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数学(2022/5/21):キューネン本2冊についての記事_5.ZFC集合論の公理のリスト_3(中間生成物:整列可能集合)

1.ZFC集合論の公理のリストから中間生成物を構成する

(2022/6/5 15:00頃)2022/6/1予告通り大改訂済

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前回は『(集合論的な)関係』まで構築しました。

さて、今回から数回かけて、公理追加せずに、『順序数としての自然数』まで構築します。
見覚えのある順序数としての自然数が、『(集合論的な)関係』を練り上げたらできるのです。

本当に?
それは今から説明します。
話はこれで終わりではないのですが、続きはさらにその後になります。

1_1.順序関係いろいろ

関係の例として、ふつうに生きていると直面するであろう、さまざまな『順序関係』があります。

さて、『順序関係』とは何か。具体例はいくつか思い浮かびます。ドングリの背比べとかそうですね。
しかし、
「つまりそれらにはどういう共通の性質があるか。つまり、どうであると順序関係と言えるのか」
と言われると、これはなかなか難しいのではないかと思います。

以下に、数学で考えられている、順序関係に期待される集合論における性質を羅列し、それによって構築される実際の順序関係についても書きます。

1_1_1_1(下準備1).推移性

  • 「関係同士を繋げられる」

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まず、集合論における性質として、この『推移性』が要求されます。

ざっくりとした「より小さいもの」と「より大きいもの」の関係 < をイメージしたい、とします。
こういうときに、
「a<bかつb<cだったら、a<cである」
となると、まあ世間的には
「順序関係に要求されている性質」
の一つではあると言えます。

具体例で言うと、1<2かつ2<3だったら、それは1<3であってほしいですね。
(この記事では最終的には自然数を作りたいので、以下の具体例では自然数を使ってみることが多くなるはずです)

1_1_1_2(中間生成物1).推移関係

こうした「推移性を持つ関係」『推移関係』を、順序関係の祖として位置づけます。

***

ちなみにこれは、「a=bかつb=cだったら、a=cである」とか、「a≦bかつb≦cだったら、a≦cである」とかも含みます。
集まりとして同等であることを使って、「ものすごく緩い順序関係としての集まりの同等」を考えることもできるのです。
世間的には、順序関係に同等が含まれるとは考えられていないと思うのですが、実は同等を順序関係の一環として考えることも可能です。
≦ とは「< であるか = であるかを満たす」という意味
なので、< と = が共に問題なく順序関係であるおかげで、≦ が問題なく順序関係であると思える訳です。

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非推移的関係の典型例として、ジャンケンが挙げられます。
グー<パーかつパー<チョキかつチョキ<グーです。
上の推移性の話が通用すると考えるなら、グー<パーかつパー<チョキならばグー<チョキだと考えたくなりますが、ジャンケンでは上の話は通用しない、推移的でないものとしてあります。
数学では、この手の循環する三すくみ関係を、順序関係ではないものという扱いにしています。
ざっくりと、
「三すくみとは三すくみであり、順序関係ではない」
くらいに考えて下さい。


1_1_2_1(下準備2).反射性または非反射性

  • 反射性:「自分自身を持つ約束の下では、以上以下めいた関係が作れる」

  • 非反射性:「自分自身を持たない約束の下では、超過未満めいた関係が作れる」

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これは、さっき書いた、「≦ とは「< であるか = であるかを満たす」という意味である」という話の言い換えです。

自分自身を持つ順序関係では以上以下めいた関係(これをこの記事では『(広義の)順序関係』と呼ぶことにします)が作れます。
自分自身を持たない順序関係(これをこの記事では『(狭義の)順序関係』と呼ぶことにします)では「より大きい」「より小さい」めいた関係が作れます。
前者の性質『反射性』後者の性質『非反射性』と呼ぶことにします。
順序関係ではこれはどちらもありえます。とりあえず、このレベルの < や ≦ は『前順序関係』と呼ばれることが多いです。
(面白いことに、「以上でなければ未満である」「以下でなければ超過である」ということが言えます。
「(狭義の)順序関係を(広義の)順序関係の否定として構成する」という考え方がある訳です。)

