第83回:思い出し笑い「令和の名人として語られるのは」(&ツルコ)
第83回:令和の名人として語られるのは
*intoxicate vol.140(2019年6月発行)掲載
新しい元号になりましたね。まだあまり実感湧かず、ですが。落語で昭和の名人というと文楽、圓生、小さんなど何人も浮かびますが、平成は名人不在で次の時代を迎えたことになるのでしょうか。令和の名人として後世で語られる噺家は誰になるのでしょうねー。
この人はもしかしたら、なのが、異端な才能を誇る新作落語の三遊亭白鳥。300を超える新作を作り続け、ご本人のキャラクター、奇想天外で荒唐無稽な発想力、物語を創る力など、その存在が大きく際立ってきているような。最近の独自路線の活躍ぶりが素晴らしく、白鳥ならではの企画で寄席も大入りのようです。以前、漫画「ガラスの仮面」を落語化した《落語の仮面》をご紹介しましたが、昨年まで3年連続で上野鈴本演芸場にて〈落語の仮面祭り〉を行い、原作者はじめ落語に縁のなかった多くの「ガラかめ」ファンが寄席を訪れました。また、池袋演芸場が舞台の落語《富Q》で、一昨年末に池袋演芸場でトリを務めた〈富Q祭り〉が大好評で、昨年末に続いて今年も決定したと! 年末の恒例になるかも!?
二ツ目時代にその破天荒ぶりで出入り止めの寄席もあったことを考えると、ご本人のたゆまぬ努力でついにここまで! と感慨深い。独演会も盛況で、従来の落語ファンに加え、面白いカルチャーとして白鳥落語を楽しむ若いファンも増えているようです。二ツ目が白鳥落語に挑戦する落語会〈白鳥バトルロイヤル〉や大阪での独演会〈大阪白鳥ウォーズ〉なども開催されてます。
驚かされたのは、古典落語の実力派・柳家三三が白鳥落語に挑戦していること。2人は〈両極端の会〉というまさに! なネーミングの二人会を行ない、ここで白鳥作《任侠流山動物園》を初めて三三が口演。浪曲《清水次郎長伝》をベースに豚や象、パンダなどを擬人化した噺は、動物の仕草や鳴き声、座布団から転がったりの白鳥ワールド全開で、三三にはさぞハードルが高い挑戦だったかと。
《任侠流山動物園》はかなり前に作られ、後に前日談の《掛け取り上野動物園》と続きになる《雨のベルサイユ》が作られて3部作に。さらに1話、5〜10話を創作し、『任侠流れの豚次伝』全10話が2013年にめでたく完成。2014年に寄席で連続口演を披露し、2015年には三三、柳家喬太郎、桃月庵白酒、春風亭一之輔ら錚々たる噺家10人が10日間リレー口演する企画が行われ、その中には落語協会会長の柳亭市馬も!
そして三三は白鳥落語を演じることが快感になったのでしょうか、2017年に三三企画で横浜にぎわい座にて『豚次伝』全10話10ヶ月連続口演を、2018年には名古屋、大阪、広島、福岡4都市で5ヶ月間2席ずつの『豚次伝』独演会を実現させました。ちなみに三三はその前年3都市で談洲楼燕枝の人情長編《嶋鵆沖白浪》の連続公演を行なっており、明治の名人の翌年に白鳥落語というこのギャップ!
『任侠流れの豚次伝』は、三三を通してさらに整えられ、白鳥HPではご本人が「今年は『流れの豚次伝』を磨く年になりそうです」と書いてらっしゃいます。7月の独演会〈白鳥ジャパン〉は『豚次伝』5〜7話の口演なので、ブラッシュアップされた最新バージョンを聴けるチャンスです! この噺は講談や浪曲のかたも演じており、今回はゲストが人気の若手浪曲師・玉川大福なのも楽しみ。5話以前の話をワザオギレーベルのCDで聴いておくとより楽しめるかと。3話《任侠流山動物園》(『豚次伝』では《流山の決闘》)は『白鳥3』に、2話《掛け取り上野動物園》と4話《雨のベルサイユ》は『白鳥5』に収録。2014年の10日間連続公演音源もダウンロードで聴けます。
前号プロフィールでご紹介した柳家喬太郎「ヨーロッパ落語道中記」のトークイヴェントが決定。同行した馬場憲一(「両極端の会」や白鳥落語《とのさまと海》を絵本にした〈古典と新作らくご絵本シリーズ〉も手がけられてます)や写真家の武藤奈緒美らも参加し欧州ツアーのお話が聞けるそう!
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