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ゲーム雑誌の歴史とメディアとしての雑誌―『ゲーム雑誌ガイドブック』を読んで

さやわか・著『ゲーム雑誌ガイドブック』 (ゲームラボ選書) がおもしろかったよ。

メディア原体験としてのゲーム雑誌

子どものころ、はじめて購読した雑誌は『ファミリーコンピューターマガジン』だった。裏技を紹介する「ウル技・ウソ技」のコーナーがお気に入りで、毎月、発売日を心待ちにしていた。読者投稿欄などが充実した『ファミコン通信』もお気に入りだったが、友だちが購読していたので自分では買わず、ファミマガと交換して貸し借りをいた記憶がある。

自分でもおどろくことに、このときぼくはファミコン本体を持っていなかった。テレビゲームという新しい子ども文化に触れることが、とにかく楽しかったのだろう。そして、気がつかないうちに「ゲーム雑誌を読むこと」自体が楽しくなっていったのだと思う。ゲーム雑誌が雑誌やメディアの楽しさに目覚めるきっかけだったのだ。いまアラフォーくらいでそういう人って、意外と多いんじゃないかな。しばらくしてぼくの関心はゲームから離れてしまったけど、大人になって雑誌編集者を生業にすることになった原体験は、ゲーム雑誌にあるのだと思う。

本著は1982年~2000年に創刊されたゲーム雑誌を、その特徴や誌面の変遷、廃刊の経緯にいたるまで紹介する。各ゲーム雑誌の変遷を通じて、ゲームやアニメなどの周辺領域、メディアの歴史がうっすらと見えてくるのが、ぼくみたいな門外漢にも楽しい。角川のお家騒動ってめちゃ大変だったんだなあとか、キャラに寄った美少女路線の雑誌が出てくるのは90年代半ばでエヴァと同じくらいだなあ、とか。実際の誌面が豊富に掲載されていて、レイアウトで当時の空気がわかるのが楽しい。

読者コミュニティの紹介が熱い

「ゲーム史」の本ではないところがポイントで、実際、ソフト名はほとんど出てこないんだよね。かわりに出てくるのが、読者のコミュニティや編集者・ライターのこと。雑誌がもつコミュニティ機能って、いまではほぼ忘れさられているけど、かつてはとても濃くて熱かった。面白いものを応援していこうという気概があり、そこで支持されて名を上げるライターや関係者も多かったんだよね。セガやSNK関連誌の読者について触れた箇所は、どれもグッときたなあ。読者についての記述は、つまるところ「その雑誌メディアがどう受け止められて、どんな影響力をおよぼしたか」につきるわけで、そこにフォーカスしているのは、さやわからしいなあと感じる。

「ゲーム雑誌」の歴史って、日本がとても元気だった時期に生まれて、エンターテインメントの一大ジャンルになった「テレビゲーム」が育っていく過程でもあり、また、80年代に頂点をむかえた雑誌文化が廃れていく歴史でもある。ゲームについて詳しくない人でも、メディアに興味があれば、面白く読めると思うな。

関係ないけど、版元の三才ブックスって「ラジオライフ」や「裏モノの本」みたいなアナーキーな雑誌ばかり出しているのに、社内の風紀が厳しくて遅刻とかしたらめちゃ怒られるという噂を聞いたんだが、本当だろうか。


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