第29回:思い出し笑い「おうち寄席」(&ツルコ)
第29回:おうち寄席
*intoxicate vol.82(2009年10月発行)掲載
今年の春頃は、ソニー・ミュージックが落語専門レーベル【来福】をスタートさせたり、CDつきマガジンがヒットしたりと、盛り上がってましたが、半年経った今、創刊号が驚愕の三十万部だったCDつきマガジンの継続購読者はどのくらいになっているのかが気になります。来福レーベルからは、年末に古今亭志ん朝作品のリリースがあるようで、何が出るのか楽しみですが、その前に、これまでになかった企画の落語DVDが登場します。
なんと「柳家」「古今亭」「三遊亭」「春風亭」「林家」の亭号別のDVDなんですね(同内容のCDも同時発売です!)。噺家さんの名前の、柳家とか三遊亭という、名字にあたる部分が亭号。柳家のなかに入船亭、柳亭なども含まれ、立川談志は柳家小さんの弟子でしたから、立川も柳家系列です。金原亭や五街道など古今亭になります亭号は、弟子入りした師匠に準ずるものですが、亭号による落語の違いよりも、落語というのが個人芸ですので、その噺家さんの個性によるところが大きいのだろうと思われます。同じ三遊亭でも、圓生と円丈みたいなかけ離れたタイプの師弟もいますし。
このCD/DVDでは、各巻五人ずつの若手〜ベテラン真打ちが登場し、総勢ニ五名の噺家さんが勢揃い。四月に東京の深川江戸資料館で三日間に渡って昼夜で行われた、春の大落語祭り『とっておき寄席!』の高座を収録したもので、ニ五人の噺家さんのスケジュールを調整して番組をつくるのは大変だったことと思いますし、無事にリリースが決定したということは、全員の高座がOKだったということですよね。素晴らしい。
皆さんがそれぞれ〈とっておき〉の噺を披露してますが、林家しん平以外、すべて古典落語です。いろいろなバリエーションの噺を楽しめますし、個性的な噺家さん揃いですから、お気に入りを見つけたら、寄席に聞きに行ってみるのもいいですね。
ニ五人中、最も異彩を放っている(ホメ言葉、です)三遊亭白鳥さんに、この画期的な作品についてきいてみると、「亭号別というのは、画期的ですよね。落語が初めてだと、CDで言葉から映像を思い浮かべるのは難しいから、このDVDを観て、落語とはこういうもの、とまずわかってもうらうのにもいいし、寄席で今人気があるのはこういう人たちだというのを知ってほしいので、初心者にもオススメ」とのこと。今回白鳥さんは、古典落語「時そば」をアレンジした「トキそば」で、暴れ高座を披露。確かに初めての人には「こんな落語もありなんだ!」と、さぞ驚かれることでしょう。
そしてこのDVDでうれしいのは、色物さんの芸も、各巻一席ずつ収録されていること! 寄席では、落語の合間に色物と呼ばれる芸人さんたちが出演しますので、まさに家で寄席の雰囲気を楽しめるということですね。今回は漫才、マジック、紙切り、粋曲、江戸曲独楽と、寄席でおなじみの色物芸をセレクト。若手紙切りの二楽さんや、レッドカーペットにも出演している漫才のロケット団、寄席のゆる〜い空気が感じられるアサダ二世のマジックもおすすめですし、三増紋之助の曲独楽も必見。紋ちゃんだけのDVDがほしいくらいです。桂や笑福亭など、上方編リリースの後でいいですから、『とっておき寄席!』番外編でどうでしょう?
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