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第34回東京国際映画祭(TIFF)個人的オススメ作品

10月30日から開催される第34回東京国際映画祭(TIFF)
今年から開催場所が銀座・日比谷地区に変更され、昨年とはまた違った映画祭になりそうです。

今回は、映画ライターの松 弥々子が、今年のTIFFで個人的に観たいと思っている作品を、部門ごとに紹介します。


コンペティション 部門

2021年1月以降に完成した長編映画の中から厳選された15本が上映される「コンペティション部門」。今年は113の国と地域から1,533本もの応募作品があったそうです。今年はフランスの女優イザベル・ユペールが審査委員長を務め、青山真治、クリス・フジワラ、ローナ・ティー、世武裕子といった映画関係者が審査を行います。

この「コンペティション部門」の中で、私が注目しているのは、以下の3作。

■『復讐』(フィリピン)

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©Cignal TV, Inc

警察に目をつけられたバイク泥棒のイサックは、ボスに庇護を頼むが冷たい扱いを受ける。イサックはボスに対する復讐を企むが…。スラム街の犯罪組織の中でもがく男を描いた作品。(TIFF作品紹介より)

フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督の作品で、このTIFFがワールド・プレミアとなります。フィリピンの街を臨場感あふれる映像でうつしとってきたメンドーサが、今作ではスラム街をどのように描くのか、注目です。

■『オマージュ』(韓国)

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©2021 JUNE Film. All Rights Reserved

仕事に行き詰まった韓国の女性映画監督が映画の修復の仕事を依頼される。その作業は自国の女性映画監督が辿った苦難な道のりを明らかにする。『パラサイト』(19)のイ・ジョンウンが主演。(TIFF作品紹介より)

「男女平等」をヴィジョンの一環に取り入れている今年のTIFF。韓国の女性映画監督の苦難の歴史を自身も女性であるシン・スウォン監督が描いた本作は、世界中の映画界にまだまだ残る女性差別と改善の歴史を見せてくれるでしょう。

■『クレーン・ランタン』(アゼルバイジャン)

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© 2021 Ucqar Film. All rights reserved.

昨年『死ぬ間際』で第21回東京フィルメックス・グランプリを受賞したバイダロフの最新作。女性を誘拐した罪で服役している男と法学生との対話が美しい風景の中で展開される。(TIFF作品紹介より)

『死ぬ間際』のヒラル・バイダロフ監督作品ということで、これは必見! 東ヨーロッパと西アジアの交差点といわれるアゼルバイジャンの地を、どのような映像美で描き出すのか、何が語られるのか。ぜひスクリーンで確認したいところです。


アジアの未来 部門

アジアの新鋭映画監督の作品からなる「アジアの未来」部門。すべての作品がワールド・プレミアということです。アジアの才能をいち早く堪能できる部門です。


■『アメリカン・ガール』(台湾)

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 SARSが猛威を振るう2003年、アメリカから台湾に帰還した13歳の少女と家族。母の病や同級生との確執など、監督の自伝的要素も挿入される。母親役は『百日告別』(15/トム・リン監督)のカリーナ・ラム。(TIFF作品紹介より)

ロアン・フォンイー(阮鳳儀)監督の自伝的作品ともいうこの作品。『ミナリ』などで、アジア系移民の歴史やその葛藤などにフォーカスされることの多い近年、ぜひ観ておきたい一作です。


ガラ・セレクション 部門


日本公開前の作品のプレミア上映。今年から始まったこの「ガラ・セレクション」。こちらも観たい作品ばかりで目移りします。その中から、個人的にもっとも観ておきたい作品をご紹介します。


■『MEMORIA メモリア』(コロンビア/タイ/フランス/ドイツ/メキシコ/カタール)

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©Kick the Machine Films, Burning, Anna Sanders Films, Match Factory Productions, ZDF/Arte and Piano, 2021.

