〈KIDS/EDUCATIONALロングレビュー〉まんきゅう・監督『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』【2020.4 145】
■この記事は…
2020年4月20日発刊のintoxicate 145〈お茶の間レヴューKIDS/EDUCATIONAL〉掲載記事。2020年4月17日発売のまんきゅう・監督作品『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』をレビューした記事です。
intoxicate 145
やさしさと慈しみに溢れた、いつまでも忘れたくない名作の誕生!(高野直人)
【Blu-ray & DVD】
映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ
まんきゅう・監督/井ノ原快彦、本上まなみ・ナレーション
[DMM pictures DMPXA-118(BD)DMPBA-118(DVD)]
大人気キャラクターの初映画化である本作が、こども以上におとなが号泣嗚咽する“逆詐欺映画”としてSNS上で話題となり大ヒットを記録したことは記憶に新しい。
すみっコの各キャラクター紹介から映画は始まるので、すみっコ初心者もまずは安心されたい。すみっコたちの世界観を崩さないために、すみっコたちにはしゃべらせず、最低限のセリフが画面上に表示される仕様となっている。代わりに井ノ原快彦と本上まなみのナレーションに物語進行を負わせることで、観客が絵本を読み聞かせられているかのような効果と映画への没入感を深めることに成功している。
絵本世界の作品ごとの差異を画のタッチの差異で見せていくなど、こどもが見ても分かるよう“画で見せる”ことに徹した65分。それは、さながらサイレント映画の名作を思わせるシンプルな力強さに満ちている。造形のかわいらしさは勿論、すみっコたちの“動き”のひとつひとつの豊かさに目を奪われることは必至だ。
劇団「ヨーロッパ企画」角田貴志によるメタ構造な脚本が素晴らしい。 絵本の世界に入り込んだすみっコたちが、『桃太郎』や『人魚姫』といった物語の“主役”になるという設定からして秀逸だ。そして、絵本の世界で出会う新キャラの迷子の「ひよこ?」。その出会いから予想外の展開を迎える結末まで、本作の催涙映画的側面は、是非ご自身の目で確かめていただければと思う。
本ソフトのジャケットにもなっているメインビジュアル。「ひよこ?」の頭上にある「きみも、すみっコ?」のセリフは、一見すると「ひよこ?」に対して向けられた言葉のように見える。しかし、本作を見た後では、「ひよこ?」が私たちに向かって 「きみも、すみっコ?」 と語りかけているように見えてくるはずだ。
本作は、見る者の心の奥深くに棲む“すみっコ成分”に激しい揺さぶりをかける。やさしさと慈しみに溢れた、いつまでも“忘れたくない”名作である。
©2019 日本すみっコぐらし協会映画部
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