見出し画像

医師は本当に忙しい?vol 2〜当直やオンコールの話〜

皆さんが想像する医師は忙しく働いてるイメージでしょうか?

確かに結構忙しいです。が、かなり波はあります。
患者さんがくれば忙しい。
そうでなければ比較的時間に余裕があることもあります。

今日は医師が忙しいと言われる理由の1つ、当直業務に関してお話します。
ちなみに、わたしは外科医なので、外科当直の経験として話を聞いてくださいね。

今日の結論は、当直は体力的にも精神的にも結構ツライ。平和な夜であることを祈るのみ、ということです。

こんな人は必読

医師の働き方に興味がある人
医師を目指す学生さん
病院に行くと『先生たちいつも疲れてるな』と感じる患者さんの方々
結婚相手は医師がいいなと安易に考えているあなた

当直の始まり

あー
今夜は当直だー

何回経験しても、やはり気持ち的には浮かない。

日中の仕事が続く中、17:15頃より当直が始まります。
始まると言っても日中の仕事は継続。
手術だったり、外来だったり、病棟の処置だったり、カンファレンスだったり、回診だったり。

そんな中、当直医として必要とされればPHSが鳴ります。
業務をしながら当直の仕事を並行して進めます。

手術中だったら?
そうですよね。
手術日には当直にならないよう配慮しますが、予定が合わず仕方ないことや、急患で手術していることも珍しくありません。

手が離せなければ、一時的に他の医師に対応してもらったり、外科の救急患者受け入れを止めてもらったりして対応します。

病棟対応

当直業務の1つ、病棟対応。

当直の際には色々な病棟の相談を受ける必要があります。
違う診療科の患者さんの報告&相談を受けるわけですね。
点滴のこと、内服薬のこと、転倒してしまった報告、不穏状態の対処方法、急変の連絡などなど。

当直医にとっては全く知らない患者さん。
ですから看護師は
何歳?男性?なんの病気で入院中?使っているお薬は?今どういう状況で困っている?
と言った情報を簡潔に医師に伝えます。

その情報だけで判断できなければ電子カルテを開き、慣れない診療科のカルテを解読、現場の病棟まで行き診察をします。

こういった夜間休日の対応に備えて、入院時には様々な状況を想定して指示を作っておきます。

眠れない時、便秘の時、痛い時、といった日常的なものから
血圧が大きく変動した時、不整脈が出た時、術後に出血が疑われる時、心臓が止まった時、、、、といった重篤な状況まで
その患者さんに起こり得る事案を予測して事前に指示を作るのです。

何かあれば当直医に任せればいいや、ではなく、当直の先生に相談が行っても困らないように配慮しておくわけですね。
自分自身が当直している際に、そういった指示がなくて困るのも嫌ですしね。

ただ、それだけ備えていてもやはり対応に困ることは珍しくありません。
そんな時は、担当科の医師に電話で確認します。

救急外来対応

上記の病棟業務と並行して、救急外来を受診した患者さん、救急搬送された患者さんの対応をします。

これは病院によってシステムが大きく異なりますが、緊急性の高くない(すぐに命に関わる状況でない)救急患者さんの初期対応は研修医が担当する病院が多いです。
救急科の先生もしくは当直医が、最初から診察対応してくれる病院もありますが、病院のマンパワー次第ですね。

もちろん研修医だけではまだまだ十分な対応ができないので、そのサポートや指導をしながら、最終的な責任を取るのが上級医の当直医になります。

だから救急患者さんが来る度に研修医から連絡が入ります。
どんな検査をすべきなのか、何が考えられるのか、など研修医に考えさせながら診察&検査をしてもらい、
結果が出れば、今夜はどう対応すべきなのか、フィードバックしながら一緒に考えます。

一方容態の悪い患者さんや、救急搬送された患者さんはそんな時間的な余裕はないので、当直医自ら対応しつつ、研修医に指示を出します。

こんな慌ただしい救急外来ですが、当直医では対応できないことも珍しくありませんし、入院が必要と判断した場合には担当診療科医師の許可が必要になります。

そんな時は担当科の医師に電話して相談します。

平和な夜か、荒れた夜か

日中の仕事を継続しつつ、病棟も外来も対応する。
忙しい時は本当に忙しいです。

PHSが鳴っても、ごめん今無理だ、後で対応しますね、なんて返事をしておいて、その電話があったことすら忘れる。
1時間くらいして、あのー、、この件ですが、、みたいに気まずい連絡が来る。。。

