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第27回 思い出し笑い「いいぞ、オレ!」(&ツルコ)

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第27回:いいぞ、オレ!

執筆者:&ツルコ
*intoxicate vol.80(2009年6月発行)掲載

 “松本人志結婚!”のニュースを聞いたとき、頭に浮かんだのは、春風亭昇太さんでした。独身貴族を謳歌していて、結婚なんてしないよーん、なサークルからまた一人抜けていき、さびしい思いをしてないかしら、と。20代や30代では感じなくても、40代、50代になったら、ふと寂しくなっちゃうんでしょうか。心や体が弱ってるときは特にねー。松ちゃんも体調を崩していた時期に結婚を考えたそうですし、玉置浩二は病気見舞いがきっかけでの復活婚だったようですしねー。昇太さんも今年のお誕生日で50歳。いまや『笑点』レギュラー・メンバーですから、知名度が全国的になったと同時に、全国の人から「あらあ、結婚まだなの」と心配されるようになっちゃって、お母様も、息子の活躍はうれしい反面、ちょっと複雑なことでしょう。   

 そんな49歳・配偶者なしの昇太さん、創作落語家集団SWAのDVD初お目見えに続いて、ご自身の作品が2作もリリースされました。ミニ・アルバム的な「ぞろぞろ」(2004年)、2005年の「春風亭昇太 1」のあと、4年ぶりのアルバムが一挙に2タイトル、しかも2枚組と3枚組ですから、併せて13席ものボリュームで登場です。

 「春風亭昇太2」は、昨年行った「26周年記念落語会ーオレまつり」の高座を収録した2枚組CD。この会は、25周年をうっかり過ごしてしまい、26周年ということになったんだそうですが、昇太さんが、入門してからこれまでの四半世紀を振り返りながら進めていくという、おもしろい構成の落語会でした。高座の横に、ちゃぶ台やタンス、着替えの着物を置いて、まずそこであれこれ話す。そして、話に出て来たネタを高座に上がって演じ、終わると横の茶の間に戻ってトーク、そして再び高座へ。一人芝居のような舞台です。さすが昇太さん、楽しませてくれますよね。1席めは、落研から入門までを語ったあと、師匠・柳昇から稽古をつけてもらったたった2席から、この会で唯一の古典落語「雑俳」を(もう1席は「牛ほめ」だそう)。新作をつくるようになってからのトークに続いての「力士の春」は、二つ目時代につくった噺ということで、当時の眼鏡をかけて笑われてます。それから「オヤジの王国」、「花粉寿司」、名作「ストレスの海」、「人生が2度あれば」と、オレ・スタイルの代表的な新作落語が続きます。このアルバムは、噺家人生のちょうど中間地点まできたあたりの昇太さんの歴史と人柄と芸がコンパクトにつまった記念作品です。

 「春風亭昇太 3」は、古典落語のみを収録した、なんと3枚組CDですから、聴きごたえありますよー。昇太さんは独演会のときに、一席終えてから楽屋にもどらず、高座で着物を着替えてしまうというパフォーマンスをするのですが、それも入ってます。音だけですけど。「錦の袈裟」の与太郎、「崇徳院」の若旦那、「寝床」のお店の大旦那、「愛宕山」の幇間、「悋気の独楽」の小僧さん、「時そば」や「不動坊」の江戸っ子など、様々なバリエーションの昇太さんの芸を楽しめますが、どれももう昇太ワールドなところがすごいです。古典落語は噺の筋は決まったものですが、演じる人によってまったく違うものになるから面白い。「時そば」は、上方の「時うどん」をアレンジしている昇太オリジナル。そば屋さんのおびえっぷりが大爆笑です。

 高座では、しょっちゅう独身であることをネタにしていますが、まだ昇太さんの前のほうには志村けんさんなんかもいますし、このまま結婚せず、「いやー、噺家になって正解だったなー、オレ」と楽しそうにしながら「52周年記念落語会│ワシまつり」なんかやっちゃって、ふわふわと生きてる昇太おじいさん(その頃には落語芸術協会会長。しかも柳昇?)になるまでを見続けていたいです。とはいえ、結婚して子供もできて「子別れ」とか人情噺をやるようになった昇太さんも捨てがたし。


CD『春風亭昇太 2「26周年記念落語会ーオレまつり」ライブ』
[ソニー・ミュージックダイレクト 来福レーベル MHCL-1505~6] 2CD
「雑俳」「力士の春」「オヤジの王国」「花粉寿司」「ストレスの海」「人生が二度あれば」
DVD『春風亭昇太 3「昇太の古典」』
[ソニー・ミュージックダイレクト 来福レーベル MHCL-1526~8] 3CD
「錦の袈裟」「崇徳院」「寝床」「時そば」「愛宕山」「悋気の独楽」「不動坊」

思い出し笑いライン


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