全編が南米コロンビアで撮影されたアピチャッポンの最新作。不気味な爆発音に悩まされつつ、ボゴタから山の中の小さな町へと旅するヒロインをティルダ・スウィントンが演じる。(TIFF作品紹介より)

タイのアピチャートポン・ウィーラセータクン監督がティルダ・スウィントンを主演に迎え、南米コロンビアで撮影した一作。今年のカンヌ映画祭で審査員賞受賞しています。この文字列を見ただけで、映画好きなら観たくならないわけがありません。

ワールド・フォーカス 部門

世界中で行われている国際映画祭。そこで上映されて注目された作品や、日本公開がまだ決まっていない最新の話題作などがラインナップされています。「ラテンビート映画祭」とコラボレーションしているので、スペインや中南米の作品も。


■『リベルタード』(スペイン/ベルギー)

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© Lastor Media

15歳の少女ノラは夏休みにリベルタードと出会う。対照的な性格のふたりの少女は、友情をはぐくみながら成長していく。カンヌ映画祭批評家週間に選ばれた鮮烈な監督デビュー作。(TIFF作品紹介より)

クララ・ロケ監督のデビュー作となる『リベルタード』は、出自の違う二人の少女が出会い、友情を育む物語。スペインの海沿いの邸宅にやってきたノラと使用人の娘のリベルタード。若い感性ときらめきを期待できそうな一作。


Nippon Cinema Now 部門

海外に紹介されるべき日本映画を上映する部門。既に公開された作品も、ラインナップされています。今年は『空白』がロードショー中の吉田恵輔監督の特集上映も行われます。

■『なぎさ』(日本)

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©MMXXI Takeshi Kogahara, Mami Akari

偶然訪れた心霊スポットのトンネルで、兄は妹の幽霊に出会う。そこは妹が事故死した現場だった。
トンネルの暗闇の中、兄は妹を探し彷徨い始める。暗闇は過去の故郷の時間へ、兄を誘う。(TIFF作品紹介より)

CMなどで活躍してきた古川原壮志監督による長編作品。TIFFでの上映がワールド・プレミアになります。

クラシック映画からアニメ、特撮まで、特集上映も見逃せない

以上、5部門の中から7作品をセレクトしてみました。これらの作品以外にも観たい作品がいっぱいで、選ぶのにかなり時間がかかってしまいました。。。


さて、他にも「ジャパニーズ・アニメーション」部門では3月に逝去されたアニメーター大塚康生氏のレトロスペクティブであったり、生誕50周年を迎えた「仮面ライダー」シリーズを特集上映しています。

また「日本映画クラシックス」部門では、名女優にして日本映画界における女性監督の草分け的存在、田中絹代の監督作が4K修復版にて特集上映されたり、森田芳光監督没後10年ということで『家族ゲーム』4K修復版が上映されたりも。

日本で行われる国際映画祭ならではの、ここでしか観られない作品もあるので、ぜひ注目していただきたいと思います。

撮影カメラの傍らの田中絹代(写真提供:芸游会)

撮影カメラの傍らの田中絹代(写真提供:芸游会)

最後に

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コロナを越えたその先の映画の在り方を考えていく
国際映画祭として「国際」色を高めていく
男女平等、環境保全などSDGs へ積極的に取り組んでいく

上記の3つのビジョンを掲げた新たな東京国際映画祭。
私がピックアップした7作品だけでも製作国が10カ国以上にのぼり(共同製作含む)、女性監督の作品も3作入っています。
アフター・コロナの映画のあり方や、環境保全などについては、「アジア交流ラウンジ」でのトークセッションやシンポジウム、パネルディスカッションなどでも語られていくのかもしれませんね。

今年から、開催会場やプログラミング・ディレクターが変更になり、新たに歩き出した東京国際映画祭。
ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか?
監督、出演者など映画関係者とすれ違ったりできるかもしれません。

チケットは公式サイトから購入できます。まだチケットの取れる作品も多いので、ぜひ、気になる作品はチェックしてみてください!


<第34回東京国際映画祭開催概要>
■開催期間:2021年10月30日(土)~11月8日(月)
■会場:日比谷・有楽町・銀座地区(角川シネマ有楽町、シネスイッチ銀座、東京国際フォーラム、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、有楽町よみうりホールほか)
■公式サイト:www.tiff-jp.net
©2021TIFF

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