1_1_2_2(中間生成物2).前順序関係

言われてみれば「より大きい」や「より小さい」を考えるとき、同等でなく、自分自身を持っていないことは分かって戴けるでしょう。
1<2 のとき、2は1「より大きい」し、1は2「より小さい」ですが、この手の < を使う時に、1<1 とはしていない。
でも、1≦1 とはなっている。1は1「以下」であり「以上」でもある。そして「集まりとして同等」でもある。
というようであってほしい。

なお、あまり一般的な言い方ではありませんが、この記事では「より大きい」『超過』と呼ぶことにします。
「より小さい」はふつうに『未満』ですね。

1_1_3_1_A(使わない下準備3).対称性

  • 対称性:「aとbの関係と、bとaの関係を、同一視できる」

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この記事で使うことはないのですが、念のために対称性の話もします。

一般の関係では、上の条件は、ふつうにありうる話でしょう。
が、順序としてみた場合、これが成り立つ順序関係は、同等の場合しかない訳です。
ある意味バリエーションは全然ない。
さっき書いた、
「世間的には、順序関係に同等が含まれるとは考えられていない」
のは、ここの使い勝手の悪さからです。
全てが完全に同等である、「順序関係としては」あまり使い勝手の良くない関係は、いったん別に切り分けておきたい。

1_1_3_1_B(下準備4).反対称性

  • 反対称性:「以上であり同時に以下であるなら自分自身に等しいことにできる。もし異なるもの同士であったら、このような同等成り立たない。つまり、超過未満を同時に兼ねることはできないし、それが自分自身に等しくなることもない

さっき書いた、「1は1「以下」であり「以上」でもある。そして「集まりとして同等」でもある」という話の言い換えです。こちらはぜひそうであってほしいですね。

「以上以下関係は同等を含む」というのと、「以上かつ以下なら同等である」というのは、微妙にニュアンスが違います。

***

反対称性を対称性との絡みで考えると、

  • 「対称性は、異なるもの同士でもある種の同等が成り立つことを保証している」

  • 「反対称性においては、もし異なるもの同士であったら、同等は成り立たないし、成り立ったらそれはおかしいのだ」

ということが言えます。

1_1_3_2_A(使わない中間成果物3).同値関係

ちなみに、この記事では使わない中間成果物になるのですが、

  • 「関係同士を繋げられる」『推移性』

  • 「自分自身を含む約束の下で、以上以下めいた関係を作れる」『反射性』

  • そして「aとbの関係と、bとaの関係を、同一視できる」『対称性』

を備える、順序関係ではあるが順序関係として見れば使い勝手の悪い関係のことを、『同値関係』と呼びます。
「合同である異なる三角形は全部同値関係である」とかがそうです。

***

実は同値関係は、順序関係とは別の場合に、大いに役に立ちます。
(広義の)掛け算や割り算に使えるのです。
「-4と-2と0と2と4は2で割り切れるという意味で同値関係である」
「1/2と2/4と3/6は等しいという意味で同値関係である」
というところで、自然数や整数における倍数や、有理数における分数を定義する時に、必須の条件になってきます。

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いずれにせよ、同値関係順序数としての自然数の定義の中では出て来ない予定です。
(とある事情により、もう少し後で出てきます。それはその時に説明します)

1_1_3_2_B(中間成果物4).半順序関係

  • 「関係同士を繋げられる」『推移性』

  • 「自分自身を含む約束の下で、以上以下めいた関係を作れる」『反射性』

  • (または「自分自身を持たない約束の下では、超過未満めいた関係が作れる」『非反射性』)

  • そして「以上であり同時に以下であるなら自分自身に等しいことにできる。もし異なるもの同士であったら、そのような同等は成り立たない。つまり、超過と未満を同時に兼ねることはできないし、それが自分自身に等しくなることもない」『反対称性』を備える、

順序関係として使い勝手の良くなった関係のことを、『半順序関係』と呼びます。

これは、前順序関係で定義した、以上・以下・超過・未満を、ちゃんと全部統合的に扱えています。

しかも順序関係としてのみ見れば硬直的な運用しかできない同値関係をあらかじめ排除しているので、たいへん便利になってきます。

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なお、キューネン本2冊では、見たところ半順序関係の定義に反対称性特に要求していないようですが(見落としはあるかもしれない)、数学では通常これは要るので、気を付けて下さい。

