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喜多川泰 『運転者』

webライター系の企業を受けることになったので、
面接までの間になるべく本を読もうと思い、
読み始めた一冊です。
この本を今読めて、本当に良かったと思います。


◾️あらすじまとめ

人生うまくいかない、
不運な人生だと思って生きている修一と
不思議なタクシー運転手___  の話。

修一の現状をまとめると、
保険の営業をしているが実績はボロボロ、娘は不登校、
実家は廃れてしまった商店街の一角で母が1人。
どうにかしなければと思いつつ自分で手一杯。
何もかもがうまくいかなくて、卑屈で、
常に「不機嫌」な男。

そんな男の前に止まった一台のタクシー。
不思議な運転手に苛立ちつつも
その出会いから人生が変わっていく物語。


◾️感想の前に

主人公と通ずる部分が私自身にありすぎて、
自分の話と重ねてしまう部分が多々ありました。
感想の中でも自分の話が多くなることを
ご了承いただきたいです。

◾️感想

『修一が変わり始める瞬間』

修一は、運転手に見せられたドラレコの映像を見て
初めて外から見た自分の姿を目の当たりにする。
そして、いかに自分が不機嫌に見える人間であるかを
自覚することになる。

そんな修一をみて、私自身がいかに
不機嫌な人間であるかを自覚することにもなる。

(私の話)
近頃、同棲を始めたばかりだが、
些細なことにイライラしては不機嫌になり、
それに釣られて相手も不機嫌になると言う悪循環。

相手に期待をしすぎて、頼りすぎて、
その通りの態度でなかったときに、
裏切られたと勝手に感じて起こる不満。
「まるで子どものよう」と本書でもあるがその通りだ。

自分の機嫌は自分で取る。
とはよく言うが、
頭ではわかってても心ができていない。
そんな自分の不甲斐なさを修一を通して痛感する。


『運を見定めるアンテナ』

タクシー運転手は修一にこう伝える。

「運命が劇的に変わる瞬間を捕まえるアンテナは、
上機嫌な時に最大になる。機嫌が悪いと運が逃げるんですよ。」

ああ、と思った。
中学まで明るかった私は、
高校になるとあまり友達ができずに、
常に不機嫌だったように思える。

みんなが私を馬鹿にしているように勝手に感じ、
塞ぎ込み、仲の良い子以外にはどんな態度だったか
思い出したくもないほどだ。
ひねくれまくっていた。

あの時不機嫌だったことを、
この本を読む前の私ですら後悔していた。

大学に入ってからは、機嫌をコントロールできていたが
親しい人や恋人になると出てしまうことがあった。

高校から現在に至るまで、
私のアンテナは全く働いていなかった。


『運はポイント制』

運転手はこうも言う。

「運には「つかう」「ためる」があって、人によって大きく貯めて使うか、細かく使うかその違いである。」

なるほど。私は運を貯められているだろうか、
いつも周囲に甘え、自分を甘やかし、
ここまで生きてきた。うん、マイナスかもしれない。
ボロボロのポイントカードをきっと持っている。

「損得ではなく、「楽しそう」「面白そう」で行動してみる。面白いと思えなくても、「何がそんなに楽しいのだろう」の興味を持つ。」

楽しそうな人たちをみて、
「何がそんなに楽しいのだろう」と思った後の
私の言動は「無」だ。ひねくれている。

まずは、興味を持つ。
何事にも関心と参加する気持ちを持っていたい。

『人間が柔らかいのは』

「人間の身体はどんな仕様にも対応できるように柔らかい。その間には痛みがあって人間はようやくそれをやるにふさわしい仕様に仕上がる。」


バーで出会った男性の
言葉は胸に刺さるものがあった。

私自身、何か新しいことをするのが嫌で仕方なくて、
嫌われたり、恥ずかしい思いをすることに
人一倍抵抗がある。

就活に結びつければ、面接や、
ましてや集団面接、グループワークなんて地獄だ。

それを痛みと捉えるのであれば、
乗り越えた先には就職というゴール、
そしてスタートラインに立つことができる。

この言葉を知ることができただけで、
これからの人生、私は強い。

事実、次のグループワークも
上機嫌で楽しめば運が貯まるし、
きっといい結果を出せるではないかと思えてきた。

もし、何か悔しいことがあればそれは変化への痛みだ。

『まとめ』

そうして、修一は最後に実家を訪れることになる。
その後、様々に散らばった点がどんどん繋がっていく。

ラストスパートはもう手が止まらないという感じで
最後まで読み進めてしまった。

見ず知らずの誰かの撒いた幸せの種が、
誰かの運のポイントが、
今の自分達を生かしている。

それをまた自分が貯めて、時には使って、
周りから見たら少し運のいい人くらいに思われたら
幸せなの一生なのかもしれない。

『回想前に戻ると』

冒頭に戻って読み返すと
修一がファイナンシャルプランナーになり、
車内に流れているラジオには娘が
出演していると言うことがわかる。

トリハダ。

そして変わったタクシーに乗った話。
父の残したメーターはきちんと娘にも
受け継がれていた。
いつか娘のタクシーの話も読んでみたい。


このブログを書こうと冒頭に戻らなければ
気がつくことができなかったかもしれない。
ラッキーだと思った。
すこし運を使ったのかもしれない。

とにかく、今この時に
たまたま読もうと思ったのがこの本だった。
それは自分にとって必要だったからだと思う。

トンデモ長くなりましたが、
もし読んでくださった方がいらっしゃったら
本当にありがとうございます。

お蕎麦、食べたい。

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