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第73回:思い出し笑い「平成の名作になるのか!?『落語の仮面』」(&ツルコ)


第73回:平成の名作になるのか!?『落語の仮面』

*intoxicate vol.130(2017年10月発行)掲載

映画やドラマでは実写化、舞台でも2.5次元と、コミックやアニメを原作とする作品が人気ですが、なんとその波が落語界にまで! やってくれましたご存じ三遊亭白鳥が、国民的少女漫画『ガラスの仮面』を落語に!どんなことになってるか、この月影コスプレを見ただけで期待しちゃうでしょ?


 美内すずえの『ガラスの仮面』は1979年に連載が始まり、休載がありつつも今だ連載中。コミックは2012年に出た49巻が最新ですが、ファンも高齢化しており、早く完結して! という切実な声も。ドラマ化や舞台化もされている人気作品なので、読んだことはないけど知ってるというかたも多いですよね。昨年連載40周年を迎え、今年は「ガラスの仮面展」開催などの盛り上りの中、6月に『落語の仮面』CD1作目リリースだったので、40周年に合わせた企画かと思いましたが、全くの偶然なんだそうです。白鳥さんの妹が好き
なため実家にあった『ガラスの仮面』を読んでハマり、これを落語にできないかと考え、つくってみたらできちゃった、という経緯らしいですが、高座にかけるにあたり原作が原作ですから許可を取らなきゃ、と白鳥さん自ら美内すずえ先生にメールで打診し了承を得た、と。美内先生、懐深すぎ!


 この『落語の仮面』、原作は演劇界が舞台ですが、落語界に置き換えて、主人公・北島マヤは、さえない女の子の花ちゃんという設定に。かつての人気女流落語家・三遊亭月影にお話を作る才能を見込まれ、三遊亭花として落語家になり、ライバルの立川あゆみ(父親が柳亭市馬、母親が桂あやめというサラブレッド。もちろんフィクション!)と「紅天女」ならぬ「夢幻桜」という幻の噺を巡って争います。もちろん「紫のバラの人」もちょっと別設定(いいのこれ、美内先生!?)になりますが登場します。


 自身が身を置く落語界のことですからそのリアリティと、白鳥さんならではの創作力&妄想力で、すごいことになってますが、噺の中で演じられる落語は独自の新作の世界を切り開いてきた白鳥さんでしかつくれないものですし、フィクションだと過剰なくらいにフォローしつつも、実団体や番組、実
名などがバンバン出てくるので、落語ファン大喜び!そして『ガラスの仮面』ファンには、これはあのシーンだ! とわかる場面があったりなので、両方知ってる人はかなり楽しめる内容かと。普通、2次元作品の実写化、舞台化の場合、できるだけ原作に寄せてイメージを損なわないように気を使うものですが、『落語の仮面』には一切それはなく、自由すぎて原型を留めていないところがスゴイです。


 昨年7月、上野鈴本演芸場で白鳥さんトリの特別企画公演「落語の仮面祭り」が美内すずえ先生公認(!)で行われ、なんと先生ご本人が聴きにいらしたそう! しかも3回も! 第1話から第5話を口演する10日間で、落語初心者の「ガラかめ」ファンも多かったそうですが、人生初の落語がこれってどうなんだ、という気がしないでもありません。


 そして今年も「落語の仮面祭り」第2回が鈴本の9月中席で行われ(先生からの立派なお花も届いてました!)、第4話から第8話を連日披露。恐々行ってみたら、台風上陸中にも関わらずお客が入っていて、トリ前の紙切りでは月影千草や水城冴子などハードル高いリクエストが! この日は次にCD化予定の第5話「恋する宮戸川」で立川あゆみがメインとなる噺。これもまた音源化には気を使いそうですが、大受けしてました!


 奇想天外な『落語の仮面』、現在第10話までできているそうで、9月に第3話と第4話収録の2作目がリリースされ、今後、第5話、第6話「あや姫伝説」、第7話「短命からの脱出」、第8話「高座への螺旋階段」と続いていきますが、各話のタイトルもいいですよね。どんな噺になっていくのか、早く続きが聴きたーい! 落語CDで次作を楽しみに待つってあまりないことかと。そしてこれから原作のほうにこの影響が出ないことを祈ります。噺家さんが出てきちゃったらどうしよう?

CD『三遊亭白鳥「落語の仮面 1」』
Disc1「三遊亭花誕生」
Disc2「嵐の初天神」
[ ワザオギレーベル WZCR-66001]2CD

CD『三遊亭白鳥「落語の仮面 2」』
Disc1「トキ蕎麦危機一髪」
Disc2「テレビ仮面舞踏会」
[ ワザオギレーベル WZCR-66003]2CD

思い出し笑いライン


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