1_1_4_1(下準備5).全順序性または三分律

  • 全順序性:「さらに発展形で、一直線上に、以上か以下、または超過か未満しかないようにできる。もちろん平面とか立体とかだとこれはまたできなくなる」

  • 三分律:「一直線上に、超過か同等か未満しかないようにできる。こうすると実質的に上と同じ意味になる」

上の方は、全順序性とか完全律とか比較可能性とか呼ばれています。
キューネン本2冊では下の方の三分律とか三者択一性と呼びうる性質を使っています。結果的には同じ意味になります)

1_1_4_2(中間成果物5).全順序関係

半順序関係の上でこれを設定すると、関係する全てのものが完全に「以上か以下のいずれか」「超過か未満のいずれか」単一に順序づけられますし、その名の通り関係する全てのもの比較できます。

半順序関係だと、ひし形継承のように「二つに別れてから一つに合流する」順序関係容認されています。
これはこれで大変便利なのですが、ある種のプログラマは
「あっ! 元の変数や処理の由来がどっちかわからないから、なんかあって直す時に倍以上の手間がかかるやつだ!」
と嫌な顔になるかもしれません。
そういうのを避けたいなどの理由で、一直線上でしかとらえたくない順序関係があった場合、全順序性必要になってきます。
この「一直線上でしかとらえたくない、ある種とても都合の良い順序関係」を、『全順序関係』とか『線形順序関係』とか呼びます。

***

やや高度な説明になりますが、数学では「本物の」線を定義するのに、自然数より高度な実数を使います。
全順序関係(線形順序関係)はそこまで高度な要求はしていません。
というか、全順序関係は自然数より根本的な性質を持つものであり、これが自然数の目盛りのような性質や、実数の線のような性質をもたらすのです。
「線」形順序関係の漢字の意味合いは、線そのものより根本的である。と考えて下さい。

***

で、当たり前ですが、この性質は目盛りや線の上では成り立ちますが、平面とか立体とかだとまたこれはできなくなります。ただの半順序関係と区別できなくなってしまうんですね。

座標 (2, 1) と (1, 3) のどちらか全体として大きいか、みたいな話は、全順序関係として見た時、
「これは全順序関係ではないから、全順序関係のような比較はできない」
という回答になる訳です。

無理して比較する方法があったとしても、それは
「各 x 値や y 値を「それぞれの」半順序関係として大小を見る」

「座標の各値を何らかの形で潰して足して比較する。
この時点でこれは平面上で比較している訳ではなく、何らかの形で平面を潰した(線にした)上で比較している」
か、その辺になってしまいます。

***

それどころか、実は、座標 (2, 1) と (4, 3) であっても、上の話の域を出ません。
一瞬
「「それぞれの」半順序関係で両方大きいなら、全順序関係として大きい、と言いたくなる」
かもしれませんが、そんなことは今まで出てきた全順序関係の話の受け持ちではありません。

もちろんこれらを平面から線に潰したら、「それぞれの」半順序関係で両方大きいから、全順序関係として大きくなりそうではあります。
ですがこれも、「平面を線に潰す」という工程の上で成り立つ話です。
線に潰される前の平面そのものでは、全順序関係の話は成り立ちません。
無理に同一視しようとしても、線に潰したものを期待通りに平面に復元することはできない(いろんなパターンがありうる)のです。うまくいきません。

いずれにせよ、平面上の大小を「比較する」方法はない、と考えて下さい。

***

奇妙に聞こえるかもしれませんが、数学的構造で、ある性質を増やした上位の構造は、下位の持っていた都合の良い性質を維持できなくなることがよくあります。
ときどき出てくる事態なので、なんとなく覚えておいて、後で
「あれが使えなくなってしまった。困る」
とか言わないようにせねばなりません。
なくなることは、ありえます。

1_1_5_1.極大要素/極小要素、上に有界/下に有界、上界/下界、最大要素/最小要素

また、後で必要になるので、『最小要素』と、それにまつわる概念についての説明をします。

***

内部構造として何らかの前順序関係を持つ何らかの集合を考えます。
以上/以下/超過/未満を扱いたいので、前順序関係が最低限要請されます。)
もちろんこれは集合なので、何らかの部分集合が取れますし、これらに所属する要素たちもまた前順序関係を持ちます。

