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随筆(2020/3/22):アドバイス罪再考

昔、個人的には元カプコンのデザイナーとして印象深い安田朗(あきまん)氏が言い出した『アドバイス罪』という概念があり、心を痛めて見ていたことを思い出す。
「他人に何かやらせる、責任のとれない助言というの、何かが出来そうな他人のスキルにただのりして、その他人の実践に対してとやかくまずは否定して、曖昧に命令して、あわよくばやらせようと思っているわけだ。しかも責任はやる側に取らせたい訳だ。本当に害悪」という考え方だ。
まあそりゃそうだろう。基本的には分かりますよ。

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それとはちょっと別の話をしたい。

あんまり言いたくないが、アドバイスということを根本的に勘違いしている人がいる。
アドバイスとは助言であって、やるのはアドバイスの相手その人だ。
つまり、「言い出しっぺが責任を取らない」ことを言うのもさることながら、もっと手前の話として、「出来る見込みがない」ことや「やる気を削ぐ」ことや「やる気を叩き潰す」ことを言うのは、何らアドバイスではない。
自分が何やってるのか分かっているのか? 仕事を「させたい」なら仕事を「妨害する」のをとにかくやってはいけない。当たり前のことだ。
それをする人、仕事を「させたい」のか「妨害したい」のか何も分からない。何の信頼もない。賽の河原で石の卒塔婆を子供に積ませて崩す鬼くらいおぞましい。そんな人の注文なんかまともに聞いてられる訳がない。

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極めて単純な理屈だと思うのだが、これさえ
「え? 1秒前に注文したことは、1秒前に注文したかったからしたんだよ。
で、今注文したことは、今注文したかったからしたんですよ。
それはそれ、これはこれでしょ。それらの間に、関係、要る?
その都度の欲求とか衝動とかで動いてない人、小賢しいから、何一つ信頼出来なくない?」

とか思ってる人、ものすごくたくさんいる。

メチャクチャ怖い。
それは自分には正直だから自分にとっては圧倒的に信頼出来る在り方なのかも知れないが、他人からしたらそんな人のことなんか何も信頼出来ないよ。言ってることがコロコロ変わる人、あなただったらどんだけ信頼出来るか? だいぶ無理な話では?

そんな解像度で生きているの、
「単に周囲に偶然許されてきたから」
だし、
「ある日、状況と気が変わった周囲になぶり殺しにされる時に、何の対策も取ってないから、ただただなぶり殺しにされる」
だけよ。ヤだよそんなの。少なくとも俺は。

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といったことを、何も真剣に考えていないで、アドバイスもどきをして気持ち良くなる人、たくさんいる。
彼らのズリネタにされるのを突き付けられるのは愉快ではないが、まあしょうがない。俺の尻が誰かの妄想の中だけで百舌鳥の早贄みたいにされていても、そんなことは俺の知ったことではない。

突き付けられたらどうかって? 不愉快だよ? 当たり前じゃない? 他人を自分の快楽の道具にするのは気持ちいいし、何より小賢しい制約がないから安直で楽なんだが、誰も他の誰かの快楽の道具じゃあないんだよ。
最低限「よろしいですか、お願いします」「ダメですか、了解です、じゃあやめておきます」が言えない人、人にものを「頼む」の、向いてないですよ。「命令」者のツラでやって欲しいんですよ。つまりは、逆襲されて人間松明にされる覚悟を決めて下さい。ということです。

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あと、これも広く誤解しているように見えますが、
「その人に聞きたくない真実を伝えて叩き潰す闇のゲーム」
というの、アドバイスとは独立した別の、しかも闇のゲームです。
(多分別の用語があるが、いずれにせよ私はそれに興味がありません)
それをアドバイスと称してやるの、カテゴリーエラーだ。
少なくとも私の視界の他所でやってください。
俺は彼らのズリネタでもなければ、遊んで愉しむべき玩具でもありません。

***

あと、「これは助言ではなく善導である」という立場の人たちもいる。
本当にそうなら、それもいいでしょうね。
でも、他人のやることを善導と称して指図するなら、やっぱりちゃんと責任をもって、出来そうなことを、出来るように、善導したらどうですか。
百舌鳥の早贄や人間松明になるような善導は、せめてやめた方がいいんじゃないんですか。少なくともそれを善導と言い張るんなら。自分のためにも。

後輩や子供や生徒や承継人に引き継ぎするの、もちろん独自の問題領域であって、難しいやつだが、出来るしやってきたから人類の文化は今まで存続出来てきた訳です。じゃあ、「出来ない」というの、言い訳にならない。ちゃんと、やれるように、努力しましょうよ。
後輩や子供や生徒や承継人は、あなたに引き継ぎ能力があるかどうかなんて知ったことじゃないし、あなたがダメな引き継ぎしか出来ないのだとしても、彼らは逃げられないんだから。

そういう状況に、引き継ぐ側が、引き継ぎ能力もないのに胡坐かいていたら、そりゃあ彼らは逃げないだろうが、まともに聞く気にもならないとは当然思いますよ。
「こいつのやってることは引き継ぎじゃあない。ちゃんと引き継ぎをしろ。バカなんじゃないの。
人には人権があるから、単にバカだからってシメたりはしないが、バカが仕事組織で仕事のことで偉そうにしてたら、そりゃあ仕事の邪魔ということでシメるに決まってる」

くらいのことはふつうに思うでしょうね。
シメられないようにしたいんなら、そこはちゃんとやるしかない。

***

まあ、そんな感じです。
一般的に「これを言ったら人は潰れる」というレベルのことを、アドバイスとして投げつけるの、脇が甘すぎる。油断もいいところだ。
何で相手にキレられないと思った? そして何で自分が百舌鳥の早贄や人間松明やチタタプにならないと思った?
公僕になって初めて理解して愕然としたが(遅い)、「復讐禁止」「リンチ禁止」を柱の一つとする、近代刑法の精神を守る人は、案外多くない。本当に気を付けた方がいいですよ。

相手がやれる。聞ける。相手がやったことで相手に不利益が生じない。相手に不利益が生じたらダメージを軽減できる体制があり、直ちに運用でカバーできる。
そこまでして、初めて相手にアドバイスが出来る。

そうでないなら、他人に「やらせる」な。と言いたい。そんな感じですね…

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