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第46回:思い出し笑い「interview 桃月庵白酒」(&ツルコ)


第46回:interview 桃月庵白酒

*intoxicate vol.101(2012年12月発行)掲載

桃月庵白酒師匠、2年ぶりのintoxicateご登場です。
 前回は、'10年秋、落語関連著書多数のBURRN !編集長・広瀬和生さんとの対談でした。広瀬さんはその前年のタワーレコード落語フェア〈ようこそ、落語へ!RAKU-GO! 〉のリーフレット巻頭インタヴューでも、イチオシの若手落語家として白酒さん大推薦!でした。
 対談時に目標としていた国立演芸場での独演会も実現させ、落語会のチケットが取りにくい人気若手落語家の1人として注目の白酒師匠に、最新DVDについてお聞きしました。


 ──「笠碁」は、囲碁で喧嘩した2人の素直になれない意地の張り合いっぷりが微笑ましいですね。
 「仕草が重要な噺なので、映像のほうがいいだろうとは思っていました。音源で先代の柳家小さんや金原亭馬生の『笠碁』を聴いていて、言葉のない仕草だけの場面でお客さんはこんなに笑っているけど何をやっているんだろう、と気になりましたし、特に馬生は顔芸が多いので、振りや表情などが実際に高座を見るまでわからなかったですしね。


 この噺は馬生のかたちでやりたかったんです。小さんとは違うやり方で。でも、馬生の高座を聴いてもそうは感じないんですが、自分でやってみると、登場人物の〈待った〉をする方の人がちょっと嫌なやつに見えてしまうようで気になって。だから、昔からの幼なじみで子供じみた喧嘩をする、というところの面白さを出すため、自分なりに言葉を足したり、エピソードをつくったりして、2人を同じレベルになるように工夫してみました。DVD化の話もあって、今年はこの噺を試行錯誤しながら、頻繁に高座にかけましたね。碁盤の高さがまちまちだったなど、できているつもりでも定まっていないところに映像チェックで気づいたり。何席も収録した中から選んだ一席です」


 ──もう一席の「化け物使い」は、人使いの荒い旦那と使用人のやりとりが楽しい噺で。
 「この噺は、古今亭右朝師匠に教えていただきました。ほとんど習ったままですが、旦那を少しだけ聞き分けよくしたり、変えているところもあります。
 この旦那の頑固なところとかが、僕の師匠・五街道雲助のお父様にちょっと似ていて。入門した頃に師匠から、うちの父親はうるさいからね、と聞いていたのですが、僕にはそんなに厳しくなかったんです。モデルとまではいかないですが、なんとなくその頃のエピソードがモチーフになっていたりもしますね」


 ──いろいろな会場での高座から選ばれた2席は、どちらも横浜にぎわい座での独演会のもの。噺の出来はもちろん、会場の雰囲気が決め手だったそうですが。
 「にぎわい座はゆるやかな雰囲気がいいですね。お客さまの反応がよくて、笑いがあることでリズムが生まれる。落語は会場によっても変わりますね。寄席やホールの落語会ですと攻撃的なマクラになったり、にぎわい座だとちょっとまったりとした感じ、とか。収録ということで普段と変えたりはしていません。客席との息の合った笑いのある高座だと、たとえどこかで間違ったりしてもそれが気にならないくらい楽しく聴けるんですよね。ライブ感が大事だと思うので、いつものままでやっています」


 ──ご自身の目指している落語とは?
 「言葉の選び方とか、語感は大事にしています。立川談志師匠、古今亭志ん朝師匠など、その人独自の語感と音を持っていると感じる人が好きなので。売れている人、面白い人は、それがある。身体に入っているんですね。その人のセンスなんだと思います。なんということのないセリフにも、ああこう言うんだ、と気づかされることがたくさんある。自分もそういうセンスを持てるようになるといいなと思いますよね」


 本作のプロデューサーは、柳家喬太郎のアナザーサイドシリーズや林家たい平、寒空はだかなどの作品を手がける十郎ザエモン氏。「類い希なる言語センスとキレのあるマクラ、かわいらしい仕草や表情、その両方のバランスが素晴らしい!」と惚れ込んでの作品化、ぜひそこのところ、楽しんでご覧ください!


■三代 桃月庵白酒(とうげつあん・はくしゅ)
落語家。社団法人落語協会所属。出囃子:江戸。紋:裏梅、葉付き三つ桃。昭和43 年鹿児島県生まれ。芸歴: 平成4 年4 月早稲田大学中退後、六代 五
街道雲助に入門 前座名「はたご」。 同年6 月上野鈴本演芸場にて初高座。平成7 年6 月二つ目に昇進「喜助」に改名。平成17 年9 月真打に昇進「三代 桃月庵白酒」を襲名。趣味・特技:サイクリング、作務衣収集、音楽鑑賞、映画鑑賞。

DVD『桃月庵白酒落語集「笠碁」「化物使い」』
桃月庵白酒
[Columbia COBA-6395]

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