***

前順序関係分岐していることがしばしばあります。
そして、それらにおいては
「この部分集合の中でこの要素「より小さい」要素はない」
と言える要素が取れます。
ただし、これはいわばそれぞれのひげ根の先端になりますので、しばしば1つではなくなります。
これらひげ根の先端を『極小元』、またはキューネン本翻訳にならえば『極小要素』と呼びます。
(同様に、
「この部分集合の中でこの要素「より大きい」要素はない」
と言える要素が取れます。
ただし、それぞれの枝の先端になりますので、しばしば1つではなくなります。
これら枝の先端を『極大元』、またはキューネン本翻訳にならえば『極大要素』と呼びます。)

***

また、別の話として、常にその部分集合の要素たち「以上」と言えるような要素たち存在したりしなかったりします。
それら「以上」と言えるような要素たちが、もし存在した場合、これらのことを『上界』と呼び、またここでいう部分集合『上に有界』である、と言います。
(逆に、常にその部分集合の要素たち「以下」と言えるような要素たちのことを『下界』と呼び、ここでいう部分集合『下に有界』である、と言います。)

***

この部分集合要素であり、しかも「全ての他の要素より小さい」『下界』と言えるものがあった場合、これを『最小元』または『最小要素』と呼びます。
これは実は『極小要素』の条件を満たしており、だから『極小要素』の一種です。
要は、
「ひげ根ではなく、根が一本だけある場合、単一の『極小要素』、『最小要素』が一意的に存在する」
程度のイメージです。
(同様に、この部分集合要素であり、しかも「全ての他の要素より大きい」『上界』と言えるものがあった場合、これを『最大元』または『最大要素』と呼びます。
これは実は『極大要素』の条件を満たしており、だから『極大要素』の一種です。
要は、
「枝が一本だけある場合、単一の『極大要素』、『最大要素』が一意的に存在する」
程度のイメージです。)

「最大」や「最小」という言葉を我々はしばしば使いますが、この数学的な定義は、言われてみれば非常に適切に見えます。

1_1_5_2.整礎的関係

さて、先ほどまでとはまた別のコンセプトになりますが、空でない部分集合が必ず最小要素をもつような関係のことを、整礎的関係といいます。
どう切ってもなんか中身が入っている。そしてそこには最小要素と呼びうるものが入っている。
これを並べたら、何らかの一里塚ができる。そういうものです。

1_1_5_3.整列順序

整礎的関係であり、(狭義の)全順序関係でもあるような順序関係を、『整列順序』といいます。

1_2.写像または(広義の)函数

1_2_1(成果物の下準備1).定義域と値域

さて、ここで(広義の)函数の話をしなければならないのです。

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関係の別の例として、ふつうに生きていると直面するであろう、「あるものを入力したらあるものが出力される仕組み」『写像』または『(広義の)函数』も構築できます。
(ちなみにキューネン本2冊では『函数』です)
また妙な話をしますが、問を投げかけたら答を返してくれる物知り博士とか、コインを入れたらコーヒーが出てくる自動販売機とか、労力を投入したら報酬が返ってくる給与体系(十分かどうかわからないが)とかも、その具体例です。

『(集合論的な)関係』は、典型的には順序対による二項関係なのですが、順序対の片方の集合を『定義域』、順序対のもう片方の集合を『値域』と呼ぶことにします。
これらは順序対由来のものなので、交換しないルールになっています。リバーシブル不可です。

1_2_2(成果物の下準備1).始域と終域

『(広義の)函数』を考えたいとき、慣習的に、『定義域』「入力側と見立てた方の集合」とみなし、『始域』と呼びます。
同様に、『(広義の)函数』『値域』「出力側と見立てた方の集合」とみなし、『終域』と呼びます。
「入力側で定義したら、出力側で値が出てくる」という発想ですね。

1_2_3(成果物の下準備2).(集合論的な)像

奇妙なことを言いますが、例えば
「問を投げかけたら答を返してくれる」
というのを、
「始域で何か選んだら、終域で対応する要素が確定する」
こととみなしてもいい訳です。
この対応する確定した終域の要素『(集合論的な)像』と呼ぶことにします。
(終域の部分集合のときもありますが、その話はとりあえずしない予定です)

1_2_4(成果物).写像または(広義の)函数

『(集合論的な)像』がある『(集合論的な)関係』を、『写像』もしくは『(広義の)函数』とします。

***

「なんか片方が決まったらもう片方も決まる」とか「問を投げかけたら答を返してくれる」とかの仕組みは、本当にどこにでも出てくるものです。数学は特にそうですが、何事においても値が決まらないならその答は信頼ならないので、「答が決まっていてほしい」というニーズは、それはもう死活問題めいて重大になってきます。

