように見えて、実は簡単に損切りが出来てしまうというデメリットがあるとも見れます。
iDeCoは途中引き落としが不可能である代わりに、老後資金は(30年程の長期で見れば高確率で)キッチリ準備できるというメリットがあります。
(なんなら税制上有利になるメリットもあるので、場合によってはこちらの方がいい説もあります)
足周りの良さによって逆に事故を起こしてしまっては本末転倒だと思いませんか?

まだあります。
数字のトリックの話になりますが、株価が50%下げた後、また50%価格を戻した所で元の価格には戻りません。必要な上げ幅は100%です。
S&P500の平均年率は8%前後(だっけ?)と言われていますが、一度大幅に下げたら再度同じ値段まで戻るのには非常に時間がかかります。
日本でも、日経平均価格が30年前のバブル景気時の数値を最近久しぶりに超えたと話題になっていましたね。
暴落した価格が元の値段まで戻るには、それだけ時間が掛かります。

・アメリカ株、高すぎィ!

株価の割高割安判断に使う指標として、PERという物があります。
これは簡単に言うと、
「その会社の価格(時価総額)を会社が何年で回収できるか」を表す数値になります。(単位は倍)
例えばPER10倍なら、その企業が10年で時価総額と同じだけの利益を回収できることを表します。
(会社の景気が良い年や、時価総額=株価によって、この値は常に変動します)
基本は15倍だと言われています。まあ所説ありますが。

で、S&P500はというと
現在24.40倍です。(VOO内訳参照)
基本が15倍と言われる中でのこれは高すぎィ!

まあ実は成長株個別であればPER24倍って数字はそんなに珍しいことではないですが、その代わりその企業へは利益の成長を求めます。
その為、GAFAMやFANG+辺りの株はPERがものすごく高いです。
例えばアップルはPER31.3倍なんて数字になってます。
最近AI需要で株価が爆上げしたnvidiaは脅威の338.6倍となっています。参考までに日本のバブル景気時の日経平均PERは60倍です。
それだけ成長が期待されているということですね。
そういうわけで「今この瞬間」を切り取ると非常に割高に見えます。
数値上正常(PER15倍)な値に戻るには、以下の計算式が必要になります。
現在株価×15÷現在PER
この式を当てはめると、アップルは株価半分、nvidiaは株価約1/22倍になります。後者は100万突っ込んだら4万ちょっとになって帰ってくる計算になります。ヤバすぎますね。
まあ色んな要因があるので実際そうなるって訳じゃないですけど、理論値ではこうなります。

また、S&P500が成長しているように見えるのは、景気が良すぎる企業がS&P500全体のチャートを吊り上げているからです。
S&P500のチャートより上がり幅が小さい株なんて調べたらいくらでも出てきます。
つまり、今現在割高の企業でS&P500の価格は支えられており、それが下がれば崩壊するということです。
理想だけ見て夢見がちになっていませんか?

ちなみに、無リスク資産の米国債券は現在年率約4%前後で、原資回収までに約25年かかる計算になります。
株という元本を割るリスクのある資産で24.4年、債券という無リスク資産で25年。
自分なら後者を選びます。
これが例えば株で15年(PER15倍)ですよ、と言われたら改めて考えます。
(米国債券は為替の関係で実は元本割れのリスク0って訳ではないんですが…)

・オルカン、言うほど分散できてない。

e-maxis slimオルカン2023年12月期月報より、組入割合

アメリカ比率、高すぎィ!!
先程挙げた現在のアメリカ株の割高性も含めて怖いなと思っています。

以上が安易にオルカンやS&P500をオススメできない理由です。

・なぜオルカンやS&P500がオススメされるのか

予想ですが、
「投資について詳しい人が、詳しくない人に何を買えばいいか教えるときに、数十年ドルコスト平均法を続けるのであれば無難な選択だから」だと思います。
銀行に行くとよくNISA口座開設して投資しませんかと勧誘されるらしいですが、
ここで紹介される投資先は十中八九カスとよく聞きます。
信託報酬が高い、聞こえだけ良い投資先、リターンが期待できないetc.
(ここは実体験に基づかない話なので参考程度に)
しかし、オルカン、S&P500は信託報酬がトップクラスに安く、投資先としては優秀かつ無難です。
ドルコスト平均法を数十年続けるという前提であれば間違いなく正しい選択だと思います。
但しこれは、ここまでの前提条件をきちんと把握していれば、の話です。
実際はここまで説明するのも大変であること、説明しても理解してもらえるか分からない等々で、
「オルカンかS&P500でええんとちゃう?」と答える事が結果的にベターな選択になってしまったんだと思います。

・では何を買えばいいのか?

