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2020年映画ZAKKIちょ~ 29本目 『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』

2020年製作/上映時間:80分/G/日本
劇場公開日:12月18日
鑑賞劇場および鑑賞日:TOHOシネマズ錦糸町オリナス(1回目 12月19日)、イオンシネマ市川妙典(2回目 12月21日)

制限時間は60分!地球滅亡を阻止せよ!白熱爆発タイムリミット・サスペンス!

【あらすじ】
自らを創造主と名乗るエス/仮面ライダーエデンは、数千人の信者とともに「60分でそれを破壊し、楽園を創造する」ために世界同時多発テロを引き起こす中、それを止めるべく或人たちが立ち上がるのだった…!

 日本を代表する特撮ヒーロー、「仮面ライダー」
そのシリーズは、2021年4月3日には生誕50周年を迎え、昭和から令和まで、時代と共に受け継がれていく正義の意志という名のバトンは止まる事を知らない。

 そんな連綿と続く流れの中、約20年にも及ぶ激動の平成ライダー史が終息し、新たに令和第一弾のライダーとして登場したのが「仮面ライダーゼロワン」
2019年9月、朝9時よりテレビ朝日系列にて放送開始し、全45回で放送終了。

人類が作り出したAI搭載人型ロボ、ヒューマギアがさまざまな仕事に就いて人間をサポートする時代に、売れないお笑い芸人だった主人公・飛電或人(ひでん・あると)が、急逝した祖父の跡継ぎとして、AIを生み出した会社「飛電インテリジェンス」の社長に選ばれ、仮面ライダーゼロワンへと変身し、秘書ヒューマギアのイズと共に、人類滅亡を標榜する暴走するヒューマギアとの闘いに身を投じしていくという近未来SFドラマ。

 放送途中で、緊急事態宣言が発令された影響で一定期間の撮影中断を余儀なくされ、1か月以上総集編など挿みながらも、後半は、毎週毎週、視聴者を驚かせ、心を熱くさせ、泣かせるような展開の連続で、大満足で最終回を走り切り、仮面ライダーシリーズの新たな傑作となった「ゼロワン」。

「人工知能と人間との共存」という新世代にふさわしいテーマ性や、登場するライダーのスタイリッシュでシンプルなデザイン、毎週Twitterで日本のトレンド入りを果たすほどの人気を博した秘書ヒューマギアのイズなどに代表される魅力的なキャラクターたちなど、そのどれもが、令和一発目にふさわしいスタッフやキャスト達の熱量が感じられる作品であった。

放送終了後もしばらくはSNS上で「ゼロワンロス」という言葉も散見されるほど、視聴者の心に深く刻まれたシリーズとなった。

 本作はその最終回から3か月後という設定の、TVシリーズ後の物語を描く完全新作。
このようなライダー作品の映画化の場合、TVシリーズを把握したうえでの鑑賞となるので、事前にTVシリーズを観た人と観ていない人では、評価はまったく異なるということは前提にしておきたい。

なお、筆者は毎週これの為に早起きするなど楽しみにしながら最後まで鑑賞済み。なんなら今も全話いつでも観られるようにHDDに消さずに録画してある。

 公開前の情報が解禁されるたび、期待値がどんどん上がり、本作の公開日を今か今かと待ち侘びながら、ようやく公開日を迎え、ワクワクしながら劇場へ足を向けた。

○良かった点

1.ライダー映画史上、最高のクオリティと熱量!
2.コ口ナ禍の世界観、教祖への盲信と反乱を活写!

1.ライダー映画史上、最高のクオリティと熱量!

 東映における昭和の映画興行スタイルを踏襲するかのように、現在進行形のプログラムピクチャーとも呼べる、平成に作られた仮面ライダーの劇場用映画(おおよそ50本近く)を、筆者は9割がたはDVDおよび劇場で鑑賞している。

 筆者が一番好きなライダーは、2009年に放映していた『仮面ライダーW』
2人で1人のライダーとして変身するバディものとしての面白さ、「風都」という街の中の物語という限定されたシチュエーション設定で、敵役や脇役に至るまで魅力的なキャラクターが登場していくのも良かったし、少年マンガのような熱い展開など、思わず放送をリアルタイムで観る為に日曜の朝は早起きを始めてしまったほど、最初から最後まで綻びを見せない完璧なシリーズだった。
その後、思わず高額のBlu-ray BOXを買ってしまったほどである。