1_3.整列可能集合

1_3_A.差集合

ここで、ある集合別の集合差集合の話を、一瞬だけします。
とは言っても話は簡単です。
内包公理図式
「ある集まりに所属する要素で、別の集まりには所属しない」
条件を満たすクラスを用意すればよいのです。
これは内包として問題なく、だから集合です。
(これは後で共通部分と呼ばれるクラスとの兼ね合いで論じた方が良いのですが、すぐ下で使うので、今ここでその話をしました。)

1_3_B.選択函数

また、選択函数の話もします。

空集合でない集合集合族を作ったとします。
選択函数はこの「空集合でない集合の集合族」始域にした(広義の)函数です。

ただし、条件があります。
空集合でない集合の集合族要素である、個々の空集合でない集合を考えます。
もちろんこれらは空集合でないので、要素を持ちます。
個々の空集合でない集合の、各々の要素を集めて、新たな集合を作ります。
ここで、選択函数の条件とは、この新たな集合が終域であるようにすることです。

(だからこの終域の集合は、こういう加工による、置換公理図式のある種の産物、特定の条件を満たした論理式で加工した成果物による集まりと言っても差し支えないでしょう。
選択する要素に特に集合論における性質要求していないので、内包公理図式の産物、クラスであるとは限りません。

1_3_X.整列可能集合(再掲)

ある集合を使って、整列順序を設定した場合、整列順序の一側面としての集合は「整列可能集合」と呼ばれます。

***

この整列可能集合には、もう1つ等価な定義があります。
キューネン集合論I章の章末問題にある定義を、自然言語で読めるように、以下に書いておきます。

ある集合を考える。
その冪集合を考え、さらに空集合単元集合を考え、これらの差集合を取る。
この差集合から元々の集合への(広義の)函数を考える。
空集合単元集合取り除いたのは、空集合始域とする函数はいろいろ扱いが難しくなるので、考えないで済むようにしたいためです。)
また、この函数においては、空集合でない部分集合の像が、空集合でない部分集合所属するものとする。
このような函数ある種の選択函数として機能する。
そして、このような選択函数存在する場合、元々の集合整列可能集合である」

冪集合差集合(広義の)函数選択函数を使うと、整列可能集合が定義できる、ということです。

(実はこの性質は、後々ZFC集合論公理の1つである選択公理、より正確にはその等価なバリエーションである非空集合族選択函数存在定理整列可能定理等価性を考える際に、影響してきます。
ですが、その話はかなり後になるはずです。)

2.次回予告

整列順序や整列可能集合における一里塚だけでは

「そういうものがあるのは分かった。
それがどうしたのか?
ある種の大きさを測るのに役立つのか?
一里塚と一里塚の間に何か要素があってもなくてもいいのだろう。
もし何もなければ、確かにその一里塚は目盛りとして役立つだろう。
だが、何かあったら、それは目盛りとしては実用に耐えない、滅茶苦茶なものになるではないか。
一里塚を持ついくつかのそうした順序関係があった時に、それらをそれぞれ目盛りとして使ったら、ある目盛りと別の目盛りで違うバラバラの値が出るぞ。
それでは話にならないではないか」

と突っ込まれても仕方ありません。
いいところまで来ているのですが、こうした整列順序整列可能集合と、自然数との間には、まだまだ開きがあります。ではどうするのか?

***

ここで、

「ですので、一里塚と一里塚の間に何もない場合のみに、話を限りましょう。この目盛りなら常にバラツキの全くない同じ値になりますね」

という対処はできます。
こうなると、バラツキのない「特別な整列順序」や、その「整列可能集合」を想定したくなります。
こうすれば、それと自然数との間は、もう少し近づくように思えます。
ということで、こうした「特別な整列順序における特別な整列可能集合」「順序数」と呼ばれるものを、次回構築します。

***

さて。順序関係、普通は何となくしか考える機会がないと思いますが、実はきちんと書くとこういうことだったりします。
面倒くさいですが、基本的にこの5つ(正確には8つ)で順序関係は全部表現できるはずです。
妙な話ですが、これでドングリの背比べもできるというものです。

(続く)

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