ここについては性格、人生設計、ライフスタイルで変わる部分で十人十色だと思っています。
比率を変えることも可能で、例えば株7:債券3なんて選択肢も取れます。
以下に紹介するプランを、新NISAやiDeCoの制度を今一度調べて把握した上で、今の投資手法と比較して見直すと良いと思います。

 パターン1

積み立てたお金をいつ使うか分からない。5年以内に使う可能性もあるという場合。

積み立てるべきではないので今すぐやめましょう!
比較的短期寄りの債券を購入でもOKですし、積立NISA枠でなく成長投資枠で景気に左右されずに安定した利益を出せる日本の会社の個別株を買うことをオススメします。S株で数千円単位で買える筈です。
(例えばKDDIとか)
個別株はその会社がやらかした時に下落するからリスキーってよく聞くけど、
利益的な面でやらかさないような株を選べば基本的にはリスクは大きくありません。
去年ビッグモーター関係で大問題になった損保ジャパンですら一時的には株価は下がりましたが、収益には問題無いと判断されて今は完全に値段が戻りました。
(投資判断や方針、ポリシーに反する等は一旦さておき)
強いて問題を上げるとすれば、優待等の関係である程度纏まったお金がある方が理想的なことくらいでしょうか。
しかもこの場合は纏まったお金を使うので、どうしてもその分リスクは背負わなければなりません。
また、株メインに据えて暴落時に蓄えが少ないから売りたいとなった場合のリスクヘッジをする場合は、ある程度ゴールドや債券も持っておくと良いと思います。

余談ですが、通信系は大体安定してそうに見えますが、
ドコモ(日本電信電話)は政府が株売るのか売らないのかよく分からない宙ぶらりん状態で、もし売るなら信用瓦解によりちょっと下がりそう。
ソフバンは実質投資会社でまあまあリスク大きい。
楽天は論外。
でKDDIが一番リスク少ないと思います。
(トヨタがまた持ち株売りに来る可能性あるけどあれは仕方ない部類だし信用も失わないしで株価への一時的リスクにしかならないと思うので)
基本的に株を買う場合はその会社のリスクがどのくらいありそうかを事前に確認した上での購入をオススメします。
まあドコモは安いから100株くらい持っといても罰は当たらないと思います。時間かかるけど優待おいしいですし。

 パターン2

老後資金の準備と使ってもいい資金とをある程度の割合で分けて準備したいという場合

パターン1の手法とiDeCoの併用をオススメします。
このパターンでお金にメチャクチャ余裕がある場合にのみ積立NISAをオススメします。
割合も完全に個人の自由(例えばNISA成長投資枠19:iDeCo1みたいな極端な割合でもOK)なので、自分の性格、ライフスタイル、人生設計、計画等々と相談して決めるのが良いと思います。
この割合選択の豊富さは投資の面白い部分の一つだと思ってます。正解が人の数だけありますからね。
あとこの手法は、NISA枠復活の関係で、お金を使った後また金銭的に余裕が出来たら再開するなんてことも出来ます。
いやーいい制度ですね本当に。

 パターン3

本当に緊急で何かあれば使う可能性はあるけど、基本的には老後資金でしか使うつもりがない場合かつ、積立期間が20年以上ある。

このパターンでやっと積立NISAをオススメできます。
オルカン、S&P500、不動産、債券、先進国株、新興国株と武器は何でもあるので好きなものを選んで戦いましょう。
モチロン併用分散もOKです。ガンガン活用していきましょう。
税金関係でiDeCoとの併用もあると尚良いですが、積立NISAは投資の入門としてはかなり優秀なので、
iDeCoの門を叩くのは、新NISAに慣れてきて余裕が出来てからでも遅くはないと思います。

 パターン4

いつの日かFIREを夢見る場合

現実を見てください。
あと私が昔書いたこちらの記事をどうぞ(宣伝)。
投資自体が好きじゃないと間違いなく茨の道です。

 パターン5

投資商品の割安、割高判断が出来て、そこそこの成績を叩き出してる資産運用経験者

これどうするのがいいんですかね?
例えば今、「中国株が割安だけどまだ下がりそうで不安」という状態の時にドルコスト平均法で積立するっていうのは我ながら超ナイスな判断だと思ってるんですけど。
というわけで自分は積立NISAで新興国株を買い付けてます。
インドは割高感あるけどワンチャン持たざるリスク説もあるよねと不埒な感情を抱きながら買ってます。
多分これは良くない判断だと思うけど、やってみたいからしょうがないよね。
(あと実はe-maxsis slim先進国株のインド株比率結構低めなので、そこまでリスク高い訳じゃないってのもある)

積立NISAだと年間投資枠が120万ずつであれば復活していくので、積立NISAとは名ばかりで実は満額投資後は投資額の1/5は回してくのがいい説があります。
なんなら資金が少ない人は満額到達してなくてもガンガン回していい説もあると思います。自分もそうですけど原資少ないんでこの先しばらくはどうせ枠最後まで埋まんないですし。
但し、分配金アリの投資信託だったり、成長投資枠で配当貰うパターンの場合はそこの税金も免除されるから長く持てば持つ程良いって考え方もあります。
(KDDI勧めてるのはこの理由もあります。まあ買おうと思ってたら株価5000円超えて買う気無くしちゃったので様子見してますけど)
結構色々考えられることが多くて面白いです。
今後どうなっていくか楽しみですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?