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犬のピピの話 159 うす緑のクリスマス

 十二月二十五日。
それは、三日間つづいた休日の最後の日でした。
朝、わたしとピピは海の草原へ出かけました。

冬。
草たちは、ちいさくちいさく縮こまっています。
そのちいさな草のからだのひとつひとつに、冷たい、まるい露が、びっしりとついていました。
それで、草原は、草原じゅうにうすみどりの氷の破片をふりまいたように、静かにキラキラとかがやいていたのです。

(ぱちゃぱちゃ ぱちゃぱちゃ・・・)

ピピとわたしから遠い、みずいろの水たまりで、茶いろい小鳥が、音をここまで届けないよう、ひっそりと水浴びをしています。

しろい橋が浮かぶ湾の上の、鳥の道では、雁の群れがカギかっこの形に並び、速い速度で飛んでいます。

その、鳥の道よりずっと高い場所では、もう高すぎて姿の見えない鳶が
ひゅーーー ひゅーーー
と鳴いています。

と、草原の地面すれすれに、ちっぽけな鳥がまるで二本の脚で駆けるように、わたしたちの前の風景をするどい斜線で切りとっていきました。

生きものたちの動きは、宝石の気配。
あちこちで、かがやく宝石が

きらきら きらきら きらきら

と、うすみどりのじゅうたんにころがり出ます。
 
そして、草原はその音たちを瞬間に吸い込み
しん
と静まりかえって広がるのでした。

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