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アンパンマンのアッパーソングとダウナーソング

不朽の名作アンパンマンで使われる曲のほとんどが、作者であるやなせたかし先生作詞していると言う事を、皆様はご存じでしょうか。

全ての子供が愛してやまない、誰しも一度は目にするアンパンマンでございますが、そのかわいらしいルックスの裏には、ひもじい人を助ける、決して逆転しない正義の味方という、強いメッセージ性が込められております。辛く残酷な戦争の経験をバックボーンに、ひもじさが何よりもつらいという考えの元、顔を分け与え人を笑顔にするアンパンマンという、子供から大人まで愛されるキャラクターは生まれました。

そんな熱い思いを持った作者が、アンパンマンに使われる曲の歌詞のほとんどを作詞しております。言わずと知れた名曲、アンパンマンのマーチを始めとして、有名な曲からそれほど有名ではないキャラクターソングまで、ほとんどの曲はやなせたかし先生の作詞となっています。それぞれの曲乗せられた様々な思いは、歌詞を読むだけでも為になる、とても興味深いものであることは、言うまでもありません。

そして、そんな方が作詞したからこそ、アンパンマンに使われる曲には、深すぎる曲が生まれております。単純なキッズソングという枠を飛び越えて、気分を高揚させる曲はもちろんですが、深く考えさせられる曲も沢山生まれております。


そう、アンパンマンの中にも、
アッパー系とダウナー系存在しているのです。


そこで本日は、独断と偏見でアンパンマンの曲をアッパー系ダウナー系に分けて紹介をして行きたいと思います。名曲ぞろいのアンパンマンの曲たちを、ぶち上げチル両面紹介していきたいと思います。

アンパンマン アッパー系名曲

1.アンパンマンたいそう

アンパンマンのアッパー系の曲として真っ先に紹介したいのは、「アンパンマンは君さ!」のサビが有名な、アンパンマンたいそうでございます。この曲、もう体操どころじゃない、メッセージ性の塊のような曲になっております。

なにはともあれ、とりあえず見てください。


大事なものを忘れて
べそかきそうになったら

好きな人と 好きな人と 
手を繋ごう
ーアンパンマンたいそう


すさまじい破壊力なんですよ。

アラサーリーマンが、アンパンマン慰められそうな勢いでございます。


そもそもこの曲は曲としても、キャッチ―な構成になっております。イントロ5秒間シャッフル電子音高ぶりを作って、「アンパーンマーン!」の呼びかけまでもっていく勝負の速さがまず素晴らしい構成ですよ。そこからキメをはさんでAメロに入り、広がりを持ったBメロをはさみ、裏のスネアが気持ちのいいサビに入る。ここまでの展開を1分で作り上げるという、かっこよさ凝縮された曲となっております。

そこにやなせたかし先生のメッセージ性でございます。

楽しいこといっぱい
でも寂しくなったら

愛する事 愛する事 
捨てないで
ーアンパンマンたいそう


サラリーマンの心に、ガソリン巻いて火を付けようとしてる?

子供の前で、全親が一筋涙を落とすぞ。


アンパンマンたいそうは、イケメンを使ってママさんを魅了したという仮面ライダーの戦法と、違ったベクトルで勝負をしてきてるのかと思う程、深く素晴らしい歌詞を持った一曲でございます。


2.サンサンたいそう

1995年からキャラクターのマイナーチェンジなどを経て今でもエンディングテーマとして使われている言わずと知れた名曲、サンサンたいそうでございます。

この曲の押しどころというのは、この一点に尽きます。


イチ・ニ・サン!
イチ・ニ・サン!
イチ!!ニ!!サーン!!
ーサンサンたいそう


熱いんよ。

こぶしを振り上げたくなるくらい、曲が熱いんすよ。


裏のドラム、電子音のキメ、短いワンフレーズの座りの良さや、フレーズを繋いでいくブリッヂの高ぶりまで、とにかく熱い曲なんですね。加えてぬるっとラストワンフレーズだけ転調していたり、曲としても面白く、キッズソングの皮を被った、劇エモ胸熱ソングなんですよね。


ちなみにこの曲の2番の歌詞ですけど。

サンサンサン あかいめランラン

ばいきんまん
ドキンちゃんに
ホラーマン

ーサンサンたいそう

誰も赤い目のキャラがおらんのは、最高。


3.ドレミファアンパンマン

2007年から週替わりのエンディングテーマとして使われている、ドレミファアンパンマンでございます。

まずこの曲、2007年から使われ始めたと言う事もあって、アラサーの私からすると世代の曲ではありません。3年ほど前に、友達と一緒にアンパンマンミュージアムに行った時、ショーでこの曲をやっていて子供たちがテンション爆上げしているのを見て、少し危機感を覚えたくらいです。

ただこの曲、聞けば聞くほどいい曲なんですよ。なによりキッズソングらしく、わかりやすくかわいらしいテイストで進んでいくというところが、シンプルに良い部分の一つなんですね。

ドレミファソソソ 心がはずむ
ドレミファ 歌おう声合わせ
ードレミファアンパンマン

これがBメロ~サビ前のブリッヂまでの歌詞ですが、子供でも歌いやすいシンプルなメロディに、歌を歌うドリーミングの優しい歌声、そこに優しい歌詞が載ることで、自然と笑顔になってしまいます。大人になってここまでほっこりさせられる事なんてないんじゃないかと思うほど、優しすぎる曲なんですよ。高熱のポカリくらい優しいんですよ。

そしてこのBメロから、サビの広がりが意外と壮大で面白いというのも、この曲の特徴です。そして壮大な雰囲気を持つサビの広がりの中での歌詞もまた秀逸でございます。

笑顔がはじける うれしさこぼれる
ほらほら踊り出す 仲良く手を繋いで
ードレミファアンパンマン

4文に詰め込んだ優しい思いが、自然と元気をくれる、アンパンマンのアッパー系名曲でございます。


アンパンマン ダウナー系名曲

1.つよさとは何?

