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心洗われる兄妹の感動ストーリー『おにいちゃんのハナビ』

今回はkayserが担当します。縁あって『おにいちゃんのハナビ』という映画を鑑賞しました。病に冒されこの世を去った妹のため、花火を打ち上げようと奮闘する兄。そんな兄妹の実話をもとにした心温まる物語が『おにいちゃんのハナビ』です。今回は、映画『おにいちゃんのハナビ』の紹介と鑑賞レビューをお届けします。

映画『おにいちゃんのハナビ』とは

実話を題材にした意欲作

映画『おにいちゃんのハナビ』は、実話をもとに作られました。新潟県小千谷市片貝町が舞台となっています。この町では、毎年、世界一といわれている花火を打ち上げる片貝まつりが開催されます。

2004年に発生した新潟県中越地震の被災地でもあり、その鎮魂も兼ねており、中止されることなく毎年行われているそうです。この復興に向けたドキュメンタリー番組が放送されたことがきっかけで、映画化が企画されました。

兄妹の感動物語

白血病の妹と引きこもりの兄。病気の妹に励まされながら立ち直っていく兄は、妹のために花火を打ち上げます。そんな兄妹の絆を描いた感動の物語です。

放送されたドキュメンタリー番組では、この兄妹の物語が取り上げられました。その物語に心動かされた国本雅広監督により、映画化がスタートしました。

若手実力派キャストとベテラン監督がタッグを組む

妹の華には谷村美月。白血病に冒される少女役ということで髪をそり、熱演しています。その兄には高良健吾。人見知りな性格のため、引きこもってしまった内気な青年を繊細に演じました。

監督には、ドラマ『瑠璃の島』などの国本雅広。本作が映画初監督となります。持ち前の丁寧な演出が本作でも遺憾なく発揮されています。

映画『おにいちゃんのハナビ』あらすじ

病弱な妹・華の体のためにと、東京から空気のいい新潟県に引っ越ししてきた須藤一家。白血病に冒された華は半年の入院生活を終え、家に戻ってきました。しかし、その半年の間に、兄・太郎が引きこもってしまったことを初めて知ることに。

ちょうどその日は、須藤家が住む片貝のお祭り「片貝花火まつり」が開催されていました。花火が大好きな華は、学校の友人たちと花火大会に。太郎は自室から眺めているだけでした。

太郎を心配した華は、なんとか外の世界に連れ出そうと画策。地元の成人会に参加させようとしますが、断られてしまいます。

それでも、太郎が立ち直ることに協力を惜しまない華。そんな華の励ましもあり、太郎も閉ざしてしまった心を徐々に開いていきます。そんな中、華の病気が再発してしまうのでしたが……。

ここがみどころ!『おにいちゃんのハナビ』

実話をもとにした感動ストーリー

映画『おにいちゃんのハナビ』は、白血病の妹とそれを支える兄との兄妹愛を題材にした物語です。しかもこれが実話ときています。その設定だけで、もう感動してしまいますよね。

最初は断られつつも町の成人会に入り、自分たちの花火を上げようとする兄。しかし、妹のため、成人会を辞めて自ら花火を作ることを決意します。引きこもっていた兄が、妹のためにひたむきに奔走する姿は、本当に胸打たれます。

物語の最後に見ることができる花火の美しさは格別です。それまでの物語があるからこそ、ひと際美しく、心に響くものになっています

花火と片貝の人々

映画『おにいちゃんのハナビ』では、片貝に住む人たちとってこの花火がどれだけ大切なものかも描いています。成人や還暦祝い、子どもの誕生祝い、亡くなった人の供養などのため、町の人たちが資金を出し合い打ち上げる花火。花火はそこに住む人たちの願いの象徴です。

そんな片貝の人たちと花火との固い絆は本作のみどころのひとつ。人々の想いをのせて空に咲く大輪の花に心洗われます。

自然豊かな風景

映画『おにいちゃんのハナビ』にとって、物語の舞台でもあり、ロケ地となった新潟県小千谷市片貝町の風景そのものがみどころとなっています。

何気ない田舎の風景の中、引きこもっていた兄の太郎が妹の華を自転車の後ろに乗せて、新聞配達をするまでに。どんな天候であっても毎日同じ道をひたすら自転車を走らせる太郎。徐々に町の風景に溶け込んでいきます。そこで出会う人との交流で、太郎の心の変化も描いていきす。

特に、太郎と華の2人の自転車の行く先を、寄りの映像からだんだんとロングに引いていくシーンは、兄妹の仲睦まじい様子が微笑ましく筆者のお気に入りのシーンです。

名優・大杉漣

映画『おにいちゃんのハナビ』では、兄妹の父親役として大杉漣が出演しています。名バイプレイヤーとして広く知られる大杉漣。2018年、主演ドラマのロケ先で体調が急変し、66歳という若さで帰らぬ人となりました。

本作が公開されたのは2010年。まだ元気な大杉の姿を見ることができます。実直で不器用ながらも家族を思う父。太郎には厳しく接する一面もありつつも、華のために頑張った“おにいちゃん”を強く抱きしめるシーンは、非常に印象的です。

おにいちゃんの花火に想いを寄せて

ベテラン演出家と売れっ子脚本家コンビが贈る秀作

花火に人は何を想うものでしょうか。

夏の風物詩として愛されている日本の花火。夜空に咲く大輪の花は美しく、しかし儚く......。一瞬で消えてしまう空の芸術品です。

この物語では、主人公たちだけでなく、片貝の人たちにとって花火が大切な存在であることが語られています。その土地その土地で受け継がれていく伝統や繋がり。

ここ数年のコロナ禍で世の中は大きく変化しました。これまで都会で働くことが当たり前だった人たちが、田舎へ拠点を移すという話を多く耳にするようになりました。

仕事中心だった生活から解放され、自身の生活を見つめ直す人たち。そうした背景の中、自分が住む土地の伝統や地域の人たちとの交流など新たな繋がりを求めていくことも。地方では、そんな人と人との繋がりをとても大切にしている片貝のような場所が少なくないのもしれません。

筆者にとって、花火が象徴するのは家族の繋がり。幼い頃、冬に打ち上げられる花火を家族や親戚とこたつに入りながら窓を開け、一緒に鑑賞をした思い出が蘇ります。花火を見ると思い出すのは、そうした幼少期の思い出。

本作の華が花火にこだわった理由が語られていきますが、彼女もまた花火に自分が大切にしているものや瞬間を投影していたのでした。実在した華のモデルとなった彼女の想いや願いも花火とともに昇華されていくことを願ってやみません

kayser


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