三島由紀夫「近代能楽集」

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君の友達が本を読んでいたとしよう。何を読んでいるの?と尋ねると、そいつは「近代能楽集」のカバーを見せてきた!

君はどう思うだろうか。まず思い浮かぶのは「能楽」ではないか。Eテレで時々流れる。翁やおかめのお面をかぶり、音程の変化の少ない歌に合わせてゆっくりと動く。ストーリーもわからないし、どこに注目すればいいのかわからないし、眠くなる。*筆者の勝手で雑な見解です

それを踏まえて好意的な友人であれば「それ面白いの?」と疑いながら聞くだろうし、普通の人であれば「おまえとうとう・・・」と距離を置かれるところだろう。

私も能楽には詳しくなく、「能楽を近代風に換骨奪胎した作品集」と言われても元々を知らないから確かめようがない。そして私はこの本の面白さをうまく説明できない。ストーリーが面白いとか、描写がすごいとか、そういうわけではない。


ただこれだけはいえる。「近代能楽集」の魅力は「妖しい世界観」だと。


なかなか説明するのも難しいが、最初は現実に存在する(といっても50年以上前の作品)舞台。ただし夜の公園、家庭裁判所、お金持ちの部屋、古道具屋などといった、なんとなく現実離れしたところばかり。

そしてだんだん非科学的な、非現実的な現象だったりモノだったりが現れてくる。イメージとしては昔話や神話を聞いているふう。魑魅魍魎とか「きつねにつままれたような」とかという表現がしっくりくる。


ただし、近代能楽集、これだけの説明では魅力が伝わらないだろう。

三島由紀夫の、そして昔の大勢の人が楽しんだ世界観を、ざっとわかればいいのではないか、と個人的には思っている。

読んでわくわくしたり、スカッとするものではなく、むしろもやもやしたり、「うわ、このストーリー変だな」とひっかかるものがあると思う。

それもそれで三島や昔の人の狙いなのではないか。


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