珍しくない。

何人か、何件か、連続で対応。
カルテなんて書く暇がない。
少し落ち着いたタイミングで、よし、今のうちにカルテを書こう。
あれ、、最初に対応した患者さんの名前ってなんだっけ。。。

珍しくない。

夕飯食べてない。
シャワー浴びてない。
でも眠いから諦めて今のうちに寝よう。。。

珍しくない。

こうやって、心身を削りながら働くこともあれば

今夜は平和だなー
ご飯何食べる?
好きなもの注文していいよー

なんて会話を研修医としながら、

自分の仕事(明日の外来の予習をしたり、その日の手術記録を書いたり、学会の準備をしたり、論文を書いたり、、、)をする時間がある。

こんな日もあるのです。

そうです。
私たち医師の忙しさはやっぱり患者さん次第なのです。

とは言え、せめて深夜1時から5時くらいまでは、当たり前のように平和であってほしい。
それくらいは落ち着いて寝かせてほしい。

そんな願いが叶わない時、身体も心もすり減っていきます。
そして、ほとんど寝ないで翌日の業務が始まるのです。

明らかに顔色が悪く、疲れ切っているので、

あれ、昨日の当直大変だった?

と朝出勤してきた同僚から。

聞いてよー、あんなことやこんなことがあってさ、、

と話を聞いてもらうのが日常の光景ですね。

医師は帰宅後も仕事から解放されない

上述のように、病棟業務でも救急外来対応でも、当直医では対応できない場合、担当の診療科医師に電話して相談します。

つまり、家に帰っても病院から電話が来る可能性があるのです。

電話相談を受ける担当医師をオンコールと呼びます。
各診療科内でシフトを組み、毎日誰かがオンコール対応をするのです。

いつ、どんな内容で電話がくるかわかりません。
電話で内容を聞いて、口頭で解決できれば良いですが、そうでない場合は病院に戻ります。

それが夕飯を食べようとした直前でも、お風呂上がり直後でも、深夜3時に寝ていても。。。。
すぐに病院に駆けつけて対応するのがルールです。

私の経験を少しお話しします。

ベッドの中で受けた病院からの電話。
当直医から相談でした。

深夜の交通外傷で救急搬送。
胸部を強く打っており、多発肋骨骨折、血気胸の状態。
CTでは出血量はそこそこ多いらしい。

この場合、状況によっては緊急手術が必要になります。
ただ、本当に緊急手術が必要な状況なのかは専門医でないと判断できません。

すぐに病院に戻り診察。
CTなどの検査結果を見て、患者さんを診察して、やはり緊急手術。

この場合、一人では手術できないので同じ診療科の上司に報告し緊急手術の許可を得て、その上司もしくは同僚に病院に来てもらい手術をします。

一言で手術と言ってもやることは盛りだくさん。
麻酔科に麻酔の依頼、手術室の看護師を病院に呼び戻す、患者さんと家族に手術の必要性を説明。
手術が終われば状況を家族に説明、手術後の指示を出しつつ容態は安定しているか観察。

術後落ち着いていればようやく帰宅できる、、
と言っても深夜に始まった出来事ですので、外はもう明るい。
2時間後には朝の回診が始まる。
家に帰っても寝る時間はない。
うん、病院で1時間仮眠してそのまま仕事しよう。

こうやって次の日が始まります。

どうですか?

医師は忙しいでしょうか?
今回は当直やオンコールについて軽く触れましたが、他にも紹介したい医師の働き方はたくさんあります。
また順次紹介しますね。

最後に問題です

救急車で搬送された患者さんに対して、ご自身の足で救急外来を受診した患者さん、であることを示す言葉があります。
『〜イン』英語表記だと『〇〇 in』
〇〇にはある単語が入ります。

一体なんというでしょう。

ちなみに、これは夜間の救急に限らず、日中の外来でも使われます。
予約患者さんではなく、その日に突然来院した患者さんであることを意味します。

おそらく医学用語ですので、知っていると医療人っぽい雰囲気が出せますよ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?