『W』最終回の1か月前の、2010年8月に公開された『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』(以下、『W FOREVER』)は、上映時間わずか60分の中で、映画だけに登場する敵キャラクターの圧倒的存在感や、ダイナミックなアクション、惹き込まれる物語、そして勧善懲悪モノとして、ド直球を貫くクライマックスに心が燃え上がり興奮を覚えた大傑作であった。

それ以降、現在に至るまでの11年間、夏と冬の年2回公開される仮面ライダーの映画が公開されたら、必ず映画館で観に行く習慣が出来た。
だがしかし、正直なところ、一本たりとも『W FOREVER』を超えるライダー映画とは出会う事が出来ていなかった…。

 本作は、一本の映画作品の出来として、11年の時を経て、遂に、あぁようやく、『W FOREVER』を超越した、驚きの超絶なる傑作だったのである!

 何がそこまで凄かったのか。
なによりもまず、キャストやスタッフたちの「何が何でも良い作品を作ってやる」という情熱と気概を、観客視点から、細部に至るまでひしひしと感じることが出来た点である。

もちろん、これまでの過去のライダーすべての作品にわたり、関わってきた人はそれぞれ限られた時間の中で必死になって良い仕事をしてきたとは思うし、筆者はそれをくまなく観てきてはいるのだが、それでも、本作はその中でも最も突出した出来栄えになっていた。

 2020年はコ口ナ禍という未曽有の状況下で撮影がストップし、本来ならば番組放送中の夏に公開されていたはずの本作が、番組終了後の冬に公開がリスケジュールとなり、作品自体も「テレビ版の最終回後のエピソード」と脚本が若干修正を余儀なくされたりする中で、より、関係者のやる気に火が点いたのではないだろうかと勝手に推測する。
Twitterの「仮面ライダーゼロワン」アカウントからの24回にも及ぶプロダクションノートがそれを物語っている。

 主人公である飛電或人を演じる高橋文哉はまだ若干19歳で、芸歴としてはまだフレッシュな新人であるはずなのに、本作については「これが『仮面ライダーゼロワン』だ!という決定版にしたかったので、最高に気合を入れて臨みました」という意気込みを語っていて、1年間同じ役柄を演じてきて、キャラの人格が板に付いて、落ち着きさえ見せており、作品の座長としてしっかりその責務を全うしていたように思う。
高橋氏は、今後これをステップアップとして、様々なドラマや邦画で見かける機会も多くなってくるだろう。

 作品終了後も高い人気を持ち続けている秘書ヒューマギアのイズを演じる鶴嶋乃愛による三つの役柄の演じ分けも大きな見どころ。

そして、これまでテレビシリーズ本編中では、メインキャストの中で唯一、ライダーに変身しておらず、戦闘中に新しい武器やプログライズキーを渡したり、民間人を非難させたりなど、或人を秘書としてサポートする役回りだったイズが、様々な苦難を乗り越えた上で、本作のクライマックスで遂に変身!!

この二人が同時変身するカットは、或人とイズの強固な関係性を1年間シリーズを観続けてきたファンからしたら色々な感情が押し寄せてくるような、本当に落涙するほどの名場面であり、最大の盛り上がりどころとなっていた。

しかもベルトにキーをノールックで入れて変身するアクションを取る動作はライダー役者の最初の難関と呼ばれているらしいが、練習熱心な鶴嶋さんはそれを難なく一発クリアとの事。

この二人が並んで変身する姿は、『W FOREVER』のクライマックスで、それぞれの苦難を乗り越えていきながら風都を守る為に同じ想いで敵の前に立ち、変身をする翔太郎とフィリップの姿に完全に重なる。

それでいて、50年前に始まった「仮面ライダー」の原点と言える、仮面ライダー1号と2号というバディものの元祖のオマージュでさえある。

本作はやはりバディものとして完成された作品なのだ!
或人とイズが一緒に闘っている!
しかもこの戦闘シーンが盛り上がるタイミングで、1年間聴き続けた番組の主題歌「REAL×EYEZ」を持ってくる熱さよ!

あまりにもヒーロー映画として出来過ぎているぞ!!

