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2020年映画ZAKKIちょ~ 7本目 『スウィング・キッズ』

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2018年製作/上映時間:133分/PG12/韓国
原題:Swing Kids
劇場公開日:2020年2月21日
観賞劇場:TOHOシネマズ錦糸町オリナス
観了日:2月22日

俺たちはただ踊りたいだけなんだ…!!
戦時中、捕虜収容所で寄せ集めで結成された5人のタップダンスチームの姿を描く、青春ドラマ。
監督は、日本でも大ヒットを記録しリメイクもされた「サニー 永遠の仲間たち」も記憶に新しいカン・ヒョンチョル。

【あらすじ】
1951年、巨済(コジェ)捕虜収容所に新たに赴任してきた所長が、収容所の対外的イメージアップのため、戦争捕虜でダンスチームを結成するプロジェクトを計画。前職がブロードウェイタップダンサーだった黒人下士官ジャクソンのもとに収容所のトラブルメイカー、ロ・ギスほかさまざまな人種や事情を持った面々が集まり、かくしてダンスチーム「スウィング・キッズ」は結成されたのだった…!

「サニー」は大好きな作品で何度も観返したし、タップダンスを題材にした青春ドラマということで、期待を込めて、劇場へ足を向けた。

以下、「良かった点」。

○良かった点

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 それぞれ個性的なメンツによる寄せ集めで作られたタップダンサーチームが織り成す青春ドラマパートと、戦時下という状況をあまりにも残酷な形で見せつけてくる戦争ドラマパートのバランスが絶妙!

ダンスシーンで感動させられると同時に戦争の恐ろしさを見せつけられるという、ただ笑って泣けるだけではない、心にベトッと残るビターな鑑賞後感となった。

パンフレットを読むと、監督は「“ダンス”というモチーフを通して、人種やイデオロギーについて描きたかった」と語っているが、まさしくその言葉通り、韓国、北朝鮮、中国、アメリカとそれぞれ生まれの違う人間がチームとなって同じ舞台でタップダンスで一丸となる作品。

 主演は日本でも人気のK-POPグループ「EXO」のD.O.。
歌やダンスなど徹底的にクオリティの高いパフォーマンスを見せてくれるK-POPという舞台で活躍する彼の、5ヶ月にも及ぶ猛特訓の成果が活かされるかのように、全編で見せてくれるタップダンスは見応えバツグン!!

さらに、彼は北朝鮮の兵士役ということで、ほぼまったくといっていいほど感情を表に出さない役柄というのも見どころ。

そんな無表情の彼から、さまざまな感情がすべてダンスで表現されるからこそ、台詞ではなく、その脈々とした躍動に心が動かされ、画が映える。
まさしく正しく美しく映画的表現よ!

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 特に、抑圧された想いの中でエモーショナルが大爆発するシークエンスである、中盤でのデヴィッド・ボウイの「モダン・ラヴ」がかかるダンスシーンは、筆者にとって本作最大の見せ場であった。

D.O.と、パク・ヘス演じるチームの紅一点兼通訳担当の美少女が、それぞれ別の場所にいながら、それぞれのダンスをカットが目まぐるしく変わる中での「生きているから踊るんだ」とでも言うかのように、観ていて異様な高揚感に包まれて鳥肌ものだったし、そのシーンの美しさに落涙もした。

ボウイを敬愛する筆者としては、あの印象的なイントロのギターカッティング音が流れてきた時点で、
「はァ!はわわわわわわ…」と、ダンスが始まる前に全身に鳥肌が立っていたのも事実。

これまで、【劇中でボウイの「モダン・ラヴ」がかかる映画】と言えば、代表的なところで、レオス・カラックス監督の「汚れた血」が想起された。

そんな本作は“ダンス”をテーマにしてるので、同じボウイなら「レッツ・ダンス」だろと思う人もいるかもしれぬが、あんなぬるいチンタラしたビートじゃダメなんだよ!
「モダン・ラヴ」の性急な爆発力じゃないと抑圧された彼らの衝動や感情は表現できないんだよ!

 本作のクライマックスにあたる、収容所内のクリスマスパーティーでの、満を持しての「スウィング・キッズ」の初ステージも大きな見どころの一つ。
チームが一丸となって、一糸乱れる動きの中で繰り出すタップダンスシークエンスは、それまでにさんざん各メンバーのそれぞれの想いを知って感情移入しているだけに、心の中で応援上映の気分だった。

そんなチームが一枚岩となって繰り出すタップダンスシーンでかかる曲は、世界中のさまざまな映画にも使われているスウィングジャズの定番ナンバー、ベニー・グッドマンの「ダンス・ダンス・ダンス」。
(最近の邦画のコメディ映画の予告編なんか、ほぼ確実と言ってイイほど、これに似た曲がかかっていて、いつも「なんだかな~」って気分になる)



 デコボコな個性が集まったチーム「スウィング・キッズ」を束ねる黒人下士官ジャクソン扮するのは、ブロードウェイミュージカルの最優秀ダンサーに授与される「アステア賞」の受賞者でもあるジャレッド・グライムス。

英語しか話せない彼だからこそ、言葉ではなく、D.O.とタップダンスで心を通わせていくシーンは込み上げてくるものがある。
監督曰く、ジャクソンという役名は、マイケル・ジャクソンから付けられているものらしい。

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 戦争ドラマ的な側面で言うと、甘いところなんてひとつもない、個々の人間ではどうにもならない戦時中の現実をまざまざと見せつけられて、ここだけはさすがに映画のファンタジーも通用しない。

だからこその対比として、タップダンスシーンがキラキラと光り輝く夢と希望に満ちた躍動感と衝動がより映えていた。

なお、収容所でチームのメンバー3人が仮面を被って踊るシーンがあるが、これは現実として実際に写真が残っていて、その1枚の写真を基に物語を膨らましたミュージカルが作られ、それを映画化したのが本作とのこと。

 また、本作の大きなトピックのひとつとして、韓国映画で初めてビートルズの楽曲が使用されたということ。
スタッフロールが流れる中で、数々の場面写真と共にかかる「フリー・アズ・ア・バード」は、監督も意図しているように、この曲も作品のテーマとして機能していて、最後の最後まで抜かりが無い。

結論

 タップダンスの一瞬の輝きのような力強いシーンの数々に心酔できる作品である。笑えて泣けもするけど、ただそれだけでは終わらない、ほろ苦い気持ちも含めて楽しめる本作をオススメしたい!

それでは最後にみんなで予告編を観てみよう。


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