こちらは知らない人も多い事でしょう。アンパンマンの映画「パピーの大冒険」の挿入歌として使われた「つよさとはなに?」でございます。

強さをテーマにした映画と言う事で、このテーマソングになったそうですが、そんな曲でも手を抜かないのがやなせたかし先生です。


胸の血潮が 燃える時
心の中の やさしさが
強さに変わる時がある


まず歌いだしから、鬼滅もビビるかっこよさです。


ちいさなよわい命だが
弱さの中の強い力


小さくても、弱くても、優しさを持てば強さを持てる。曲調しっとりと歌い上げるバラード調の歌ですが、寧ろアッパーソングなんじゃないかと思い始めた時に来るサビの歌詞


つよさとは何?
つよさとは何?
強さとは ア~なんだろう?


分からなくなっちゃうんだ!!

強さとは何か、サビの間中考えて、わからないんだ!!

強さとは何か。強さとは…?


ちなみに最後のサビで、この曲では強さとは何かが、歌詞として登場します。

この曲でやなせたかし先生伝えたい強さとは何か、皆さんもご自分の耳で確かめてみてはいかがでしょうか。


2.生きてるパンをつくろう

美味しいパンを作ろう」というサビが有名なこの曲ですが、この曲はダウナー系というより、クレイジーソングと言ってもいいかもしれません。何も考えずにぼーっと聞いていると、ヒヤッとする曲なんですよね。

もちろん、アンパンマンの世界観や、やなせたかし先生の思いを乗せて聞くと、何のクレイジーさもない名曲でございます。ジャムおじさんとバタコさんの掛け合いがかわいらしい、優しいほんわかした空気の曲でございます。

赤ちゃんは はだかで 生まれてくる
どじょうも はだかで かえるもはだか


まずこの曲のAメロは、生き物で生まれてくるという語り掛けから始まります。


どんな ちいさな虫だって
食べずにいれば しんでしまう


どんな生き物か関係なく、ひもじい思いは苦しいもの。思想や人種は関係なく、生きているものはみんな食べるという意味で平等だと言う事を、訴えかけている歌詞から始まります。

やなせたかし先生のひもじさに対する経験を歌詞に載せた、素晴らしい歌詞じゃないですか。ジャムおじさんの優しい声も相まって、ほっこりするのは間違いない事でございます。


おいしいパンをつくろう


そしてあの有名なサビに入ります。そんな思いをもって、ジャムおじさんとバタコさんは、パンを作ってくれているのか…と。


生きてるパンをつくろう


でも「生きてるパンを作ろう」は怖いんよ!!!


いのちがけでつくろう 


逆にやなせたかし先生のバックボーンを知らないと、ビビっちゃうんよ!!


いのちのパンを


マッドサイエンティスト感を、感じずにはいられないんよ!



そしてこの曲のタイトルが、「おいしいパンを作ろう」の方ではなく、「生きてるパンを作ろう」の方が使われているというところにも、若干のクレイジーさを勝手に感じてしまいます。

若干都市伝説的な解釈ではありますが、ひょんなことから聞くと少しヒヤッとする、変わった名曲でございます。

3.アンパンマンのマーチ

いくらベタでもこれを外すとウソになります。アンパンマンのダウナー系ソング代表といえばこの曲、アンパンマンのマーチでございます。

「何のために生まれて、何のために生きるのか。」

「なにが君の幸せ、何をして喜ぶ。」

大人の心を出刃でえぐるような、えぐ過ぎるメッセージ性のダウナー加減はご存じの方も多いと思います。メディアでも時折取り上げられていて、聞いた人の中にも、この歌詞の深みに打たれ、いろいろな事を考えさせられたという人も多い事でしょう。

ただ私が思う、一番の深みここではありません。

一番凄いのは、ラスサビ前のBメロなんですよ。


時ははやく過ぎる 光る星は消える
だから君は行くんだ ほほえんで
ーアンパンマンのマーチ


何でそんなこと言うの?

どうして僕らは…行かないといけないの…?


都市伝説なんかで「やなせたかし先生は戦争を経験されているから、この歌詞は神風特攻隊を指している」という記事を見たことがありますが、決してそんなことは無いと思います。

私も都市伝説は大好きですから、そういうこじつけは好きな部類です。でもこれだけは絶対に違うと言えます。

だってそんなこじつけより、真正面受け止めた方が、ヤバいんですから。


アンパンマンは唯一食べることができないキャラクター


アンパンマンは、アンパンマンのキャラクターの中で、唯一何も食べられないキャラクターです。食べ物をモチーフにしたキャラが多いアンパンマンの中で、他のキャラクターは他の食べ物をおいしく食べ物を食べるシーンが多くあります。その中でアンパンマンは、笑顔で食べる姿を見守っているだけで、自らが何かを食べることはありません。

調べてみると、頭のアンパンから栄養を取るから何かを食べる必要が無いからだそうです。ジャムおじさんが焼いてくれるアンパンの栄養だけで、アンパンマンは生きていると。

一方アンパンマンは、そんな栄養となる顔を、人に分け与えています。そして顔が小さくなるたびにアンパンマンは弱くなります。言い換えると、自分の命を人に分け与えている、究極の自己犠牲を体現しているのがアンパンマンです。


アンパンマンは君さ


私がアンパンマンになれる日は、まだまだ遠い先のようです。

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