と、感嘆しつつ興奮して鼻息を荒くした。

 そのほか、実際に無人の電車内で撮影したシーン、テレビシリーズでは敵対同士だったライダーが5人並びで変身するシーン、ライダーならではのド派手なバイクアクションシーン、アキラ100%を起用した本来、物語上シリアスであるべきシーンが完全なるギャグとなっていたシーン、全編にわたって見どころが尽きないシーンの連続による作品の熱いテンションが、本作が傑作の理由でもある。

本作のプロデューサーが「この映画に映る背景の全てに、人の想いがこもっています。」と語っているのは、あながち嘘ではない。

2.コ口ナ禍の世界観、教祖への盲信と反乱を活写!

 一本の劇場作品として、その高いクオリティのみならず、一般的な視点でよりレベルを上げたのは、もはや言わずと知れた、日本を代表するスター俳優の一人とも言える伊藤英明の存在感だろう。

こうした特撮作品にスター俳優が出演してきている状況は、子供向けと思われがちな特撮作品の、ドラマ、邦画としての地位の向上の表れなのではないだろうか。

なんと、伊藤氏は本作出演前から「ゼロワン」の大ファンで、自分の息子に変身シーンを見せたかったと語っているが、筆者は「どうせリップサービスでしょ~?」と思ってしまったが、伊藤氏は、まだ参考出品の仮面ライダーエデンのフィギュアーツを欲しがったり、本作を監督した杉原輝昭監督に初対面時にサインを求めたり(ふつう逆だろ)、飛電或人を演じた高橋氏にテレビ放映時のエピソードの撮影秘話を聞き回ったりと、どうも本当に大ファンらしい。

 そういうゼロワン愛を持っているという背景を踏まえた上で伊藤氏が演じるエスは、謎の集団を率いる「楽園ガーディア」の創造主として、人類を導く為に世界同時多発テロを引き起こし、仮面ライダーエデンに変身する本作の敵キャラクターである。

「神が6日で世界を創造したのなら、私は60分でそれを破壊し、楽園を創造する」

そんな言葉を放ちながら世界各国の信者を動かして、楽園創造という名のテロ活動を始め、60分という時間内で世界滅亡工作を発動させるエス。

伊藤氏によるエスのライダー変身シーンは、まるで祈るような動作で変身するのが、ひたすらにカッコいい。
仮面ライダーエデンのスーツデザインもシンプルで全身血管が通っているような禍々しいフォルムが印象的で、早くフィギュアーツが欲しくなる。


 こうした教祖が信者を先導する事件は日本ではオウム真理教の地下鉄サリン事件が一番想像されるが、つい先日の、アメリカ大統領の演説後の議会襲撃事件も想起させる。

 コ口ナ禍において世界中の人々が絶望している中で、こうした救いの光を提示してくるような教祖は現実にもいるだろう。
そのどれも、精神的な話で科学的根拠に基づいてはいないが、本作ではナノマシンというAIよりも更に最先端の技術を用いて、人々を煙に巻きながら先導していく。

 エスが創造しようとする楽園は、無人の街のイメージ風景として流れ、あたかも外出自粛の街の、コ口ナ禍の世界の世相が反映されているように見える。

 その後、エスの本当の目的が信者に発覚して、教祖としての無謬性が崩壊し、一斉に信者が反乱活動を起こす展開も、解脱した信者の、持っていきようが分からない鬱屈さを爆発させるようで面白い。

こうした世界情勢の反映や、宗教、テロリズム、反乱なども盛り込んで、特撮ヒーロー作品としての深みや厚みが増していたのも傑作の理由になっている。

◆結論

 2020年から現在に至るまで、外出自粛や会食厳禁だったり、やれ家にいろだとかアレするなコレするなと生活が制限され八方塞がりな中で、本作のような、志を感じる作品が上映され、それに出会えた事は、本当に嬉しかったし元気を貰えた。

日本を代表する特撮シリーズの中でも本作は、フレッシュでクラシックでドラマチックで心たぎる作品だった。

テレビ版を観た事が無い人でも、いきなり完結編である本作から観て、本編1話から遡って観るというのも楽しみ方のひとつ。

間違いなく2020年唯一無二のヒーロー映画の大傑作。

それでは最後にみんなで予告編を観てみよう。

スーパーヒーロープロジェクト
©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

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